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Jリーグ 4年前

日本代表にJリーグ組の居場所がない。進む10代の海外移籍、国内組に足りないのは…【週刊J批評】

日本代表は現地時間17日、オーストリア・グラーツで行われる国際親善試合でメキシコ代表と対戦する。今回のメキシコ代表は国内組が過半数を占めているのに対し、現在の日本代表は主力のほとんどが欧州組。ベルギーリーグ移籍が決まった斉藤光毅をはじめ、A代表を経験せずに海を渡る選手も多い。U-19日本代表を率いる影山雅永監督は、国内で選手を育てる環境を作るための議論が必要だという。(取材・文:河治良幸)

シリーズ:週刊J批評 text by 河治良幸 photo by Getty Images

欧州組と国内組の差

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【写真:Getty Images】

 森保一監督が率いる日本代表は先月に引き続き欧州組のみで活動を行っている。パナマに1-0で勝利し、明日の早朝には強豪のメキシコと対戦する予定だ。周知の通り森保監督は本来、Jリーグに所属する国内組からも数人ピックアップしており、新型コロナ禍でやむなく招集対象から外したことを繰り返し強調していた。

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 しかし、主力という基準に目を向ければ、昨年のロシアワールドカップアジア2次予選に出ていた橋本拳人もFC東京からロシアのロストフに移籍して欧州組となり、フラットな条件で考えても、来年3月に再開されるアジア予選のスタメンや途中投入される3人が全て欧州組だとしてもなんら不思議はないだろう。

 Jリーグにも依然としていい選手は多くいるが、国際経験という基準において欧州組が優位にあるのは間違いない。実際に約1年ぶりとなった10月のアフリカ勢との2試合、と13日のパナマ戦で負けなしという結果も含めて、対応力が付いているのは欧州で揉まれている選手で構成しているからという声は選手からも聞かれる。

 1993年の開幕から30年近いJリーグの歴史を考えると、欧州組だけで代表チームが組めるというのは1つの成果である。ここ最近はA代表を経験しないままJリーグから欧州に渡り、そこでアピールしてA代表に名を連ねる選手も増えてきていることは、日本サッカーとしての成長の証ではある。

 Jリーグにいながらにしてサッカーの基本スキルやグループの戦術眼だけでなく、国際的な対応力もある程度身に付けられた上で、さらなるレベルアップを求めて欧州、海外に渡る。現在の移籍サイクルを考えると、そういうサイクルも大事なことではないかとも感じている。

 今回のメキシコ代表は招集された26人のうち16人がメキシコリーグでプレーする国内組、7人が欧州組、中東や北米のMLSに在籍している選手が3人という構成で、韓国戦のスタメンも6人は国内組だった。それでいてソン・フンミンやファン・ウィジョを擁する韓国にハイプレスをかけて優勢に試合を進め、先制されたものの後半に畳み掛けるように3点を奪うという戦いを見せた。終盤に1点返されたものの、3倍以上のシュート数で押し切る戦いは見事だった。

 そのメキシコもワールドカップで2回のベスト8を経験しているものの、過去7大会でベスト16に終わっていることを考えると、国際的な戦いで課題を抱えているのは間違いない。しかし、森保一監督は「どこのカテゴリーの国際大会でもメキシコ代表のチームを見かける」と語るように、国内組が主体の代表チームでも国際基準で戦えることを示す1つの成果だろう。

同世代の海外移籍が与える刺激

 ちょうど“01ジャパン”U-19日本代表候補の合宿が行われており、筆者はA代表のオンライン取材と並行してU-19を取材している。その中で、メンバーの一人である斉藤光毅がベルギー2部のロンメルに移籍するというニュースがあり、仲間の選手たちにも話を聞いている。

 ジェフユナイテッド市原・千葉の櫻川ソロモンは春先スペインのセルタに短期留学して「激しいバトルであったりとか球際、プレーのテンポの早さが日本に比べても大きな差があった」と振り返る。いつかプレミアリーグでプレーしたいという目標を持つ櫻川は斉藤の欧州移籍について「ずっと一緒にやっている選手が海外に行くことは刺激で、嬉しい反面、悔しい気持ちの方が大きい。まずはJリーグの自チームで活躍して追い越したい」と語る。

 J1の清水エスパルスで高卒ルーキーながらリーグ戦だけで23試合に出ている鈴木唯人も「自分が高3の時に光毅は先に横浜FCで出ていたので、そういった中でいろんな刺激をもらいましたし、自分も負けていられないなと思うこともできたので、それで成長できた」と話す。同じ神奈川出身の仲間の活躍がこれまでも刺激になっていたことを踏まえて、今回の新たなチャレンジについても「負けていられないので、自分はまずエスパルスで活躍して負けないようにしていきたい」と意気込みを語っている。

「世界に行って終わりじゃない」

 U-19日本代表の影山雅永監督はすでに欧州に渡っている小久保玲央ブライアン(ベンフィカB)や若槻大和(シオン)も含めて「いよいよU-19でこんなことが始まったんだな」と笑う。斉藤の挑戦については「世界に行って終わりじゃなくて、そこで活躍しないとやっぱりその移籍が良かったんだ、日本全体がそういう選手を生み出したと言えないと思います。招集する難しさの一方で、彼らの活躍を期待したい」とエールを贈った。その影山監督はメキシコの国内組の強さとJリーグの課題についてこう語る。

「メキシコは間違いなくレベルが高いですよ。選手としてもやっぱりサラリーもいいですからね。(北米の)アメリカ人も含めて、中南米のいい選手が入ってくるので、間違いなくレベルは高いと思います。ヨーロッパ、メキシコと比べた時に、リーグ自体も指導者や選手をどんどんレベルを上げる、そういうJリーグになるんだというのを表明してくれています。だけど、相当違うのは島国で、離れていて、海外との接点がなかなか難しいですよね、競争力も含めて」

 そのメキシコも外国人枠の問題や若手のプレー機会ということに関しては長年、模索しながら現在に至っており、全て理想的なリーグになっている訳ではない。しかし、個人として求められるプレーやデュエル、試合における駆け引き、中南米から来る外国人選手たちの質など、もともとの土壌の違いこそあれ、国際基準でJリーグが参考にするべき要素は多い。

「外国人枠を撤廃したらいいじゃないかという人もいるし、でもそうすると肝心の日本人プレーヤーが少なくなってしまって、それは本末転倒じゃないかという議論になる。これは最適なバランスを見つけたり、海外に行けない分、Jリーグ自体を目標にしていろんな刺激を受けられるように国内で日本人選手のレベルをどう上げて行くかという議論をしなきゃいけないですよね」

国際基準のインフラ

「僕らの世界との接点は残念ながら代表活動とACL(AFCチャンピオンズリーグ)。でもACLってアジアでしょ。そこから代表としてクラブワールドカップに出られる保証もないわけですよ。そう考えると森山佳郎(U-16日本代表監督)と一緒にU-17とかU-20とか、それに関わるU-18、U-15の代表活動で、どんどん世界を知ってもらうのは大事なことだなと改めて思ってます」

 今回の移籍を決めた斉藤も含めて、若い選手にとってもJリーグという環境がすごく大事である。しかし、JリーグにいながらA代表やワールドカップで活躍できる選手が育つ環境としては、まだまだ伸ばしていくべきところは多いとも感じる。

 欧州、海外に挑戦することで得られる経験を国内で全てまかなうことはおそらく不可能だ。欧州でも例えばベルギーのように、それなりに国内リーグが充実していてもA代表の主力は国外組が占めている国もある。結果として日本代表の主力の大部分を欧州組が占めるという状況が続くのも否定的な話ではない。

 インフラを含めた環境をより国際基準に上げていくことで、Jリーグに在籍しながらA代表に選ばれる可能性を上がる。そして、良い意味で選手たちがJリーグでプレーし続けるか、海外でプレーするか選択を迷うような、あるいは一度海外で成功した選手がピーク時に帰ってきたくなるステージとなる。代表と並行してJリーグの成長というものも見守っていきたい。

(取材・文:河治良幸)

【了】

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