ライプツィヒが狙ったスペース
ライプツィヒにとっては最悪の立ち上がりだった。ミスから6分に先制され、その10分後にはPKを献上している。
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ダヨ・ウパメカノがGKに戻そうとしたところをモイーズ・キーンがインターセプト。スルーパスを受けたアンヘル・ディ・マリアがワンタッチでGKペテル・グラーチの股を抜いてゴールに流し込んだ。15分にはモイーズ・キーンのシュートがウパメカノの腕に当たり、PSGがPKを獲得している。
「想像しうる最悪のスタートを切った後で、あの(PSGの)ような敵を相手にするのは難しい」とユリアン・ナーゲルスマン監督が試合後に述べた通り、PSGに流れが傾くかに思われた。
先制された直後にライプツィヒはチャンスを作ったが、アマドゥ・ハイダラとアンヘリーニョのシュートは防がれた。このまま嫌な流れになりそうなところだったが、GKペテル・グラーチがアンヘル・ディ・マリアのPKをストップ。ここからライプツィヒの反抗が始まる。
狙い通りのゴールだったようだ。ナーゲルスマンは42分の同点ゴールを次のように振り返っている。
「パリは多くの選手がボックス内にいたので、どこかに(必ず)スペースがあった」
左ウイングバックのアンヘリーニョがペナルティエリア内でボールを受けると、ペナルティアーク付近ががら空きになった。クリストファー・ヌクンクがフリーでボールを受けて右足を振り抜くと、低い弾道のシュートがゴールネットを揺らした。
サイドを突いて空いた中央を使うというのは、先述した8分のハイダラのシュートにも共通している。PSGの中盤、マルキーニョス、イドリッサ・ゲイェ、アンデル・エレーラの3人でライプツィヒの攻撃をカバーするのは難しかった。
良さを取り戻したライプツィヒ
ライプツィヒは後方に問題を抱えている。ノルディ・ムキエレは先発に復帰したものの、膝を手術したルーカス・クロスターマンとコンラッド・ライマーが不在。マルセル・ハルステンベルクもこの試合には間に合わなかった。
序盤の劣勢はそのDFラインが引き起こしたものだった。しかし、「攻撃へ移行するときは選手たちにもっと自信を持ってほしかった」と指揮官が振り返ったように、後半はいつも通りの良さを取り戻している。
概観としてライプツィヒが上回っていたのは運動量と球際の強さという、至極シンプルなものだった。後半にPSGが退場者を出したとはいえ、走行距離で見ればライプツィヒが9km以上も上回った。PSGのハイプレスを剥がしてしまえば、アタッキングサードまでの侵入はそれほど難しくなかった。
前半に点差を広げるチャンスを逃したPSGはリズムを失っていく。対照的にライプツィヒは「1ポイントを探しにパリに行くわけではなかった」と指揮官が言った通り、アグレッシブにPSGに圧力をかけていった。
55分、左サイドでボールを奪ったアンヘリーニョが、ゴール前でフリーになっているエミル・フォルスベリへ浮き球のパスを送る。ボールはフォルスベリの頭の上を通過したが、これをキンペンベが腕で処理してしまった。オン・フィールド・レビューを経てライプツィヒにPKが与えられ、フォルスベリがこれを成功させた。57分にライプツィヒがリードを奪った。
満身創痍のPSG
PSGはライプツィヒ以上に満身創痍の状態だ。直近のナント戦でキリアン・ムバッペがハムストリングの違和感を訴え、ネイマールも先週のイスタンブール・バシャクシェヒル戦で負傷。マウロ・イカルディも欠場が続いている。飛車角を欠いた状態でライプツィヒに対峙しなければいけなかった。
PSGはロックダウンのあとに2つのカップファイナルを戦い、CL決勝のわずか3週間後にリーグ・アン開幕を迎えた。新型コロナウイルスにかかった選手も多い上に週2試合ペースで試合が続き、コンディション調整は難航を極めている。
逆転後も勢いを止めないライプツィヒに対し、PSGは後手を踏み続けた。69分にはルーズボールを競り合ったゲイェが2枚目のイエローカードをもらい退場。試合終了間際にはカウンターを止めようとしたキンペンベがユスフ・ポウルセンの足を後ろから引っかけてしまい、2枚目のイエローカードをもらってピッチから去った。
8月のCLでは先制したPSGがゲームの主導権を握った。この試合もPSGが先制したが、PK失敗とPK献上でその流れを手放してしまった。実力が拮抗する相手に対して戦う粘り強さのようなものは、今のPSGにはなかった。
リーグ・アンでは6連勝でなんとか首位に返り咲いたものの、CLではユナイテッドとライプツィヒに敗れた。逆風が吹くトーマス・トゥヘル監督はPSGを立て直すことができるだろうか。
(文:加藤健一)
【了】