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南野拓実のリバプールでの寿命は縮んでいる。ブライトン戦で格好の餌食、致命的だった数字とは【分析コラム】

プレミアリーグ第10節、ブライトン対リバプールが28日に行われ、1-1のドローに終わっている。日本代表FWの南野拓実はこの日、インサイドハーフとして久々の先発出場を果たした。しかし、インパクトを残すどころか、さらに印象を悪くしてしまったと言わざるを得ない。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

VARが目立ってしまう試合に

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ブライトン戦のリバプールのスターティングメンバー

 ブライトンのイレブンよりも、リバプールのイレブンよりも、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が目立つ。そのような試合になってしまった。そして、そのVARの犠牲となったのは、アウェイのリバプールだ。

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 最初にゴールネットを揺らしたのはユルゲン・クロップ監督率いるチーム。34分、GKアリソンの蹴ったボールをロベルト・フィルミーノが収め、浮き球のスルーパスをモハメド・サラーへ出す。完全フリーとなった11番はそのままゴールに向かい、冷静にシュートを流し込んだ。

 しかし、VARによりこれはオフサイドの判定。ただ、非常にギリギリで「細かすぎる!」と言いたくなるほどのシーンだった。リーグ戦3試合連続得点かと思われたサラーからすると、少し不運だったと言える。

 ディオゴ・ジョッタの得点で1点リードしたまま迎えた83分には、フリーキックからサディオ・マネが得点。しかし、これもVARによりオフサイド判定となった。ただ、これは明らかにマネの身体がオフサイドラインを越えていたので、文句なしの判定と言える。

 問題となったのは後半アディショナルタイムの場面。アンドリュー・ロバートソンがダニー・ウェルベックを蹴ってしまい、OFR(オン・フィールド・レビュー)の結果ブライトンにPKが与えられた。リバプールはこれをパスカル・グロスに決められ、土壇場で同点に追いつかれている。

 しかし、試合後に主将ジョーダン・ヘンダーソンが「(蹴られた)ウェルベックだって、PKではないと僕に言ってきた」と不満を漏らした通り、かなり厳しい判定だったと言わざるを得ない。このような行為がファウルであれば、強度の高いプレミアリーグはPKだらけになってしまうと思うのだが…。

 と、VARの話ばかりになってしまったが、内容的にドローという結果は妥当と言えるだろう。リバプールはブライトンの決定力不足やアリソンの好セーブに救われた場面もあったし、後半はヘンダーソンが入ったことで少し回復したが、90分間を振り返れば攻撃もうまくいっていたとは言い難い。シュート数もブライトンの11本に対し、リバプールは6本だった。

 ただ、1-1の結果よりも痛手となったのはジェームズ・ミルナーの負傷と言えるかもしれない。これまで離脱した選手の穴を高レベルに埋めてきたベテランの不在は、ただでさえ故障者の多いリバプールにとっては大ダメージ。クロップ監督は再び頭を抱えることになりそうだ。

南野はフル出場も…

南野拓実
【写真:Getty Images】

 そんなブライトン戦において、久々に先発メンバーに名を連ねた男がいた。それが、日本代表FWの南野拓実だ。

 背番号18はチャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグ第2節のFCミッティラン戦で先発起用されたものの、ディボック・オリギと共に低パフォーマンスを露呈。それ以降ほとんど出場機会は訪れず、ベンチを温める日々が続いていた。その間に新加入のジョッタが圧巻の活躍をみせていたこともあり、かなり厳しい立場に置かれていたのだ。

 そのような状況の中で、クロップ監督から先発に指名された。南野としては、ミッティラン戦で与えてしまった悪い印象を払拭するための絶好の機会。ポジションは慣れていないインサイドハーフだったが、好パフォーマンスを示し続けることが求められていた。

 しかし、結果的にアピールは失敗。それどころか、さらに印象を悪くしてしまった。

 南野は前半から悪くないペースでボールに触れていた。攻から守への切り替えも素早く、懸命にボールホルダーを追うなど献身的な姿勢も示す。ゲームへの入りは、決してネガティブなものではなかった。

 しかし、ボールを持った際のアクションが皆無。パスを受けても無難な横や後ろへの捌きが多く、攻撃を活性化させるに至らない。

 南野は人と人の間にポジショニング、そしてボールホルダーの近くでパスを受けたがる傾向にある。ただ、そこでボールを引き取っても、かつての香川真司のような小回りの利いたターンで相手を剥がすわけでもなく、ツータッチ、スリータッチ入れた後に無難なパス。そしてフィジカル強度の落ちる南野は、後ろから突かれると簡単にロストしてしまう。このような場面が目立った。

 人と人の間に立つ選手へパスが入れば、一気に複数人を置き去りにすることができる可能性がある。そうすれば必然的に数的優位な状況となり、ゴールへの確率は高まる。ただ、これはパスを出す側の技術ももちろん、受ける側の技術も相当重要。ただでさえ狭い場所かつ寄せられやすい状況にあるので、そこをかいくぐるアイデアやコントロール力がなければ、格好の餌食となるからだ。

 そして、ブライトン戦における南野はまさにそれだった。上記した通り相手を剥がす怖さやフィジカルはなく、無難なプレーに走る。こうなると当然、味方はパスを出しにくくなる。ボールの逃げ所としてはいいかもしれないが、攻撃の活性化に関与できないので、パスを預けてもほぼ意味がないからだ。“前への意識が強い”ジョッタがなかなか南野を使わなかったのも、これらとまったく関係がないとは言い切れない。

 データサイト『Sofa Score』によるレーティングは「5.8」で単独最下位。ボールタッチ57回でロストは14回、デュエルは10回中9回負け。とくに後者は、リバプールの中盤の選手としては致命的な数字だ。ブライトンの餌食になったと言わざるを得ない。

 慣れないインサイドハーフでの90分間だったとはいえ、ここまでインパクトを残すことができなかったのは問題だ。クロップ監督は一人の選手を見放したりすることはしないだろうが、間違いなくリバプールでの南野の寿命は縮んでいる。

(文:小澤祐作)

【了】

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