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冨安健洋の目の前で2失点
ボローニャはムサ・バローに2得点が生まれ、3得点で勝利を収めた。2度のビハインドを追いながらも逆転に成功し、連敗を3で止めている。
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カリアリは右サイドを狙っていた。ボローニャの左サイドバック、18歳のアーロン・ヒッキーの裏を取り、何度も深い位置まで侵入している。冨安健洋はむやみに飛び込まず、折り返しにもドリブルにも対応できるポジショニングを取っていたが、結果的に冨安の目の前で2点を決められた。
1失点目はカリアリの左サイドからのクロスに対し、ジョアン・ペドロをニアでフリーにしてしまった。角度がない位置からのシュートで、決めたペドロが素晴らしかった。しかし、結果論で言えば冨安がペドロに身体を当てていれば防げたかもしれないシーンだった。
サイドこそ反対側だが、2失点目も形は似ている。冨安の相方であるダニーロと、左サイドバックのヒッキーがサイドにつり出された。ハーフスペースを突かれ、ゴール前でフリーになったジョバンニ・シメオネに決められている。
ラストパスを送ったガブリエル・ザッパは、カバーに入ったボランチのマティアス・スバンベリを鋭い切り返しで抜いた。この時点でボローニャはゴール前に冨安を含めて3人がいたが、スバンベリが抜かれたことで3対3の状況になった。冨安はザッパとゴール前のスペースを同時に見なければならないという難しい状況だった。
バローの2得点とロベルト・ソリアーノのゴールはコースを狙った見事なシュートだった。守備ではチームとして課題が残ったが、鮮やかなゴールがボローニャを救った。
右利きの左CB
約11か月ぶりに欧州組が参加した10月の代表活動で、日本代表はアフリカ勢との2試合を戦った。初戦のカメルーン戦のメンバーは、1年前の顔ぶれと大きく変わることはなかったが、最終ラインの並びには変化が生まれていた。
「今年から冨安がチームで左センターバックをやっていて、僕がチームで右センターバックをやっている。あまり代表になって、チームでやっていることと変えないほうがいいんじゃないかと」
試合後に吉田麻也がそう説明したように、カメルーン戦では冨安と吉田のポジションがこれまでとは入れ替わっていた。サンプドリアでは吉田は主に右センターバック、そして昨季は右サイドバックを務めていた冨安は、今季からボローニャで左センターバックを務めている。
セルヒオ・ラモス、フィルジル・ファンダイク、カリドゥ・クリバリ、マッツ・フンメルスはいずれも右利きだが、左のセンターバックを務めている。ジェラール・ピケも左利きのサミュエル・ウンティティやクレマン・ラングレが来るまではハビエル・マスチェラーノやカルレス・プジョルの左でプレーしていた。Jリーグを見ても森重真人、畠中槙之輔、谷口彰悟が左。足下の技術があるセンターバックが逆足側でプレーすることは多い。
左足のロングフィード
冨安はファンダイクのようなプレーをしていた。データサイド『Whoscored.com』によれば、今季のセリエAのセンターバックの中で冨安はロングパス成功数が1位となっている。足下の技術が高いのはアビスパ福岡時代までさかのぼっても言えることだが、セリエAの舞台でも非凡なものを見せている。
とはいえ、冨安のロングパスの精度が高いことは相手にも知られている。カリアリは1トップのシメオネとトップ下のペドロでボローニャの2センターバックにプレッシャーをかけている。しかし、ここで冨安の技術の高さを見ることになった。
43分のシーンでは寄せてくるシメオネが届かない左側にボールを置き、左足で前線にボールを送った。1トップのロドリゴ・パラシオが左サイドの深い位置でこれに追いついてクロスを上げている。
62分のシーンでは、相手が寄せてこないとわかると、左足で逆サイドに対角線のロングボールを送った。相手に阻まれてCKとなったものの、通っていればチャンスになったキックだった。
右利きの左センターバックの弱点は、ボールを受けたときのパスアングルにある。しかし、冨安は左足でボールを運べ、左足で蹴ることができる。相手FWが利き足側のパスコースを封じるように寄せてきても、冨安は両足が使えるので困ることが少ない。
今季のロングパス成功率は58%、この試合でも7/14で50%を成功させている。利き足のキックがうまいセンターバックは現代では珍しくないが、左足からも遜色なく蹴られるのは大きなアドバンテージだ。日本代表でパートナーを務める吉田麻也も左足で精度の高いフィードを蹴れるが、それに勝るとも劣らない技術がある。セリエAでのセンターバックとしての経験はまだ浅いが、両足を使える冨安がセリエAで高く評価されるのも不思議ではない。
(文:加藤健一)
【了】