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ユナイテッドらしい敗戦
昨季チャンピオンズリーグ(CL)で共にベスト4入りを果たしたパリ・サンジェルマン(PSG)とRBライプツィヒに勝利したものの、グループリーグ最下位のイスタンブール・バシャクシェヒルには敗戦。ある意味、マンチェスター・ユナイテッドらしいと言えばらしい結果だ。
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前回のRBライプツィヒ戦は攻守においてほとんど隙がなかった。珍しくオーレ・グンナー・スールシャール監督の采配も光っており、敵将ユリアン・ナーゲルスマンを大いに苦しめている。結果的には5-0と、誰もが予想しないスコアで勝利を収めることができた。
しかし、このバシャクシェヒル戦にRBライプツィヒ戦のような勢いや怖さはまったくなかった。結局最後までギアが上がらないまま試合終了のホイッスルを迎えるという、不甲斐ないパフォーマンス。バシャクシェヒルの出来がかなり良かったとは言え、この敗戦は恥ずべきである。
「我々にとって大きな後退だ。フットボールほど早くすべてが過去のものになってしまう世界は他にない。CLでは3ポイントを取ることがどれほど難しいか、今日のゲームで明らかになったはずだ。個々の能力が高く、良く機能したチームを相手に戦い、我々は不十分だった。これがその結果だよ」。
「このような負け方をした後では、すぐにポジティブに切り替えるのは難しいが、我々には土曜の試合で再起できるだけの優れた選手が揃っている。2試合続けてお腹にパンチを喰らった。私が、そして恐らく選手たちも知っている立ち直る最善の方法はエバートン戦できっちり仕切り直すことだ」。
バシャクシェヒル戦後にスールシャール監督がこう話した通り、次のエバートン戦で「きっちり仕切り直すこと」ができなければ、公式戦連敗中のユナイテッドはこのままズルズルと沼にハマっていく可能性がある。土曜のゲームはまさに「超重要」だ。
信じられない守備の甘さ
さて、バシャクシェヒル戦のユナイテッドは上記した通り最初から最後までギアが上がらなかった。とくに、前半45分間の出来は「酷かった」と言える。
ファン・マタやアクセル・トゥアンゼベ、ドニー・ファン・デ・ベークなど普段はベンチスタートが多い選手を何名か起用し4-2-3-1システムを採用したユナイテッドは立ち上がりからボールを保持し、敵陣に侵入した。両サイドバックも高い位置を取っており、必然的に最終ラインも高くなっていた。
そんな中、13分に失点。ロングフィードに反応したデンバ・バを誰もチェックできておらず、ハーフウェーラインから独走を許してゴールネットを揺らされた。注意不足、集中力の欠如…。スールシャール監督の言葉を借りれば「このレベルであのようなゴールがあってはならない」。
信じられない形で失点したユナイテッドはその後も支配率を高めバシャクシェヒル陣内へと侵入したが、相変わらずディフェンスライン背後のケアは疎か。20分にはGKから裏のスペースに一本のロングボールを蹴られ、デンバ・バに抜け出されたところをたまらずトゥアンゼベがファウル。デンバ・バはかつてプレミアリーグで活躍していた実力のあるFWとは言え、あまりに一人にやられすぎていた。
だが、そのようなことがピッチ内で起こっていても、修正はされなかった。そして前半終了間際の40分、またもカウンターから失点を喫する。ブルーノ・フェルナンデスのパスを受けたマタが自陣でボールを奪われると、深い位置までドリブルで侵入され、最後は右サイドのエディン・ヴィスカに得点を決められた。
この時もユナイテッドは全体がかなりハイライン。ボールを奪われた瞬間、カウンターに対応できるのはトゥアンゼベ、そしてハリー・マグワイアの二人のみ。最後は右サイドにボールを展開されたことで失点したが、左サイドのルーク・ショーはまったく戻り切れていなかった。
ミスは誰にでも、そしてどのチームにも起こる。その中で重要なのは、ミスをどれだけ減らすか、あるいは同じミスをどれだけ繰り返さないかだ。
そういった意味で、バシャクシェヒル戦のユナイテッドはあまりにお粗末だったと言える。過ちを繰り返したことで、結果的に2点を失ったのだから。スールシャール監督はもちろんのこと、チーム全体として深く反省すべきだ。
結局弱点は変わらない
また、この日のユナイテッドは攻撃にも多くの問題を抱えていた。
4-2-3-1で全体の意識が前に向いているユナイテッドに対し、バシャクシェヒルは4-1-4-1で対応。センターバック二枚にはある程度ボールを持たせるが、その他のポジションについてはほぼマンマークで動きを制御していた。
バシャクシェヒルはそこまで前から来るわけではない。ユナイテッドからすると、敵陣へ入ることはそう難しくなかった。しかし、やはりゴール前は非常にコンパクトな状態を保っており、利用できるスペースがない。縦パスを当てても、マンマークにつく選手に背後からガツンとこられ自由を奪われていた。
ユナイテッドは43分にショーのクロスをアントニー・マルシャルが頭で合わせて1点を返したものの、その他の時間帯はボールを動かしながら崩しの糸口を探るという状態が続いていた。当然、そのような形ではバシャクシェヒルの守備陣は綻びを生まない。ユナイテッドの攻撃はエンストしていた。
途中からポール・ポグバやエディンソン・カバーニを入れるなど流れの変化を狙ったが、とくに前者のパフォーマンスが悪く不発。同じことの繰り返しだった。
結局ユナイテッドは1点を奪うに留まった。支配率は68%を記録したものの、シュート数は9本対10本と大差ない。枠内シュートに関しては、バシャクシェヒルの方が多かった。どちらが効率的に攻めていたかは、データからも明らかだろう。
前節、ユナイテッドに0-5と敗れたRBライプツィヒのFWユスフ・ポウルセンは試合後に「自分たちのハングリーさが利用された」と話した。つまり、リードを奪われたRBライプツィヒは点を奪おうと前からプレスにいき、全体の攻撃意識も強くしていたが、反対にスペースをうまく突かれてしまい、多くの失点を招いたということだ。
ボールを持たれた状態、あるいは積極的に前へ出てくる相手に対してユナイテッドは強い。ポジティブトランジションが働けば、よりスペースを利用できる確率が高く、快速自慢の選手が多いユナイテッドは得意のカウンターに持ち込むことができるからだ。
一方で、このバシャクシェヒル戦のように引かれた状態でボールを持つとクオリティーが格段に落ちる。これまでもそうだったが、その弱さは未だに変わっていない。1-2の敗戦は妥当な結果だったと言うべきか。
(文:小澤祐作)
【了】