アジア王者を決める大会が再開
いよいよAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が再開。JリーグからはFC東京、ヴィッセル神戸、横浜F・マリノスが参戦する。3クラブとも直近のJリーグでは成績が芳しくないが、カタールで集中開催される“短期決戦”に向けて心機一転、FC東京の長谷川健太監督もアジア制覇に向けて「チャンスと捉えている」と語っていた。
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大会のレギュレーションはグループリーグから行われ、各グループの2位が決勝トーナメントのラウンド16に進出し、トーナメント形式で12月19日に行われるファイナルを目指すという流れだ。セントラル開催のなかで、グループリーグが例年通りホーム&アウェーの6試合、上位2チームが決勝トーナメントに勝ち上がり、そこからは一発勝負で進んで行く。
変則型のワールドカップのような形だが、大会が行われるのは2022年にW杯の本大会を控えたカタール。2011年に日本代表がアジアカップ決勝を戦ったハリーファ国際スタジアムもW杯仕様に改装され、冷房システムが完備された。
FC東京が上海申花と初戦を戦うエデュケーション・シティ・スタジアムは首都ドーハ近郊のアルラーヤンに新築されたサッカー専用競技場だ。ちなみに決勝の会場は漁船をイメージした奇抜なデザインが注目される、ドーハ南近郊のアル・ワクラ・スタジアムで、W杯の決勝トーナメントでも会場になることが予定されている。
そうした会場を国際的にお披露目すると同時に、W杯の予行演習的な意味合いもありそうな今大会だが、東アジアのチームにとっては非常に過酷な戦いとなる。準決勝まで東アジアの戦いになり、決勝で西の王者と対戦するという構図は例年通りだが、西地区は9月に再開してグループリーグ、決勝トーナメントともに進行済で、イランのペルセポリスが決勝に駒を進めている。
過密日程の中で決勝まで勝ち進み、さらにフレッシュな西の王者に一発勝負で勝たなければアジア制覇を達成できない。Jリーグ勢にとっても、ペルセポリスは“ラスボス”のような存在になるが、まずは“東アジアの戦い”を勝ち上がらないことには挑戦権を得ることもできない。
FC東京は勝てば決勝T行きが近づく
Jリーグ勢の先陣を切るFC東京は中断前の成績が1勝1分で、初戦となる24日の相手は中国の上海申花だ。新型コロナウイルスが初期に蔓延した中国は試合を全く消化していなかったため、いち早くカタールに入って試合を行なっている。上海申花はオーストラリアのパース・グローリーに2-1で勝利したが、第2節は韓国の蔚山現代に3-1で完敗。ボールポゼッションもシュート数も大きく上回られた。
FC東京の長谷川監督も警戒するように、現地で2試合を戦っている体感的なアドバンテージは上海申花の方にあるが、FC東京は11月18日にベガルタ仙台と引き分けてから中5日あり、長時間の移動はあるものの、体力的な強みと現地で敵情視察できている強みは生かしたい。
キーマンはキャプテンの東慶悟だ。長期の怪我から復帰し、メンバーの中ではフレッシュな選手として中盤から勢いを付けると同時に、ゲームコントロールも求められる。またオーストラリアのウェスタン・シドニーや韓国のFCソウルに在籍し、アジアでの経験が豊富な高萩洋次郎の存在も心強い。そうした選手たちを支えに、持ち前の堅守速攻を異国の地でどれだけ打ち出していけるかが躍進の鍵だ。
韓国の名将チェ・ガンヒ監督が率いる上海申花は元イタリア代表FWステファン・エル・シャーラウィなど数選手が欠場しており、前線のパワーダウンは否めない。4-4-2をベースとするチームはセンターバックにタンザニア人の父を持つフランシスと元カメルーン代表のベテランDFエムビアがセンターバックを組むディフェンスとシンプルなサイドアタックから長身のリウ・ルオファンに合わせる形がベースとなる。
パース・グローリーが2連敗しているためFC東京がここで上海申花に勝利すれば暫定首位になるだけでなく、グループリーグ突破に向けても非常に優位に立てる。もちろん決勝トーナメントに勝ち上がることが大前提だが、その後の戦いを見据えれば早く突破を決めて、できれば首位で勝ち上がりたい。その意味でも大事な初戦になる。
神戸はアジア屈指のタレント集団と激突
ヴィッセル神戸はJリーグで5連敗を喫しているが、心機一転、この大会でアジアを制覇するモチベーションは非常に高まっている。ただ、25日に対戦する広州恒大はイレギュラーな形式になった中国超級リーグで、決勝で江蘇蘇寧に敗れて優勝を逃しており、ACLにかける意気込みは強いようだ。
元イタリア代表DFファビオ・カンナバーロ監督が率いる広州恒大のタレント力は東アジア最強とも言える。バルセロナでアンドレス・イニエスタの同僚でもあった元ブラジル代表のパウリーニョは太ももの負傷で大会欠場を表明したが、リカルド・グラールをレンタル先の華南から呼び戻し、中国に帰化したエウケソン、規格外の長身FWタリスカ、韓国代表DFパク・ジスらと強力なスカッドを形成している。
ただ、22日に行われた水原三星との試合は劣勢に立たされる時間も長く、チャンスらしいチャンスもあまり無いままスコアレスドローとなっており、タリスカを欠いた攻撃は迫力が無かった。ただ、現地で1試合こなしたことで一変してくる怖さはある。
神戸はイニエスタを中心としたパスワークのイメージが強いが、三浦淳宏監督は中盤でボールを奪い、素早いショートカウンターを狙う度合いを強めている。山口蛍を中心に良い形でボールを奪い、古橋亨梧や藤本憲明、小川慶治朗、小田裕太郎と縦のスピード豊かなタレントが揃っており、イニエスタのパスをトリガーとした速い攻撃で大型のバックラインを崩して行きたい。
マリノスが挑むアジア最強レベルの相手
昨年のJリーグ王者である横浜F・マリノスは25日に上海上港と対戦。中断前に2連勝しているアドバンテージがあり、いち早くカタールに乗り込んで2連勝を飾った上海上港との直接対決に勝てば、グループリーグ突破が早くも見えてくる。
ただ、上海上港は中国勢の中でも好調で、22日に行われた韓国王者の全北現代との試合は主力のフッキ、オスカル、オーストラリア代表MFアーロン・ムーイが揃って途中出場、終盤にPKを獲得してフッキの決勝ゴールで2-1の勝利を飾った。ポルトガル人のヴィトール・フェレイラ監督が率いる上海上港はタレント力もさることながら、チームの完成度という意味でもアジア最強レベルと言える。
言い換えると、その相手に勝利できればマリノスとしても今後の戦いに大きな自信を得ることになる。なお試合会場はアル・ワクラ・スタジアムであり、決勝の地をこの時点で経験できることもメリットだ。“アタッキングフットボール”を掲げるマリノスだが、上海上港を相手に耐え凌ぐ時間帯は必ず出てくる。ただ、それは逆にカウンターで得点を奪うチャンスでもあり、今年のマリノスが強みにしているところ。
マルコス・ジュニオールなど外国人選手は頼りになるが、シーズン途中に加入した前田大然はJリーグ以上にACLで輝く可能性が十分にある。自分たちが相手陣内で攻める時間帯は逆にフッキなど推進力のあるアタッカーに裏を突かれる危険もあり、どちらがボールを持つ時間帯もスリリングな状況が続きそうだ。その意味でチアゴ・マルチンスとフッキのマッチアップは大きな見どころだ。
アンジェ・ポステコグルー監督にとってはオーストラリア代表時代の教え子であるムーイとの再会になる。フッキ、オスカルに注目は集まるが、このムーイはテクニックと視野の広さに関しては欧州トップリーグでも通用するものがあり、一発で出てくるパスは非常に危険。これまで幾度となくJリーグ勢を苦しめてきた上海上港に加わった明確なアクセントだ。ただ、彼の危険さはポステコグルー監督が誰よりも理解しているだろう。
FC東京、ヴィッセル神戸、横浜F・マリノス。短期決戦と言っても決勝への道のりは長いが、どのチームも決勝トーナメントに勝ち上がることを期待したい。最終的にファイナルでペルセポリスに挑めるチームは1つしかないが、W杯の地でのJリーグ対決の実現も楽しみだ。
(文:河治良幸)
【了】