負傷者続出のレアル
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージは後半戦へと突入。インテルとレアル・マドリードが同居するグループBは大混戦となっている。この試合に先駆けて行われた試合で、ボルシア・メンヒェングラートバッハがシャフタール・ドネツクを下して勝ち点を8に伸ばし、勝ち点4でレアルとシャフタールが並んでいた。インテルは勝ち点2で最下位。どちらにとっても、グループステージ突破のためには勝たなければいけない試合だった。
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しかし、レアルが置かれた状況は厳しい。エースのカリム・ベンゼマと主将のセルヒオ・ラモスは負傷、フェデリコ・バルベルデも足の骨折で離脱中。カゼミーロは新型コロナウイルスの陰性反応が確認されて召集メンバーに加わったが、エデル・ミリトンとルカ・ヨビッチは陽性反応が出たため出場できなかった。
ジネディーヌ・ジダン監督がインテル戦に送り出したメンバーは、4日前のビジャレアル戦と同じだった。カゼミーロはベンチスタートとなり、マルティン・ウーデゴールが引き続き先発に名を連ねている。
思いがけないほど早い時間にレアルは先制点を手にした。ナチョが倒されてPKを獲得し、7分にエデン・アザールがPKを成功させた。
33分にはアルトゥーロ・ビダルがペナルティエリアで倒されたが、シミュレーションの判定が下る。イエローカードが提示されたビダルはこれに抗議し、立て続けに2枚目のイエローカードをもらってしまった。
ファウルをもらいにわざと倒れたというよりは、自分の足が立ち足に引っかかってしまったようにも見えた。シミュレーションは少し気の毒な判定にも見えたが、結果的にインテルは10人で残りの約60分間を戦わなければいけなくなった。
攻めるナチョと守るメンディ
セルヒオ・ラモスがいるのかと勘違いしそうな場面が何度もあったが、背番号を確認すると4番ではなく6番だった。左センターバックで起用されたナチョは、主将が憑依したかのように何度も前線に攻め上がる。先制点のPKはボックス内でナチョが倒されたことで得たものだった。
この時点は、ナチョの攻め上がりは即興的なものだと思っていた。しかし、先制後も同じ動きを繰り返していたので、おそらくは用意された動きだとわかった。
ナチョが上がったときは、メンディがDFラインに残っていた。アザールが幅を取り、メンディが上がるはずだったスペースを結果的にナチョが突いた。しかし、ナチョの攻め上がりが目的ではなく、フェルラン・メンディをDFラインに残すのが狙いだったように見えた。
インテルは右にロメル・ルカク、左にラウタロ・マルティネスという2トップだった。レアルがボールを持つ展開が予想される中で、インテルはカウンターからチャンスを見出したい。空いた左サイドバックのメンディの裏のスペースで、ルカクが起点を作ろうと考えるのは自然だろう。
メンディが上がってしまえば、それをカバーするのはナチョの仕事になる。そこでナチョとメンディの役割を交換し、カウンター対策としてルカクをメンディに監視させた。スピード抜群のメンディによってルカクのスピードは相殺され、インテルはカウンターを封じられている。
インテルがボールを持ったときはナチョがルカクを離さなかった。データサイト『Whoscored.com』の集計では、ナチョが両チーム最多となる5回のタックルを成功させ、チーム最多タイの2度のインターセプトを記録している。1人であればどこかで綻びが出ていたかもしれないが、2人で役割を分担することで90分間集中を保つことができた。
個人が強みを発揮できる職場
ビジャレアル戦ではトニ・クロースがアンカー気味、ウーデゴールがトップ下気味で、その間をルカ・モドリッチがつなぐという役割だった。しかし、インテル戦ではモドリッチとクロースが中盤の底に並んだ。リードしたレアルは深い位置でクロースとモドリッチがボールをさばく。130本のパスを成功させたクロースのパス成功率は97%を超え、モドリッチも107本のパスを成功させた。
1人少なくなったインテルは、ラウタロを中盤に下げて5-3-1でカウンターを狙う。さらにハーフタイムには2枚の交代カードを切って4バックに変更。しかし、ボールを保持して時間を潰すことに関して、レアルの右に出るものはいない。両ボランチが中心となって相手をいなし続け、チーム全体のパス成功率は93%に達していた。
ルーカス・バスケスのクロスが相手のオウンゴールにつながり、レアルは59分に追加点を奪う。早い時間の失点とビダルの退場という憂き目にあったインテルは成す術なくレアルに敗れた。
個人がそれぞれの得意分野で活躍するのは理想の職場である。レアルは中心人物を欠いていたが、出場した選手が強みを発揮できる布陣をジダンは作り上げた。メンディもナチョもクロースもモドリッチも、それぞれの強みを発揮していた。
(文:加藤健一)
【了】