混沌とする守護神争い
パナマ代表およびメキシコ代表との国際親善試合に臨む日本代表のメンバーは、わずかな変更を別とすれば、10月に行われたカメルーン代表、コートジボワール代表との冴えない2試合に参加した選手たちとほぼ同じ顔ぶれとなった。新型コロナウイルスの影響による様々な移動の制約により、Jリーグの選手たちはまだ選択肢に含まれていない。
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長友佑都が負傷から復帰したため、安西幸輝には居場所がないということになった。ビザの問題により先月はメンバー入りできなかった橋本拳人と浅野拓磨も加わっている。
ブレーメンは大迫勇也を送り出そうとはしなかったようで、前線のポジションを浅野と争う選手は鈴木武蔵のみとなった。その鈴木は10月のユトレヒトでの試合以来ベールスホットでゴールを重ねて自信を強めている様子だ。
だが今回の試合に向けて最も興味深いのは、ピッチ上の最後方の状況である。
川島永嗣はまだメンバーに名を連ねているが、代表チームのナンバーワンに上り詰めてからすでに10年が経過した37歳は、次回のワールドカップに向けた本格的なGK候補の選択肢というよりは練習場で存在感を示すために呼ばれているのは明白だ。
昨年のAFCアジアカップ2019本大会に進んだチームのファーストチョイスとなっていたのは31歳の権田修一であり、現在でも森保監督のレギュラー選びの有力候補であるように見えるが、その権田も今季のポルティモネンセではまだ出場がない。早いうちに状況が変わらないようであれば立場が危うくなってくるのは間違いないだろう。
一方でシュミット・ダニエルは、日本代表での公式戦出場はここまで1試合のみ。しかもアジアカップのグループリーグ最終戦、すでに両チームともに次のラウンドへの進出を決めた状況でのウズベキスタンとの消化試合だった。今季のシント=トロイデンでもレギュラーポジション獲得に苦戦している状況は変わらない。代表チームでは比較的新参組であるとはいえ、彼もすでに28歳。今すぐ本格的に先発争いに挑戦できないようであれば、その時はもう永遠に来ないかもしれない。
重要なSBやWBの存在
ゴール前の状況は依然として不確定だが、守護神の前に誰が並ぶのかに関しても同じことが言える。より正確に言えば、どのようなフォーメーションで選手たちが並べられるかだ。
カメルーン戦では、森保監督は後半にシステムを3バックに変更。酒井宏樹がセンターバックの一角に押し込まれ、ややいびつな構成ではあったとはいえ、今後公式戦を戦う時がまた来たとすれば日本代表がどのように戦うのかを垣間見ることができた。
吉田麻也と冨安健洋はファーストチョイスのCBコンビとして不動であり、両サイドの一番手もそれぞれ酒井と長友(コンディションが許せば)で変わらない。接戦の試合においては、この後者の2人が日本の攻撃面の脅威の大きな担い手となることがしばしばある。
現代サッカーでは、サイドバックやウイングバックが適切に使われれば相手の堅固な守備陣をこじ開ける上で重要な役割を果たすケースが増えてきている。もちろんそれは日本代表が伝統的に苦手としている部分だ。
高機能なエンジンを搭載した攻撃志向の両サイドを用いることで、チームの攻撃には新たな幅が加えられる。ボール扱いを得意とする中盤の選手たちにとっては創造性を発揮できる選択肢が増え、酒井や長友のような選手たちが深いスタート位置から飛び込んでいけるようなスペースを空けることによって相手の陣形を広げられる機会がより多くなる。
ピッチ上のこのエリアで積極的に仕掛けることが大きな結果をもたらす可能性があるという事実は、近年のリバプールでもトレント・アレクサンダー=アーノルドとアンドリュー・ロバートソンによって示されている。原口元気や伊東純也なども意欲的な走りを見せる選手たちであり、森保監督にとってはWBの選択のオプションとなる。
3バックを試す絶好の機会
もちろん、両サイドの選手たちが外から仕掛けることを許せば、センターバックによるカバーの必要性もその分高まる。この状況は、植田直通がレギュラーポジションに割って入るチャンスを高めることになるかもしれない。
セルクル・ブルージュ所属の植田は2015年のアジアカップ・オーストラリア大会以来サムライブルーに呼ばれていたが、代表デビューは2017年末のEAFF E-1サッカー選手権まで待たねばならなかった。その後もまだ12試合にしか出場していないが、彼のフィジカルや空中戦の強さは、よりテクニカルな吉田や冨安のプレーを有効に補完することができるかもしれない。パナマやメキシコのような骨太なチームが相手であればなおさらだ。
森保監督にはサンフレッチェ広島で3バックを用いて成功を収めた実績があり、これまで代表チームでのフォーメーションの選択肢に採り入れていなかったのはむしろ少々意外でもあった。今回の2つの親善試合は、元広島の指揮官がこの形をテストし、選手たちが新たな武器を手に入れられるかどうかを見極めるのに絶好の機会となるかもしれない。
(文:ショーン・キャロル)
【了】