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ビエルサとアンチェロッティ
この試合に先立って、ピッチでは60歳で亡くなったディエゴ・マラドーナ氏に哀悼の意を示す1分間の拍手が捧げられた。
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この試合がマルセロ・ビエルサとカルロ・アンチェロッティの対戦だったのは故人が引き寄せたものだろうか。ビエルサはマラドーナと同様にかつてアルゼンチン代表を率いた。ナポリのエースだったマラドーナと幾度となく対戦したアンチェロッティは、涙を浮かべて盟友の死を悼んだ。
アンチェロッティ率いるエバートンは低空飛行を強いられている。エバートンは開幕4連勝から引き分けを挟んで3連敗。代表ウィーク明けとなった先週にフラム戦で4試合ぶりの勝利を手にしたが、連勝とはならなかった。
エバートンの3連敗は、リバプール戦で退場となったリシャルリソンに出場停止処分が科された3試合だった。ニューカッスル戦はハメス・ロドリゲスもフィットネスの問題で欠場。ウイングが揃わないエバートンの攻撃陣は迫力に欠いていた。
前の翼は戻ってきたが、今度は後方の翼を失った。代表ウィーク中に主将のシェイマス・コールマンがハムストリングを負傷。さらに今週にはリュカ・ディーニュが練習中に膝を負傷し、復帰までは2か月から3か月を要すると見られている。
指揮官はコールマンを「(パオロ・)マルディーニ、(ジョン・)テリー、(セルヒオ・)ラモスと同じ地位にいる」と絶賛し、ディーニュを「ヨーロッパで最高の左サイドバックの1人」と言わしめる。そんな2人をエバートンは一気に失ってしまった。
右サイドのコンバート
アンチェロッティは戦術に固執するタイプではない。ユベントス、レアル・マドリード、チェルシーなどを率いてきたが、選手の特徴を活かす形にチームを柔軟に変化させてきた。最適な形を見つけるまでに時間がかかることもあったが、その結果は彼が残した実績を見れば明らかだろう。
エバートンは、フラム戦と同様に3バックでこのリーズ戦に臨んだ。ベン・ゴッドフリーを右センターバックに置き、アレックス・イウォビを左ウイングバック、中盤が本職のトム・デイビスを右サイドに置いている。
デイビスの右サイド起用はうまくいっていた。コールマンが負傷、ジョンジョー・ケニーもこの試合には間に合わなかった。おそらくは短い準備時間で用意したスクランブル起用だったが、6分にはボックス内に侵入し、アブドゥライェ・ドゥクレへラストパスを供給。守備ではインターセプトを連発し、及第点以上の活躍を見せていた。
チームの再構築
しかし、デイビスを下げたあたりからチームはバランスを崩した。61分にデイビスを下げ、左にファビアン・デルフ、右にイウォビを並べる。67分にはイウォビを下げてアンドレ・ゴメスを投入し、ドゥクレを右サイドに入れている。
慣れない右サイドでプレーしたドゥクレは失点に絡んでしまった。中央でパスを受けたリーズのハフィーニャに、ゴッドフリーがアプローチする。左サイドを駆け上がるスチュアート・ダラスにはハメス・ロドリゲスがプレスバックで対応していたが、その隣でドゥクレがうろうろしている姿が映る。ドゥクレが絞っていれば、ゴッドフリーはハフィーニャのシュートをブロックすることができたかもしれなかった。
右サイド以上に、左サイドの穴は目立った。ここまでリーグ4位の4アシストをマークしているディーニュが不在で、左サイドから攻撃を作ることができなかった。ハメス・ロドリゲスが右からサイドチェンジをしても、そこから高精度のクロスを飛ばすこともできず、チャンスはカウンターに依存した。
メンバーさえ揃えば、強力な攻撃陣と働き者の中盤を活かした戦いができることは分かった。ただ、フルメンバーで戦えないことも多く、複数の主力を同時に欠くことは今後もあるだろう。「ヨーロッパで最高の左サイドバックの1人」であるディーニュと同じ働きをできる選手はいない。アンチェロッティは新たなバランスを見つける必要性に迫られている。
(文:加藤健一)
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【了】