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スタートは最悪
プレミアリーグではアーセナルがアストン・ビラに0-3、ラ・リーガではレアル・マドリードがバレンシアに1-4と大敗を喫した。過密日程を理由にすべてを片づけることはできないが、やはりチャンピオンズリーグ(CL)やヨーロッパリーグ(EL)に出場しているチームは、例年よりも崩れやすくなっている。
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ここまでセリエAを無敗で走ってきたミランも、現地時間8日に行われたエラス・ヴェローナ戦では過密日程による影響を受けたと言わざるを得ない。試合後ズラタン・イブラヒモビッチが「木曜日にELを戦ったばかりだから、今日は難しいゲームだった」と話す通り、かなりの苦戦を強いられた。
0-3の完敗を喫したリール戦では最後まで攻撃がかみ合わず、素早いカウンターに手を焼いたミランだが、このヴェローナ戦ではハイプレスに悪戦苦闘。後ろにボールを下げればイバン・ユリッチ監督から「行け! 行け!」と大きな声が飛び、それに応じたヴェローナイレブンはどんどん前に出てくる。序盤はそうした波に飲み込まれていた。
そしてミランは6分という早い時間に失点。コーナーキックから最後はアントニン・バラクにシュートを押し込まれた。さらに19分にもセットプレーの流れからマッティア・ザッカーニにゴールを献上。ダビデ・カラブリアに当たった不運な形ではあったが、いきなり2点のビハインドを負う最悪の展開だった。
それでも、ミランは27分にフランク・ケシエがジャンジャコモ・マニャーニのオウンゴールを誘発して1点を返すことができた。そして、ここから試合展開は一方的なものとなる。
とにかくズラタンへボールを
1点を返し勢いのあるミランは、とにかくヴェローナを押し込んだ。戦い方は非常にシンプル。最前線イブラヒモビッチへボールを当て、こぼれ球を2列目の選手が拾ったり、エースが収めたボールを攻撃参加してきたサイドバックが引き取ったりして相手を深い位置へ追いやっていた。
1-2のまま後半に入り、ステファノ・ピオーリ監督はアレクシス・サレマーカーズを下げてアンテ・レビッチを投入している。右にラファエル・レオンを回し、よりパワーで押し込める前線の組み合わせに変更してきたのだ。
とにかくイブラヒモビッチにボールを預ける。そこからサイドにボールが流れれば、シンプルなクロスでイブラヒモビッチやレビッチらのパワーを生かす。ミランの攻め方は徹底していた。これに対しヴェローナはフィールドプレーヤー全員が自陣深くに位置。ゲームの構図はこの時点でほぼ完成された。
ヴェローナはよく耐えた。幾度となく放り込まれるクロスにはDFが身体を投げ出して対応し、枠に飛んできたシュートは今年10月にイタリア代表初招集を果たしたばかりのマルコ・シルヴェストリが確実に弾き出す。ギリギリのところでリードを守っていた。
ミランは矢の如くシュートを浴びせたが、なぜかゴールネットが揺れない。イブラヒモビッチが今季3度目のPK失敗、カラブリアの得点は直前にイブラヒモビッチのハンドがあったとして取り消されるなど、運にも見放された。
しかし、ミランがシュートを浴びせ続け、ヴェローナが耐えるという時間が最後まで続いた中、ついに点が生まれた。主役はやはりイブラヒモビッチ。ブラヒム・ディアスのクロスを最後は頭で押し込んだ。試合はこのままドローで終了している。
この試合を総括することは非常に難しいが、そこまで悲観すべきドローでないというのは確実に言えるだろう。イブラヒモビッチの能力を存分に生かすことができ、攻守の切り替えも素早かったなど、内容は決して悪くなかった。シュート数34本で2点、序盤のセットプレーからの2失点は反省すべきだが、これまでであれば落としていたであろう試合を勝ち点1で終えることができたのは、チームとしての確かな成長と言えるだろう。
ただ、この試合はこれまで以上にイブラヒモビッチの力が大きすぎたという点は否めない。ネガティブなことを言えば、背番号11がいなければ恐らく普通に負けていただろう。
イブラヒモビッチが何らかの理由で不在となった場合、ミランの力が大きく落ちるだろうというのは、シーズン開幕前にも多く聞かれた声だ。このヴェローナ戦はそうした不安が現実となる可能性をより大きく高めた、そんな試合であったとも言える。
(文:小澤祐作)
【了】