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Jリーグ 4年前

ウーゴ・ヴィエイラ、札幌電撃加入の裏側。異例の移籍…マリノスで愛されたFWがJリーグに帰還

北海道コンサドーレ札幌は、シーズン終盤に差し掛かった10月末に新外国籍選手との契約に踏み切った。かつて横浜F・マリノスで活躍したウーゴ・ヴィエイラの獲得である。例年ならばほぼありえない、異例の移籍はいかにして実現したのだろうか。(取材・文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

ウーゴ・ヴィエイラ、2年ぶりの日本復帰

ウーゴ・ヴィエイラ
【写真:Zoomのスクリーンショット】

 横浜でカルト的な人気を誇ったストライカーが、2年ぶりにJリーグへと帰ってきた。

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 北海道コンサドーレ札幌は10月29日に、元横浜F・マリノスのポルトガル人FWウーゴ・ヴィエイラ加入を正式発表した。同選手は11月1日に来日し、約2週間の自己隔離を経て11月14日に新天地となるチームに合流。

 同21日に行われたJ1リーグ第28節の清水エスパルス戦で後半途中からピッチに立ち、赤黒のユニフォームをまとってのJリーグ再デビューを果たした。

 ここで2018年末にマリノスを退団してからのウーゴの歩みを振り返っておきたい。

 当時も日本でのプレー継続を第一希望にしていて、Jリーグの複数クラブから関心を寄せられ、実際に破格の条件を提示してきたクラブもあった。だが、結局2019年1月にトルコ1部のスィヴァススポルと契約を結んだ。

 欧州に戻った理由は「ポルトガルにいる母親の体調が芳しくなく、できるだけ近くにいたかったから」。母国と時差2時間のトルコであれば、何かあった時にすぐ駆けつけられると考えていた。

 ところが、そこでウーゴは「最悪だった」と振り返ることになる1年を過ごす。スィヴァススポルに加入してすぐ、ひざに大怪我を負ってしまい、約5ヶ月間の戦線離脱を強いられた。その間に監督が替わり、2019年夏に新指揮官が好む大柄なストライカーが2人獲得された。復帰してもウーゴに居場所はなくなっていた。

 2019/20シーズン前半戦はベンチ入りこそするものの、全く起用されない日々が続く。最終的に出場機会増加の見込みがないと判断し、2020年1月末にスィヴァススポルとの契約を解除してフリーになった。

 この頃も、「日本へ戻りたい」とJリーグ復帰を熱望していた。ただ、1月末には日本のほとんどのクラブが新シーズンに向けた編成を終えていて、年俸の高額なウーゴに手を出せるクラブはなかった。

不遇だった欧州での日々

 結局、彼は自らの故郷のクラブであるジル・ヴィセンテと半年契約を結ぶ。キャリア4度目の加入で、かつてポルトガル2部から1部への昇格に貢献した地元出身選手として大歓迎を受けた。しかし、当時のジル・ヴィセンテは守備的な戦術で、前線の大柄なブラジル人FW頼みの戦いをしていたため、技巧派のウーゴはなかなか出番を得られなかった。

 それでも新型コロナウイルス感染拡大の影響で国外移籍が難しい状況になり、2020/21シーズンもクラブの要請に応える形でプレシーズンの始動直前に契約を延長してジル・ヴィセンテに残留した。

 欧州のシーズンが始まってわずか2ヶ月で札幌に移籍するに至ったのは、ジル・ヴィセンテの新監督との折り合いの悪さゆえだった。2020/21シーズンから就任したルイ・アウメイダ監督は前任者以上に消極的な戦い方で、ウーゴの考えとはかみ合わず。ほとんど干された状態になり、開幕から1試合もベンチ入りすることなく、移籍を希望した選手側の求めに応じてクラブも双方合意のうえでの契約解除に至った。それが10月6日のことだ。

 フリーになってからはトントン拍子だった。札幌の三上大勝GM(ゼネラルマネージャー)は、シーズン終盤に異例とも言える新外国籍選手獲得に踏み切った経緯を次のように説明する。

「ウーゴがポルトガルのクラブと契約を解除した時に、(代理人を通して)我々クラブの方に打診がありました。『自分自身、大好きな日本でもう一度やってみたい。数年前に声をかけていただいた札幌というクラブに非常に興味を持っている』という話をいただいて、我々としてもクラブとして、ウーゴの持っているキャリアや能力が、我々の最後のゴールを奪うところの課題を改善するうえで非常にマッチすると思いました」

 ジル・ヴィセンテ退団後、ウーゴにはスペインをはじめとした欧州クラブからの接触もあった。ACLで古巣のマリノスと対戦する可能性のあるアジアのクラブからも長期契約を提示されたが、あくまでJリーグ復帰を最優先に断りを入れていた。

ペトロヴィッチは「Jリーグで最高」

ウーゴ・ヴィエイラ
【写真:Getty Images】

 もちろん複数のJリーグクラブから関心を持たれていたが、ウーゴは札幌行きを望んだ。最大の理由は「Jリーグで最高の監督」と感じる、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の存在だった。

 2人が最初に接点を持ったのは2018年にマリノスのホームで札幌と対戦した後のことだった。ペトロヴィッチ監督とウーゴの妻がともにバルカン半島出身という共通点もあり、さらに監督がウーゴのストライカーとしてのプレースタイルを大変に気に入っていて、クラブの垣根を超えての関係が出来上がった。この頃から札幌のSNSをフォローするようにもなった。

 2018年末にマリノスを退団した際には札幌も獲得を目指したが、当時は条件面で選手側の要求と価値に見合ったものを提示できず、正式オファーにも至らなかった。つまり札幌とにとって、今回のウーゴ獲得は2年越しのラブコールが実ったということになる。

 関係者によれば、札幌から最初の正式なオファーが提示されたのは10月14日の名古屋グランパス戦が終わった後だったという。そこからはトントン拍子に話が進み、条件面で合意した後は、日本でプレーするためのビザ取得が完了したタイミングで正式発表となった。

 三上GMは交渉の過程を説明するとともに、異例の短期契約となった事情も明かしている。シーズンの残り試合はあくまで“試用期間”であり、来季に向けて戦力になると判断されれば契約延長の方向となる。ウーゴ自身も今年の特殊な事情を理解してサインした。

「新型コロナウイルスによって限られた経済状況などを踏まえ、我々としてまずはシーズンの残り2ヶ月間、一生懸命、ウーゴの成長、チームの課題解決に向けて一緒にやっていこうと。その方向がこの2ヶ月で見えた場合には、ぜひ改めてその先のことも…と、クラブとしての考えを率直に伝えさせてもらいました。ウーゴにも『それは然るべきことで、まずは自分は一生懸命サッカーをやっていきたい』と答えていただいたので、無事契約に至りました」

今後の起用法は?

 10月21日、札幌ドームで2年ぶりにJリーグのピッチに足を踏み入れた。「本当に嬉しかった。コンディションはこれからもっと良くなっていくと思うし、心配していない」と、ウーゴは札幌でのデビュー戦を終えた後に話していた。

 懸念されるのはやはりコンディション面だ。来日前最後の公式戦出場は7月で、プレシーズンは一度も90分間プレーしておらず、2020/21シーズンはリーグ戦で一度もベンチ入りすらしていない。約半年間、実戦から遠ざかっていたことになる。

 ウーゴ自身「当然100%ではない。100%で今季を終えるのも非常に難しいと思う」と認める。しかし「長期間実戦から離れていることを考えれば、僕自身は今のコンディションは非常にいいと思う」と調整には自信をのぞかせる。

「10分でも、30分でも、チームのために最大限に持っている力を発揮し、強い気持ちでプレーすれば、100%でなくてもチームに貢献できると思っている」

 たとえ短い時間でも結果を残せる能力は持っている。ゴール前での巧みな駆け引きの勘が失われていないことは、清水戦の約25分間でも十分に示していた。

 ペトロヴィッチ監督もウーゴのことを信じているからこそ、調整を焦せらせるつもりはないのだろう。清水戦後の記者会見では「彼に対するみなさんからの期待は高まっていると思うが、我々としては必要以上の重圧をかけたくない。怪我のリスクも考慮しながら慎重に起用していく」と語っていた。残りのリーグ戦4試合も途中出場メインで実力を見極めていくことになりそうだ。

 マリノス時代は重要な試合で何度も決定的なゴールを決め、底なしの負けず嫌いで、常に貪欲な姿勢で勝利を追い求めたことで絶大な人気を誇った。たった2年であれほどカルト的な支持を得られる外国籍選手はそうそういない。

 きっと札幌でも記憶に残るゴールをたくさん決めて、愛される選手になるはず。劇的な活躍を何度も目撃してきただけに、ウーゴがJリーグで再び輝きを放つことを願ってやまない。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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