試行錯誤の新指揮官
【写真:Getty Images】
もし、全盛期のルート・ファン・ニステルローイがいたら――。
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11月18日に行われたネーションズリーグのグループ1、リーグA。オランダ代表はアウェイでポーランド代表と対戦した。フランク・デ・ブール監督が率いるオランイェ(オランダ代表の愛称)は、開始早々の5分に失点。ロベルト・レバンドフスキとのパス交換からカミル・ヨズヴィアクに左サイドを単独で突破され、そのままシュートを決められてしまう。積極的に高い位置を取る右SBハンス・ハテブールの裏を突かれた格好となった。
このポーランド戦はデ・ブール監督にとって、どちらかと言うと試行錯誤の場だったのかもしれない。もちろんネーションズリーグは公式戦だが、エキシビションの色合いも強い大会だ。試合前の時点で、グループAはイタリア代表の決勝ラウンド進出が濃厚だった。であれば、ロナルド・クーマン前監督から跡を継いでまだ5試合目のデ・ブール監督が、部分的にテストをしたとしても不思議ではない。
3日前に行われたボスニア・ヘルツェゴビナ戦から、右ウイングは10番タイプのステフェン・ベルハイスからドリブラーのカルヴィン・ステングスに、右SBはデンゼル・ドゥムフリースからハテブールに先発が変更された。ちなみに11日の行われたテストマッチ、スペイン戦ではベルハイスとハテブールが先発している。
その他のポジションでも、メンフィス・デパイ、ジョルジニオ・ワイナルドゥム、フレンキー・デ・ヨングら主軸を除けば、デ・ブール監督は11月の3試合で様々な選手を試した。デパイの0トップを軸とする戦術をクーマン前監督から引き継ぎつつ、ディヴィ・クラーセンを再招集するなど、独自の色を加えようとしているようだ。
オランダらしいサイドアタック
ポーランド戦では実質的に2バックと言える極端な戦術を採用。両SBが高い位置を取り、トップのデパイが流動的に動く。そしてワイナルドゥムやクラーセンがペナルティエリア内に飛び出していく。ワイナルドゥムはボックス内で得点を狙うだけでなく、ポスト役もこなした。そして両ウイングのドニエル・マレンとステングスが仕掛ける。
SBやウイングを活かすサイドアタックはいかにもオランダらしいが、攻撃がパターン化しやすく、相手からすると読みやすいところもあるだろう。実際、ポーランドにSBの裏を突かれ、何度かカウンターを食らった。敵陣で極端に人数を掛けて攻め込んだ挙句、カウンターを仕掛けられると、敵に与えるスペースの広さから、どうしても自陣のゴール前まで攻め込まれやすくなってしまう。
そこでデ・ブール監督は57分に右SBをハテブールからドゥムフリースに変更。PSVアイントホーフェン所属のSBは高い位置を取ることはなく後ろに残り、守備のバランスを改善した。そして70分にベルハイスら3選手を投入すると、76分にワイナルドゥムがPKを獲得。デパイが決めて同点に追い付く。
右は10番タイプのベルハイスとドゥムフリースがコンビを組んだ方がチーム全体のバランスがいいのかもしれない。トップが流動的なデパイなので、ベルハイスがいた方が前線でボールが落ち着くところがある。
一躍EUROの優勝候補に
そして84分にセットプレーから逆転。ベルハイスが蹴ったCKを、キャプテンマークを巻いたワイナルドゥムがヘディングで叩き込む。試合後のデ・ブール監督のコメントによれば、失点した後もオランダ代表は「自信を持ち続け、ゴールする能力を信じ続けた」という。レバンドフスキが前半だけで退いたとは言え、ポーランドに2-1で逆転勝ちし、11月の3試合を2勝1分の無傷で終えることになった。
特にドイツ代表を6-0で粉砕したスペイン代表と引き分けたことは、「自信」になったのではないか。過去にインテルやクリスタルパレスといったオランダ国外のクラブで結果を出せなかったデ・ブール監督にとっては、なおさらだろう。
2016年のEUROと18年のロシアワールドカップでは本大会出場権を逃したオランダ代表だが、ステングス、マレン、オーウェン・ワインダルといった20歳前後の若手も台頭し始め、各ポジションに満遍なく人材が揃い、来年のEUROに向けて順調に力を取り戻している。強いて言えばセンターFWに人材が見当たらない点が穴か。決してデパイの0トップが機能していないわけではないが、もし、このチームに全盛期のパトリック・クライファートやファン・ニステルローイが加わったら――。オランダが一躍EUROの優勝候補に躍り出るのは間違いない。
(文:本田千尋)
【了】