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群雄割拠のプレミアリーグ
トッテナムとマンチェスター・シティの台頭によりビッグ4はビッグ6へと移り変わったが、その呼称ももはや死語になりつつある。
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プレミアリーグは5節を終え、エバートンが4勝1分で首位に立っている。昨季は17位で降格を免れたアストン・ヴィラが4戦全勝で2位につけ、レスターが4位にいる。チェルシーは8位、1試合消化が少ないマンチェスター・シティは11位、マンチェスター・ユナイテッドは――。
プレミアリーグは過渡期に入った。昨季からその兆候を見せていたが、昇格したリーズ・ユナイテッドがそれに拍車をかけている。
マルセロ・ビエルサに率いられるチームは開幕戦でリバプールと壮絶な打ち合いを演じ、シティにも互角に立ち合った。「リーズのように良く組織された情熱的なチームとの試合は最高だった」とユルゲン・クロップが賛辞を送れば、「ファンタスティックなチーム」とペップ・グアルディオラに言わしめた。
現代サッカーで「認知」の重要性が語られるようになって久しい。
選手がプレーを「実行」するまでには、ボールや味方、相手の位置などの情報の「認知」と、適切な選択肢を選ぶ「判断」というプロセスを経なければならない。
体感としてリーズの実行までのプロセスは他のチームより速い。味方が動き出す前にどこに蹴るかの判断をしている。そして蹴る動作に移る間に味方選手は動き出す。味方が動き出すのを見てから判断しては遅い。チームとして判断の原則があるからそれが一致する。阿吽の呼吸はこうして生まれるのだと思う。
ウルブズの戦法
リーズはプレミアリーグ屈指の難敵、ウォルバーハンプトンを相手に主導権を握っていた。前半のボール支配率は68.8%で、ほとんどの時間を相手陣内で過ごした。ウルブズの攻撃は単発で、前半はわずか2本のシュートに終わっている。
リーズは試合を通じて13本のシュートを放ったが、枠内に飛んだのは2本でウルブズの3本を下回っていた。トランジションで優位に立ってボールを握り、アタッキングサードに入るまでは良かったが、決定機を作ることに苦労していた。
ウルブズはボールを握られたが、リーズの攻撃を跳ね返し続けた。クリアの数は26を数え、3バックを中心にシュートブロックも4本をマーク。壁を築いたウルブズに対して、リーズは今季初めて無得点で試合を終えている。
ウルブズは3節でウエストハムに0-4の大敗を喫したが、そこからフラム戦、リーズ戦をともに1-0で制した。フラム戦からは3バックの左を担当していたロマン・サイスをウイングバックに上げ、マックス・キルマンを最終ラインに起用し、守備の安定を図っている。
クリア数は3節までが平均8.3本だったのに対し、フラム戦で25本、リーズ戦は26本と急増。フラム戦でもボール保持率で下回っていた。ポゼッションにこだわらず、相手にボールを預ける戦いがこの2試合では結果につながった。
リーズの集中力
ある研究によると人間が集中していられる限界は90分だという。身体に強い負荷がかかるサッカーの試合ではもしかしたらそれより短くなるかもしれない。さらに、それが深い集中となると15分しか持続できない。
リーズはフラム戦で3点をリードしながら、後半17分と22分に立て続けに2失点を許した。キックオフと同時にフルスロットルでプレッシャーをかけるサッカーは、後半のどこかで必ずエアポケットが生まれる。交代策はエンジンをかけ直す効果的な策だが、0-0が続いたウルブズ戦でビエルサはなかなか交代カードを切れずにいた。
一方、ウルブズは65分にアダマ・トラオレを入れた。爆発的なスピードと強靭なフィジカルを持つトラオレは、カウンターのボールプッシュ役としてこの上ない存在である。決定的なシーンこそ作ったわけではなかったが、トラオレが攻め残りは、リーズの陣形を全体的に間延びさせていた。
手堅い守りと的確な采配。ウルブズは狡猾な戦法で勝機を見出した。
リーズは4試合で7失点と、守備が堅いチームではない。アグレッシブに敵陣に攻め込むビエルサのサッカーはエキサイティングであるとともにリスキーでもある。ここまでの失点パターンを見ると、深い位置まで攻め込まれたときが多い。
シティ戦のラヒーム・スターリングのゴールと、この試合のラウル・ヒメネスのゴールは似ていた。サイドからカットインするボールホルダーに対してマーカーがついていけず、マークの受け渡しがままならずにフリーにしてしまった。
リーズの守備は基本的にマンマークだ。サイドバックはウルブズの2シャドーを離すまいと逆サイドまで追う。しかし、例外的に、自陣のゴール前では4-1-4-1でゾーンを埋める。しかし、ゾーンの対応となるとリーズは普通以下のチームになってしまう。押し込まれる前にボールを奪回するか、ゾーンの守備を整理しなければ今後も苦しい戦いが続くかもしれない。
魅力的なサッカーでプレミアリーグに風穴をあけるリーズと、試合巧者としての一面を持つウルブズ。ビッグクラブを相手にもタダでは倒れない曲者の両者の対戦は、とても見応えのある試合だった。
(文:加藤健一)
【了】