目次
個でも組織でも高い完成度
初のEURO制覇なるか――。
【今シーズンの欧州サッカーはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
11月16日に行われたUEFAネーションズリーグのリーグA、グループ2第5節。ベルギー代表がリベンジを果たした。イングランド代表を前半の内に圧倒。11分にロメル・ルカクのポストプレーからユーリ・ティーレマンスがミドルシュートを叩き込むと、24分にはドリース・メルテンスが直接フリーキックを突き刺す。
相手がラヒム・スターリングやハリー・マグワイアを欠いていたとは言え、10月にアウェイで対戦した時は1-2で敗れた“スリー・ライオンズ”(イングランド代表の愛称)を相手に、前半の30分間で勝負を決めた。
後半に入るとイングランドは、交代で投入されたブカヨ・サカとジャック・グリーリッシュで左サイドからチャンスを作るなど、前半に比べれば攻撃に変化が見られたが、“レッド・デビルズ”(ベルギー代表の愛称)の守備陣を崩すまでには至らず。エースFWのハリー・ケインは沈黙を保ったまま、ベルギーが2-0で快勝。決勝ラウンド進出に王手をかけた。
黄金世代にとって、総決算の時が近づいている――。このイングランド戦からは、そんな印象を受けた。ベルギーは、ルカクやケビン・デ・ブライネの個の力が際立っていたわけではなく、攻守に洗練されたチーム戦術でイングランドを圧倒した。
新型コロナウイルスの感染でエデン・アザールを欠いた“レッド・デビルズ”は、一見するとスケールダウンしたようにも見受けられたが、総合的にはドリブラーのエースを欠いたことで、かえってチームのバランスが整ったようだ。
もちろんデ・ブライネの個人能力が衰えたというわけではなく、守備ブロックの距離感、プレスの連動性、ポスト役のルカクの活かし方など、“レッド・デビルズ”はチーム全体としてイメージの共有ができていた。個の力を全面に出すのではなく、あくまでチーム戦術の延長線上にデ・ブライネやルカクが乗っかっている。
もちろんアザール兄がコンディションを取り戻して復帰すれば、この線上で力を発揮してくれるに違いない。2016年にロベルト・マルティネス監督が就任して4年以上の歳月が流れたが、ベルギー代表は、成熟の時を迎えつつあるようだ。
初の国際タイトル獲得なるか
3大会ぶりに出場を果たした2014年のブラジルワールドカップでベスト8、4大会ぶりとなった2016年のEUROでベスト8、そして2018年のロシアワールドカップで3位と、黄金世代の台頭以来、国際大会に戻って順調に階段を登ってきた“レッド・デビルズ”。現在のチームが初の国際タイトルに最も近いと言っても過言ではないだろう。
年齢的にも、エデンとトルガンのアザール兄弟、ルカク、デ・ブライネや右サイドのトーマス・ムニエ、GKティボ・クルトワらは20代後半と脂の乗った時期。また、センターバックのヤン・フェルトンゲンやトビー・アルデルヴァイレルト、トーマス・フェルマーレン、中盤ではアクセル・ヴィツェルやメルテンスが30歳を過ぎていることを考えると、来年のEUROがタイトル獲得のラストチャンスと言えなくもない。
成熟の一方で高齢化も進むベルギー代表は、20歳前後の若手が育っているとは言い難く、黄金世代が抜けた後で極度の不振に陥る可能性がある。
限られた大国だけが優勝してきたワールドカップと違って、一時のスペイン代表を除けば毎回のように優勝国が入れ替わり、中堅国にもチャンスがあるのがEURO。
現時点で新型コロナウイルスの影響がどれだけあるかは不透明だが、このまま12ヶ国での分散開催となれば、かつてないほど波乱が起きる予感も漂う。デンマーク、フィンランド、ロシアと同組となったことを考えれば、グループリーグで消耗することはないだろう。
来年7月にロンドンで“レッドデビルズ”が戴冠しても、何ら不思議ではない。
(文:本田千尋)
【了】