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レスター、その緻密な戦略とは? 徹底分析…シティ戦衝撃の5得点【カメレオンの生息プラン・前編】

「プレミアリーグ謀略者たちの兵法」と題してプレミアリーグの監督たちを特集した12/7発売『フットボール批評issue30』から、今季のプレミアで注目を集める変幻自在の「カメレオン・レスター」に本誌初登場となる元Jリーガー・柴村直弥氏が自身の経験を盛り込みながら解説を試みた記事を、発売に先駆けて一部抜粋して前後編で公開する。今回は前編。(文:柴村直弥)

text by 柴村直弥 photo by Getty Images

レスター、圧勝の理由。偶然ではない、確かな前兆

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【写真:Getty Images】

マディソンの放ったシュートは、美しい放物線を描き、懸命に手を伸ばすGKエデルソンの手の届かないコースへ吸い込まれていった。

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 2019/20シーズンのプレミアリーグ第3節、レスター・シティによるマンチェスター・シティ戦での4点目のゴールだ。77分のこのゴールで、スコアは4対1。残り13分で3点差となり、このゴールは実質試合を決定づける1点となった。シティのペップ・グアルディオラ監督はベンチで何度も首を横に振り、苛立ちを隠せない。こんなはずではなかった。そんな思いが見て取れる。

 その後、シティは1点を返すも、レスターは組織的な攻撃でPKを獲得し、5点目を奪う。5対2でレスターの勝利。誰がこのスコアを予想しただろう。試合前、さらには試合が始まって37分のヴァーディーのゴールまではレスターが勝利することすら想像するのは難しかったかもしれない。 

 レスターが最初にチャンスを作りかけたのは21分。攻撃からCKを獲得した。そして25分20秒のジャスティンがゴール前で折り返したシーン。これらは偶然ではない。どちらも自陣からのビルドアップで相手のプレスを剥がしてチャンスを作ったものだ。チャンスは少なかったが、確かな前兆はあった。

5-4-1へのシステム変更。その狙いとは?

 そして、迎えた37分。ヴァーディーのゴールが生まれる。PKでのゴールであるが、その前にペナルティーエリア内で決定機を作った。レスターの前半のシュートはこのPKの1本。対するシティは5本。スコアは1対1。スタッツだけ見ればレスターは運良く得点をしたがシティが圧倒的にゲームを支配している、と推察する人も多いだろう。だが、ブレンダン・ロジャーズ監督、そしてレスターの選手たちは勝利を信じて疑わなかったはずだ。自分たちの戦い方は間違っていない。後半に逆転できる、と。

 この試合を見ていく中で、わかりやすく、そして最大のポイントは、レスターが、システムを今季のこれまでの[4‐3‐3]([4‐2‐1‐3]もしくは[4‐1‐2‐3])から、[5‐4‐1]に変更して試合に臨んできたことだろう。

 シティの攻撃は、相手の最終(DF)ラインとMFのラインの間、もしくは最前線に、5人の選手が並ぶ形になることが多い。それを4バックで守るとなると、相手の5人に対して4人で守ることになり、対応は容易ではない。4人の選手の位置取りと横ずれが極めて重要になる。

 パスの出し手のクオリティが高くなければ守れる可能性は上がり、逆にボールを奪った際に相手の5選手を置き去りにするカウンターをしやすくなるメリットもあるが、相手との力関係がポイントとなる。ロジャーズ監督はシティを相手にそれは困難だと判断したのだろう。5人に対して5人で対応する、5バックという策を取った。

(文:柴村直弥)

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30号_表紙_fix

『フットボール批評issue30』


定価:本体1500円+税
プレミアリーグ謀略者たちの兵法

≪書籍概要≫
監督は謀略者でなければならない。それが世界最高峰の舞台であるプレミアリーグであればなおのことだ。さらに中堅以下のクラブを指揮している場合は、人を欺く行為こそ生存競争を勝ち抜くために必要な技量となる。もちろん、ピッチ上における欺瞞は褒められるべき行為で、それこそ一端の兵法と言い換えることができる。
BIG6という強大な巨人に対して、持たざる者たちは日々、牙を研いでいる。ある監督は「戦略」的思考に則った「戦術」的行動を取り、ある監督はゾーン主流の時代にあえてマンツーマンを取り入れ、ある監督は相手によってカメレオンのように体色を変え、ある監督はRB哲学を実装し、一泡吹かすことだけに英知を注ぐ。「プレミアの魔境化」を促進する異能たちの頭脳に分け入るとしよう。

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【了】

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