磐田とヴェルディをも上回る強さ
【写真:Getty Images】
圧倒的な強さのまま駆け抜けて2020年のJ1王者となった川崎フロンターレ。Jリーグ史上最強という評価もある。
【今シーズンのJリーグはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
筆者がJリーグでとくに印象的だったチームは1993年の川崎、といってもこちらはヴェルディ川崎で今日の東京ヴェルディだ。もう1つはN-BOXとともに思い出される2001年のジュビロ磐田。ただ、この2つのスーパーチームと比べても川崎Fのほうが上なのだろうとは思う。
Jリーグ初年度のヴェルディは、個々の能力とゲームの理解力で他チームに抜きんでていた。三浦知良、ラモス瑠偉、ビスマルク、ペレイラなどの個人技と読売クラブ時代から培ってきたスタイルがあった。突き抜けた実力という点では川崎(フロンターレのほう)と同じだが、なにせ27年も前のチームなので比較は難しい。当時と現在の両方を見た個人の感覚として、フロンターレに分があるだろうと思うだけだ。
磐田は洗練されたパスワークと守備への切り替えの速さで異質だった。ヴェルディがブラジルの香りなら、このときの磐田はザ・日本、まさにジャパンズ・ウェイ。川崎Fと似ていた。ただし、N-BOXは名波浩あっての戦術で、名波がいなければ成立しなかった。
2020年のレギュレーションが特殊だったこともあるが、川崎Fは誰がプレーしてもほとんどクオリティが落ちていない。そもそも2001年の磐田はファーステステージを制したがチャンピオンシップでは負けている。チームトータルの力で川崎Fに軍配が上がる気がする。
そんな川崎Fをリーグ戦で破ったチームが3つある。名古屋グランパス、北海道コンサドーレ札幌、大分トリニータだ。
無敵のチームに挑む方法
ジョゼップ・グアルディオラが監督に就任し、バルセロナの黄金時代が到来した。伝統のパスワークに苛烈なほどのハイプレスを結び付けて勝利の循環を完結させた。戦術的な構造という点では今季の川崎Fとよく似ている。同時期にスペイン代表もピークを迎えた。リオネル・メッシという特殊なタレントがいないぶん、むしろこちらのほうが川崎Fに似ていたかもしれない。
バルサとスペインはしばらく無敵状態だった。しかし、やがてさまざまな対抗策が出てきている。最初はいわゆる「バスを置く」という集中守備。引いてスペースを消して耐える。少ないながらもチャンスはあるので、それを逃さず決めれば勝てないことはない。名古屋の勝ち方はこれに近かった。
ただ、専守防衛だけでは勝率は上がらない。アスレティック・ビルバオを率いたマルセロ・ビエルサ監督は旧サン・マメスのゲームでマンツーマンをぶつけてバルサの攻守循環を断ち切りに行った。ドローだったが全盛期のバルサと互角の勝負を演じた印象的な一戦である。こちらはマンツーマンで川崎Fのリズムを断った札幌と同じだ。
大分は自分たちがボールを保持することで、川崎Fのリズムにさせないという戦い方で前半を互角以上の流れに持ち込んだ。川崎Fに退場者が出た幸運もあったが、これも有効な対策だろう。のちにバルサの監督になったキケ・セティエンがベティスを率いたときにやったことがある。
真っ向勝負を挑む
スペイン時代の終焉を印象づけた2014年ワールドカップでは、ルイ・ファン・ハール監督のオランダが5バックの分厚い守備とカウンターで勝利。基本は「バス」だが、性能のいいバスだった。チリはビエルサ方式で勝利(監督はビエルサ信者、ホルヘ・サンパオリ)した。
バルサ&スペインの対策にはいくつかのパターンがあるが、ビエルサ派のマンマークとベティスのポゼッションは、そもそもビエルサとセティエンがそういうサッカーを志向する監督だった。札幌、大分も同じで、対策というより自分たちのスタイルをぶつけたわけだ。
レアル・マドリードはパスワークの部分でバルサ化し、強大化したライバルとして現在もしのぎを削る。川崎Fと似たスタイルで真っ向から挑んで勝つチームも現れるかもしれない。
いずれにしても川崎Fの攻守の循環を断ち切ること。それができればアンタッチャッブルではないはずだが、そのときに川崎Fに何をつきつけられるかだろう。
(文:西部謙司)
【了】