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エバートン対リバプールは激熱展開。ハメス・ロドリゲスは抜群に巧いが…王者が狙い続けた弱みとは

プレミアリーグ第5節、エバートン対リバプールが現地時間17日に行われ、2-2の引き分けに終わった。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)による2度のオフサイド判定は物議を醸している。しかし、試合内容に目を向ければ、歴史あるマージーサイドダービーに相応しい見応えのある攻防が繰り広げられていた。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

ハメス・ロドリゲスは抜群に巧いが…

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【写真:Getty Images】

 試合自体は拮抗した好ゲームだった。中盤の攻防は見応えがあり、お互いの狙いが形として現れていた。VARさえなければもっと面白かったはずと思うが、ここではそれにあまり触れないようにしたい。

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 エバートンは開幕4連勝で首位に立っている。アブドゥライェ・ドゥクレやアランの加入も大きいが、なんといってもハメス・ロドリゲスである。右寄りの位置からチャンスを演出し、ドミニク・キャルバート=ルーウィン、リシャルリソンとの3トップは相手の脅威になっている。

 エバートンは先制されたが、ハメス・ロドリゲスの右CKをマイケル・キーンが頭で合わせて同点。この試合でもハメス・ロドリゲスの左足は別格だった。スルーパスの精度も抜群で、サイドチェンジは味方の足下にピタリと収まった。ロングボールは7本中6本を成功させ、6本中3本のクロスボールを味方に届けている。この試合でもハメス・ロドリゲスを中心に攻撃は回っていた。

 しかし、プレミアリーグ王者はエバートンのウィークポイントも認識していた。ハメス・ロドリゲスは確かに巧いが、下がって守備をしない。得意ではないというのが正しい表現かもしれない。戻ってもあまり役には立てない。

 先制点の場面で、ラストパスを出したロバートソンはフリーだった。スライドしたサイドバックのシーマス・コールマンが抜かれてドゥクレがボールに寄せたが、今度はサディオ・マネがフリーになった。このときハメス・ロドリゲスは攻め残っている。

 攻め残ること自体が悪いのではない。しかし、右サイドで作って左サイドに展開して中央で仕留めることが得点パターンとなっているリバプールの左サイドで、ロバートソンを自由にさせてしまうのは致命傷だった。

 リバプールは先制点の2分後にも同じ形からチャンスを作っている。ハメス・ロドリゲスは下がって守備をせざるを得なくなるのだが、いかんせんディフェンスが苦手だ。13分のシーンでは簡単に抜かれてしまい、45分には3対1と数的有利な局面にもかかわらず後ろから不用意に足を出し、イエローカードをもらっている。ドゥクレやアランがスライドしてなんとか傷口を塞いでいたが、失点しない方が難しい戦い方だった。

ファンダイクを失ったリバプール

 先制した直後にリバプールに悲劇が起こる。GKジョーダン・ピックフォードと激突したフィルジル・ファンダイクが膝を負傷し、プレーを続けることができなくなった。このプレー自体は直前のところでファンダイク自身がオフサイドとなっていたため、ピックフォードはファウルにはならなかったが、危険なプレーだった。

 ちなみに、腕はオフサイドの対象とならないので、ファンダイクの肩か頭、胴体か脚が出ていたことになる。後半アディショナルタイムのサディオ・マネのシーンも同様。映像を見る限りは納得しがたいが、VARがそう判定したのであればそうなんだろう。

 PKを得られなかったことよりも、ファンダイク抜きで残された80分を戦うことの方がリバプールにとっては苦しかった。2シーズン続けてプレミアリーグ全試合出場、今季はコミュニティーシールドもカラバオカップもすべて先発し、10月のオランダ代表戦も3試合すべてに先発。泣く子も黙る鉄人を欠いたリバプールはその後、苦しむことになる。

 1点目はセットプレーからで、ファンダイクが去った後の最初のCKだった。そして、エバートンは前線に向かってシンプルにボールを入れる回数を増やした。キャルバート=ルーウィンはこれを収め続け、エバートンは高い位置で攻撃を開始する。195cmのジョエル・マティプを避け、188cmという身長の割にハイボールに強くないジョー・ゴメスを狙った。

 エバートンの2点目のシーンで、キャルバート=ルーウィンはファーサイドでロバートソンとジョー・ゴメスの間にポジションを取っている。7得点でプレミアリーグ得点ランキングトップを走るキャルバート=ルーウィンの、ゴール前での嗅覚の鋭さと落ち着きには目を見張るものがあった。

幻の決勝ゴールとチアゴの効用

 危険なタックルで90分にリシャルリソンが一発退場となり、エバートンは勝ち点1を目指して引きこもった。ここでリバプールはチェルシー戦の記憶がよみがえる。1人少なくなった相手に対して後半開始からチアゴを入れ、リバプールは早々に2点を奪っている。

 リシャルリソンの退場からおよそ2分後、チアゴのノールックパスをマネが受け、グラウンダーのクロスをジョーダン・ヘンダーソンが左足で合わせてゴールネットを揺らした。しかし、チアゴからパスが出たときのマネがオフサイド。決勝ゴールは幻となった。

 リバプールにとっては不運に泣いた試合となったが、仕留められる場面はもっとあった。サイドでは起点を作れていたが、ジョルジニオ・ワイナルドゥムが早い時間帯からいれば、クロスに飛び込むシーンがあったかもしれない。

 チアゴは押し込んだ状態で1本のパスでチャンスを生み出すことができることを証明した。一方でファビーニョとの共存には課題を残しており、今後の起用法に少なからず影響してくるだろう。

 リバプール相手にも負けなかったエバートンは、開幕4連勝が偶然ではなかったことを証明した試合となった。ただ、ハメス・ロドリゲスは攻撃面で高いクオリティを発揮しているものの、この試合のように守る時間が長くなる試合ではウィークポイントが目立っていた。

 テクノロジーを盾にしたVARが伝統あるマージーサイドダービーの魅力を損ねてしまった。しかし、ピッチで繰り広げられた攻防は、ダービーの名に相応しいほどエキサイティングなものだったことだけは心に留めておきたい。

(文:加藤健一)

【了】

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