目次
負傷者続出で訪れたデビュー戦
急造のCBコンビは脅かされなかった。現地時間10月30日に行われたプレミアリーグ第7節、リバプール対ウェストハム。フィルジル・ファン・ダイク、ジョエル・マティプだけでなくファビーニョも負傷離脱したことで、ハマーズ相手に最終ラインでジョー・ゴメスと組んだのは、ナサニエル・フィリップスだった。23歳のイングランド人CBにとって、この試合がプレミアリーグのデビュー戦である。
【今シーズンのリバプールはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
11分にゴメスがクロスの処理を誤り、セカンドボールをパブロ・フォルナレスに拾われてそのままシュートを打たれ、ウェストハムに先制を許したリバプール。急造DF陣の不安定さを露呈した。しかし90分トータルで失点はこれっきり。もっとも、以降は立て直した、というよりは、対峙するハマーズが[5-4-1]で自陣に引いたため、ゴメスとフィリップスが脅かされることはほとんどなかった。
34分にウェストハムがカウンターに転じても、フォルナレスの折り返しはフィリップスがきっちり対処。籠城するハマーズをじっくりと攻めたてたリバプールは、40分にモハメド・サラーが巧くPKを獲得。引いた相手を崩すために、必ずしも美しさは必要ではない。このチャンスをエジプト代表FW自らがきっちり決めて、前半のうちに同点に追い付く。
後半に入っても、試合展開の構図は変わらない。センターFWのセバスティアン・ハラーを残してベタ引きの相手に対して、ボールを保持して突破口を見出そうとするリバプール。65分の場面のように、ウェストハムが前に出てくることもあったが、ハラーはフィリップスがきっちり抑え、攻撃らしい攻撃にならず。72分までの10分間でリバプールのポゼッションは87%にも達した。ハマーズの運動量が低下し、終盤の勝負どころでギアを入れたリバプールは、85分に途中出場のジオゴ・ジョッタが決勝点を決める。ゲーム運びの巧さを見せたレッズが、2-1で勝利を収めた。
「MOMに値する」
試合後にユルゲン・クロップ監督は、“デビュー”したフィリップスを手放しで称賛するコメントを残した。
「私は彼(フィリップス)に本当に満足しているし、誰よりも讃えられて然るべきだ。偉大な男で、知性のある男で、フットボーラーとしての自分自身について全てを正確に知っている。今夜、その特性を彼はシンプルにキープし続けたが、それは我々にとってとてつもなく重要だった」
クロップ監督は「マン・オブ・ザ・マッチに値する」とまで褒めちぎっている。もちろん失点の場面でこの23歳のイングランド人CBに非はないし、90分を通して安定したパフォーマンスを見せたのは事実だが、それにしてもフィリップスに対するコメントは過剰ではないだろうか。
そもそもエモーショナルな気質の監督だから、と言ってしまえばそれまでだが、おそらく熱血漢のドイツ人指揮官としては、不測の事態でデビューすることになったフィリップスに、とにかく“自信”を持たせようとしているのだろう。
昨季の1月5日に行われたFAカップのエバートン戦で先発し、90分間フル出場して1-0の勝利に貢献したことがあるとは言え、やはりカップ戦とリーグ戦は別物。さらに、1部相手の試合はおよそ11か月ぶりである。経験値という点でファン・ダイクと比べれば、どうしても雲泥の差がある。
さらにリバプールの今後の日程を確認してみると、3日にUEFAチャンピオンズリーグのアタランタ戦、8日にプレミアリーグのマンチェスター・シティ戦。ファビーニョの復帰は代表ウィーク明けになるという。つまり、これから続く2つのビッグマッチで、フィリップスの先発は続きそうだ。
もちろん火事場の馬鹿力ではないが、経験の浅い選手が緊急出場で高パフォーマンスを発揮することは、珍しいことではない。しかし、アタランタとシティは、ウェストハム以上に、ゴメスとフィリップスのCBコンビを脅かしてくるだろう。
代表ウィークに入る前に、リバプールは正念場を迎えそうだ。
(文:本田千尋)
【了】