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アーセナルに希望の星が続々。リーグ戦出場ゼロ、生え抜きの若手が躍動。全得点に絡む大活躍【EL】

UEFAヨーロッパリーグ(EL)のグループステージ第3節が現地5日に行われ、アーセナルはモルデに4-1で勝利を収めた。逆転での勝ち点3獲得に大きく貢献したのは、今季のプレミアリーグで一度もピッチに立っていない生え抜きの若手MFだった。(文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

慎重な立ち上がりでまさかの失点

ジョー・ウィロック
【写真:Getty Images】

 プレミアリーグのビッグクラブにとって、UEFAヨーロッパリーグ(EL)は出場機会の少ない選手や若手にチャンスを与える場となりつつある。

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 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)よりも対戦相手の格が落ちるというのは、大きな理由の1つだろう。またELは木曜日開催のため、週末に控える次のリーグ戦のことを考えると、なかなかフルメンバーを送り出しづらい事情もある。

 昨季はマンチェスター・ユナイテッドが若手に多くの出場機会を与えながら、準決勝まで進んだ。今季はアーセナルが同様の道を歩もうとしている。すでに成果も出始めているようだ。

 ミケル・アルテタ監督に率いられたチームは、現地5日に行われたELのグループステージ第3節でノルウェー王者モルデと対戦した。前半に先制を許したものの、柔軟な戦いぶりで見事に4-1で逆転勝利を収めている。

 立ち上がりは慎重だった。右からエインズリー・メイトランド=ナイルズ、シュコドラン・ムスタフィ、ダビド・ルイス、グラニト・ジャカ、セアド・コラシナツを並べた5バック気味の布陣で試合に入った。

 ダニ・セバージョスとジョー・ウィロックが中盤センターでコンビを組み、右サイドにニコラ・ぺぺ、左サイドにウィリアン、1トップにエディー・エンケティアを起用。ピエール=エメリク・オーバメヤンやトーマス・パーティはベンチスタートだった。

 ところが、やや守備的な入りをしたにもかかわらず、アーセナルはモルデに先制されてしまう。22分、GKベルント・レノのロングキックがカットされたところからカウンターを食らい、マルティン・エリングセンにペナルティエリア外から見事なコントロールショットを決められてしまった。

 ただ、これでアーセナルに慌てる様子は一切なかった。アルテタ監督はシステム変更や選手の配置をいじることで打開策を探っていく。試合開始時は左センターバックのように振舞っていたジャカを中盤に上げ、ウィロックを2列目にスライド。さらにはウィリアンとぺぺのサイドも入れ替えた。

脇役ウィロックが大爆発

 時間が経つにつれて尻上がりにパフォーマンスを上げ、最終的には4ゴールを奪っての逆転勝利。その過程で最も輝いたのは、ウィロックだった。

 今季のプレミアリーグで一度も出番を得られていない21歳は、先発出場のチャンスを生かして大きなアピールに成功した。自らチームの4点目となるゴールを奪った他、全ての得点シーンに何らかの形で関わっていた。

 前半終了間際の同点弾はオウンゴールと記録されたが、右サイドに出たエンケティアの折り返しに詰めて相手ディフェンスに無理な対応を強いたのはウィロックだった。

 62分の2点目の場面もウィロックのプレーが相手のオウンゴールを誘った。ペナルティエリア手前でボールを受けた21歳のMFは、ジャカとのワンツーでゴール前に侵入。混戦を縫うように抜け出して鋭く折り返すと、ボールは相手DFに当たってゴールに吸い込まれた。

 69分には3点目の起点になった。センターサークル内でボールを収めてキープしたウィロックは、左に開いたエンケティアへ展開。途中出場だったブカヨ・サカがオーバーラップをかけ、最後はぺぺがゴールネットを揺らした。

 ウィロックはパスをさばいた後、自らもゴール前まで上がり、サカが左サイドでボールを受けた時にはマークを引き連れてニアサイドに走り込んでいた。この動きによって右サイドから絞ってきていたぺぺがフリーの状態でシュートを打つことができた。

 そして、88分にウィロック自らもゴールを決めた。相手のクリアボールをキーラン・ティアニーがカットし、モハメド・エルネニー、ぺぺとつなぐ。前を向いたコートジボワール代表FWがすかさずペナルティエリア内へ縦パスを入れると、DFを背負いながら受けたウィロックは素早く右足を振り抜いた。

 試合後、アルテタ監督はフラッシュインタビューで「彼はもっとゴールを決められたはずだよ!」と、全得点に絡んだウィロックを称賛した。「ゴールチャンスにはことごとく顔を出していたし、いくつかのゴールを生み出した。素晴らしいパフォーマンスだった」と指揮官が語るように、ゴールにはならなかったチャンスの場面に何度も絡んでいた。

 ダビド・ルイスは「あいつはもっとうまくやらなきゃダメだろ! 僕がアシストしてやったチャンスを外しているんだから!」と冗談めかして笑ったが、確かに75分にそんな場面があった。先輩DFのロングボール1本で相手ディフェンスラインの背後を取ったウィロックは、シュートを1対1になったGKに当ててしまったのだ。

リーグ戦でのチャンスにつながるか?

ジョー・ウィロック
【写真:Getty Images】

 前半終了間際にはオフサイドで認められなかったものの決定機があった。後半はほとんど2トップの一角のように振る舞い、もっと挙げれば2つ、3つはゴールになっていてもおかしくないチャンスがあった。スコアボードに記録された2つのオウンゴールも実質的にウィロックのものと考えれば、ハットトリック以上の結果が残っていてもおかしくないパフォーマンスだったのである。

 いくら相手が格下とはいえ、これだけの活躍を見せられる選手にプレミアリーグでは1分も出番が与えられていない。アーセナルの中盤にはトーマスやジャカ、セバージョス、エルネニーなど実力者がひしめいていて、出場機会が限定的になるのも無理もないか。

 だが、アルテタ監督は「彼がやってきたことを一貫して続ければ、(リーグ戦で)チャンスはやってくる」とウィロックへの信頼を強調している。

 ダビド・ルイスも「ジョーは素晴らしいヤツで、僕はいつも彼のことを後ろから助けるつもりだ」と、21歳のポテンシャルに期待を寄せている。

「これは冗談ではなく、今日の彼はもっとうまくできたはずだ。なぜなら彼にはトップレベルに到達するだけの才能があり、彼自身もそれを理解しているからね。彼は謙虚だから一緒にプレーするのは楽しいよ。謙虚であれば物事を学ぶことができ、それによってどんどんうまくなって、課題を改善できる。謙虚な彼には素晴らしい現在と未来があるんだ」

 では、ウィロック自身はどう考えているのだろうか。大活躍の試合後、次のように語っている。

「僕はゲームのたびにしっかりやっているだけだよ。それは僕の旅路の一部であり、僕はまだほんの子どもさ。とにかく学び続けなくてはならない。ハードワークを続け、プレミアリーグでチャンスをもらった時に、今日と同じことができればいいね」

 今のアーセナルにとってELはチーム内競争と若手の成長を喚起する絶好の場となっている。ウィロックはELで3試合に出場して2得点1アシストとチームの3連勝に貢献する目覚ましい結果を残している。この結果がリーグ戦でのチャンスにつながれば、他の選手たちのモチベーションにも好影響をもたらすはずだ。

(文:舩木渉)

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感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
同じくアーセナル、特にアルセーヌ・ベンゲル時代のアーセナルは、一部から「うぶすぎる」と揶揄されながら、内容と結果を執拗に追い求めてきた。
そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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