現地紙が推測するEUROメンバーは?
敵陣でのポルトガル戦(1-0)と、ホームでのスウェーデン戦(4-2)に2勝したフランスは、首位でUEFAネーションズリーグのグループリーグを終えた。
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来年10月、ベルギー、スペイン、イタリアとのファイナルズに挑むが、その前に今回の試合は、来年6月開催のEURO前の最後の公式戦。登録メンバーを絞り込む上で指針となる重要な機会であり、さっそく『レキップ』は、23人のうち18人はほぼ確定だと推測している。
【GK】
ウーゴ・ロリス、スティーブ・マンダンダ、マイク・マニャン
【DF】
バンジャマン・パバール、ラファエル・ヴァラン、プレスネル・キンペンベ、リュカ・エルナンデス、リュカ・ディーニュ、クレマン・ラングレ、クルト・ズマ
【MF】
エンゴロ・カンテ、ポール・ポグバ、コランタン・トリッソ、アドリアン・ラビオ
【FW】
アントワーヌ・グリーズマン、キリアン・ムバッペ、キングスレー・コマン、オリビエ・ジルー
太字は2018年ロシアワールドカップの優勝メンバーだ。18人中12人と、3分の2を占めている。
「逆境に強いジルー!」
今回の代表ウィークでは、メンバーに関して2つの注目ポイントがあった。
ひとつはオリビエ・ジルーについて。
これまで代表105キャップ、44得点のジルーは、ティエリ・アンリの51ゴールに次ぐフランス代表の歴代最多スコアラーで、現役メンバーでは最多だ。身長193cmの立派な体躯でポストプレーができ、アントワーヌ・グリーズマン、キリアン・ムバッペら、フリーロールで動くタイプのアタッカーとの相性もいいことから、ディディエ・デシャン監督にも重用されてきた。
しかし2018年1月にアーセナルからチェルシーに移籍してからは出場時間が激減。今シーズンはリーグ戦でこれまで計33分しかピッチに立っていない。ゴールはリーグカップでチャンピオンシップ(イングランド2部)のバーンズリー相手に決めた1点のみだ。
ポルトガル戦では、デシャン監督はジルーではなくアントニー・マルシャルを先発に起用し、その理由を、「チームにとって最善と思われる選択をした。マルシャルがいることで、より奥行きが生まれる。ジルーはいまクラブで厳しい状況にある。おのずと試合勘を保つのも難しい」と話した。
しかし次のスウェーデン戦で先発のチャンスを与えられると、ジルーは価値ある同点打を含む2得点で勝利に貢献。1点目は左サイドのマルキュス・テュラムのパスを冷静に読んでの狙い澄ましたシュート。そして2点目は、ムバッペのクロスに飛びついたダイビングヘッド。雄叫びをあげながらの力強いガッツポーズに、34歳のフォワードの意地が感じられた。
得点シーン以外にも、ハングリーに空中戦に挑み、ゲームメイクにも奔走した彼らしい献身的なパフォーマンスに、「オリビエのこれまでの貢献、そして今後ももたらしてくれるであろうものは疑いようがない。今日も素晴らしいゴールを決めてくれた」とデシャン監督もご満悦。見限っていたメディアも「逆境に強いジルー!」と持ち上げるに至ったのだった。
ちなみに、アシストした元フランス代表の名DF、リリアン・テュラムの息子マルキュスは、今回の代表ウィークがA代表デビューだった。
逞しくなったラビオの復帰
そしてもうひとつの注目ポイントは、アドリアン・ラビオの代表復帰。
ラビオは2018年のW杯ロシア大会の際、23人の正メンバーから漏れ、けが人が出た場合などに追加招集される『予備メンバー』に指名されると、「監督は、所属クラブで活躍をしていることを選考基準とすると言いながら、それを満たしている自分を評価しないのは納得がいかない」と、恐れ多くも辞退したのだった。
デシャン監督は「『代表チームとは、選ばれる23人だけでなくみんなでサポートして作り上げるもの』という精神を彼は理解できていない」と非難し、それ以降は彼を招集していなかった。
てっきりもう復帰はないものと思っていた人も多かった中での2年半ぶりの代表復帰。「この場に帰ってこられてうれしい。デシャン監督とは、2018年の出来事や、ユベントスでのことなどについて話した。監督はあの一件のあとも、自分をフォローしてくれていた。再びプレーする機会を与えられたからには、自分にできることを証明したい」とラビオは抱負を語った。
グループリーグを首位で終える上で肝となるポルトガル戦では、トランジションを司り、ボールキープ、ときに強烈なミドル弾で威嚇するなど、ゲームにインパクトを与え、デシャン監督は「彼はひとつハードルを超えた」と絶賛。
「以前とはまったく違う。今の彼は、どんな状況にも適応できる。テクニックは確かだし、前にも攻め上がれる。ゲームを読むインテリジェンスもあるし、ポジショニングについても迷いがなくなった。とてもコンプリートした選手になった。今いる場所(ユベントス)で活躍できているのは偶然ではない。過去の出来事はあったが、彼の存在は決して忘れていなかった」。
デシャン監督も、ラビオのアグレッシブさやデュエルでの強さを評価していたが、体つきもPSGにいた頃よりたくましくなり、プレーに迫力が増していた。PSG時代は「エレガントな選手」というのが代名詞だったが、今回見せたのは、彼が「憧れの選手」に名を挙げるスティーブン・ジェラードに近づいたようなパフォーマンスだった。
タイプは違うが、バックラインと攻撃の中継役をエネルギッシュに担っていたブレーズ・マテュイディの後継者として、デシャンはラビオを構想に入れているようだ(今回の背番号も、マテュイディがつけていた14番だった)。
それから、「能力は群を抜いているのに気持ちが弱い」と指摘されて、2018年のW杯時はメンバー候補に挙がらなかったキングレー・コマンも、バイエルン・ミュンヘンで鍛えられて見違えるように骨太になった。昨シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)決勝戦でゴールを決めたのも記憶に新しい。
2018年の3月以来2年半ぶりの出場となったマルシャルも、以前は波が大きかったが、マンチェスター・ユナイテッドでの活躍で自信が増し、より頼り甲斐が出てきた。途中出場からゴールを決めることも多い彼は、トップでプレーできるフォワードが少ないフランス代表にとっては貴重だ。
W杯優勝メンバーに、新たな戦力が加わっての今回の戦いぶりは、「明るい兆しが見えた」と批評家たちからも高評価だった。ドイツ、ポルトガル、ハンガリーと同組という、いわゆる「死のグループ」で戦う来年のユーロに向け、ポジティブな体制が整った。
(文:小川由紀子【フランス】)
【了】