ハイプレスに苦しむユベントス
我慢の時――、と言うべきか。10月25日に行われたセリエA第5節。ホームにエラス・ヴェローナを迎えたユベントスは1-1のドローに終える。90分間を通して、王者は野心溢れる挑戦者に苦しんだ。もっとも、アンドレア・ピルロ監督からすれば、“苦戦”は織り込み済みだったようだ。今季から新しく就任した指揮官は、試合後に次のようなコメントを残している。
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「特にヴェローナがピッチ上に敷くインテンシティのために、私たちはキエフでの試合(21日に行われたCLディナモ・キエフ戦)よりも難しくなるだろうことは知っていた」
ヴェローナは果敢にハイプレスを慣行。ユベントスの選手たちは、序盤こそアグレッシブな守備の目を掻い潜って前線にボールを運んだが、次第に敵将イバン・ユリッチのプラン通りの展開に持ち込まれてしまう。
「ヴェローナがピッチ上に敷くインテンシティ」の中で、ビルドアップは上手くいかず、アーロン・ラムジー、アルバロ・モラタ、パオロ・ディバラの攻撃陣はコンビネーションを構築することができない。ボールを奪えば[2-4-4]といった形でピッチを広く使ってくるヴェローナの攻撃にも苦しんだ。
さらに後半に入ると、ヴェローナのゲーゲンプレッシングが機能。56分にはディバラが3人に囲まれて餌食になると、60分にはフェデリコ・ベルナルデスキの中途半端な横パスが自陣で奪われ、ショートカウンターを食らって失点。完全にユリッチの術中にハマったユベントスの姿がそこにあった。ラムジーは「難しい試合だった。ヴェローナはフィールド全体に強くプレスを掛けてきた」と振り返っている。
試合が終盤に入り、さすがにヴェローナの選手たちの体力も落ちて、プレスの強度が緩むと、デヤン・クルゼフスキが右サイドから仕掛けて1点を返す。しかし、それ以降は割り切って自陣に籠るヴェローナを崩せず。猛攻も実らず、どちらかと言えばユリッチ監督のサッカーとプランが光った試合は、1-1のドローに終わった。
試行錯誤が許される猶予は…
このヴェローナ戦を終えてユベントスの順位は5位。試合中には、キエフ戦のジョルジョ・キエッリーニに続いてレオナルド・ボヌッチも負傷退場するなど、次戦のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)バルセロナ戦向けて、決していい流れとは言えない。
しかし、クリスティアーノ・ロナウドを始め、アレックス・サンドロやマタイス・デ・リフトがまだ戦列に復帰しておらず、人員が完全に整っているとは言い切れない。ディバラもこのヴェローナ戦が今季初先発だ。
そもそもヴェローナ戦に出場したモラタ、アルトゥール、クルゼフスキに加え、ウエストン・マッケニー、フェデリコ・キエーザと、新戦力も多い。監督のピルロも新人の立場だ。現役時代は偉大なレジスタだったとは言え、監督業はまだまだ手探りのところが多いだろう。
こうした現状を踏まえれば、ユベントスは生まれ変わりの時期であり、攻撃時の連動性などチームとして形になるには、どうしても時間が掛かるだろう。ヴェローナとのドローゲームの後で、ラムジーは「僕たちは新しいシステムを学ぶためにトライしているところだ。改善し、バランスを取る必要がある」とコメントを残している。同様にピルロ監督も「改善」という言葉を残した。
そういった意味では、攻守に渡って戦術的にしっかりとしたユリッチ監督のサッカーとの試合は、ユベントスの選手たちにとっていいレッスンだったと言えるのではないか。タフなゲームを通してこそ、チームは成熟する。
もちろんユベンティーノの皆さまが5位という順位をいつまでも受け入れるとは思えないが、ピルロ監督には、熱心なファンの間から現役時代に獲得した信頼の貯金があるはず。少なくともロナウドが復帰するまでは、よほどの連敗や大敗でもしない限り、試行錯誤も許されるのではないか。
(文:本田千尋)
【了】