7ヶ月ぶりの実戦復帰。しかし切れ味は…
中島翔哉が約7ヶ月ぶりに公式戦のピッチへ帰ってきた。
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現地21日にUEFAチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージ第1節が行われ、ポルトはアウェイに乗り込んでマンチェスター・シティと対戦した。
結果は1-3と完敗だったが、多くの選手がCL本選デビューを飾った。3月7日のポルトガル1部リーグだ24節、リオ・アヴェ戦に先発して以来の起用となった中島も、CLで初舞台を踏んだ選手のうちの1人だ。
新型コロナウイルスの感染拡大にともなう中断期間中、チーム練習への合流拒否報道もあった。さらに公式戦が再開してから、今度はリーグの優勝争い真っ只中だったチームに戻る許可が与えられなかったとも伝えられた。
結果的に昨季はリーグ優勝や国内カップ戦決勝を制した後のセレモニーにも参加できず。半年以上ともに戦ってきたチームから蚊帳の外に置かれていた。
それでも今季は正式な許可を得てプレシーズンからトップチームに復帰。ジムでのコンディショニングトレーニングが必要で本格合流まで時間はかかったが、最近になってようやくクラブが発信する練習動画などにも姿を見せるようになっていた。
そして、現地17日に行われたリーグ第4節のスポルティングCP戦でベンチ入りし、今回のシティ戦での約7ヶ月ぶりの起用に至っている。
77分にザイドゥ・サヌシとの交代で途中出場した中島は、左サイドに入った。だが、決定的な場面に絡むことはできず。肉体的にややたくましくなった印象で、何度か鋭い切り返しなどは見せたものの、持ち味のドリブルにかつてのような切れ味はなく、周囲との連係もほぼゼロに戻ってしまっていた。
半年以上も実戦から遠ざかっていれば無理もない。以前のような姿を取り戻すには、ある程度時間が必要だろう。
一方で、変化を感じた部分もあった。それは守備だ。シティ戦での中島は、チームがボールを失うと、スプリントを入れてしっかり帰陣し、危険なスペースを埋めたり、近くの相手選手をマークしたり、フリーでボールを受けた選手にプレッシャーをかけたりと規律に則ったプレーを忠実にこなしていた。
守備意識には成長の跡
以前の中島はプレスをかけるべき時に歩いていたり、勝手に攻め残っていて大目玉を食らったりする場面もあったが、シティ戦の中島はしっかりとチームの規律を意識しているように感じた。彼が周りの選手に身振りも交えながらマークの受け渡しの指示を出しているシーンなど、これまでほとんど見たことがなかった。
守備に関しては実戦で感覚を養わなければならない部分もあるが、チームの約束事を覚えれば、ある程度は周りと連動しながら適切なプレーを選択できるようになる。つまり成長の跡が見えやすい部分でもあるだけに、今後が楽しみだ。
いまのポルトは失点増という課題を抱えている。リーグ戦では4試合を終えて6失点、クリーンシートは5-0で勝利したボアヴィスタ戦の一度しかなく、直近ではマリティモに3失点、スポルティングCPにも2失点した。
昨季はリーグ戦だけで19試合ものクリーンシートがあり、優勝を手繰り寄せた大きな要因だった。開幕から4試合で2勝1分1敗という結果も含め、安定感に一抹の不安があるのは確かだ。
そして今回は相手が明らかに格上のシティということもあり、ポルトを率いるセルジオ・コンセイソン監督は使い慣れた4バックではなく、守備に軸足を置いた3-5-2を採用した。
攻撃時には2トップの一角に入るコロンビア代表FWルイス・ディアスが、守備時は5-4-1の左サイドに降りてくる、やや変則的なシステムだった。
若干腰の引けた戦い方ではあったが、ポルトはシティ相手に先制する。14分、相手DFルベン・ディアスの縦パスをカットしたところからカウンターに移り、左サイドでドリブルを開始したルイス・ディアスが、猛スピードでピッチを斜めに切り裂くように進む。そのままペナルティエリア内に侵入し、コンパクトに右足を振り抜いてゴールネットを揺らした。CLデビュー戦での初ゴールである。
しかし、勢いは長く続かず、シティの流れるようなパスワークに翻弄される。20分にはぺぺがペナルティエリア内でラヒーム・スターリングを倒して与えたPKを、セルヒオ・アグエロに決められて同点に。
前半は1-1で折り返したものの、65分にイルカイ・ギュンドアンの直接フリーキックが決まり追加点。さらに73分にはフィル・フォーデンとフェラン・トーレスが2人だけで左サイドをあっさり崩し、後者がフィニッシュ。シティはリードを2点に広げ、勝ち切った。
指揮官は審判団へ怒りをぶつけるが…
ポルトは後半、ほとんどボールを持たせてもらえず、常時5-4-1で防戦一方になっていた。その中に起爆剤として中島やイラン代表FWメフディ・タレミ、若手ブラジル人FWエヴァニウソンらが次々投入された。終盤は4-4-2にして反撃を試みるも実らなかった。
コンセイソン監督は試合後に「選手たちを称えたい。いくつかの新しい要素を入れて、システムを変えたからだ。(3バックは)シティの強みを打ち消し、前半はうまくいっていたことを(後半も)続けることが重要だと思っていた」と語った。
一方で「我々はVARを開拓した国だが、今日、私が見たものに関してポルトガルの全ての審判に謝罪したい」と、審判団には皮肉交じりに厳しい非難を浴びせている。怒りの矛先は主審を務めたラトビア人のアンドリス・トレイマニスと、VARを担ったオランダ人のヨヘーム・カンピュイスに向いていた。
前半にぺぺがスターリングに突っ込んでPKを与えた場面の直前、ギュンドアンがGKアグスティン・マルチェシンのすねを上から踏んでいたのに、なぜオン・フィールド・レビューで映像を確認しなかったのか。2失点目のフリーキックにつながったファビオ・ヴィエイラのファウルは正当なタックルだったのではないか。この2点が、コンセイソン監督の腑に落ちていないようだ。
とはいえ負けは負け。次に切り替えて、前に進んでいくしかない。中島もシティ戦をきっかけに、貪欲にさらなる出場の機会を狙っていきたいところだ。24日には東京ヴェルディユース出身同門対決、藤本寛也が所属するジル・ヴィセンテとのリーグ戦が組まれ、29日にはCLのグループステージ第2節・オリンピアコス戦も控えている。
いきなりの過密日程で総力戦になり、選手のやりくりも必要になってくるだろう。中島は少ないチャンスでいかに結果を残し、さらにゴール前以外の場面でも貢献できることを示せるか。不安定なチームに継続性をもたらせれば、確立しつつある序列を覆すことができるはずだ。
(文:舩木渉)
【了】