離脱者多数の中で見事な快勝劇
「たぶん、11、12、13人の選手しかいないだろう」。
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リーグ・アン第7節のニーム戦に向けたトーマス・トゥヘル監督のコメントだ。この言葉通り、パリ・サンジェルマン(PSG)には離脱者が続出していた。
マルコ・ヴェラッティ、ユリアン・ドラクスラー、ファン・ベルナト、ティロ・ケーラー、マウロ・イカルディが負傷しており、アンヘル・ディ・マリアとレーバン・クルザワは出場停止。新型コロナウイルスの陽性反応が出ていたクリスティアーノ・ロナウドと接触したダニーロ・ペレイラも隔離されている状態だった。
そんなチーム状況の中で迎えたニーム戦の先発メンバーには、新加入のモイーズ・キーンやラフィーニャといった選手が名を連ねた。代表戦を戦ったばかりでコンディション面が懸念されていたキリアン・ムバッペもピッチに立ったが、ブラジル代表のネイマールはベンチからも外れている。
試合はホームのニームペースで始まった。PSGは最終ラインからボールを繋ぐが、相手の強度の高いハイプレスに大苦戦。とくにアンカーのレアンドロ・パレデスが立ち上がりから捕まってしまい、ボールを失ってはシュートまで持ち込まれた。
流れに乗れないPSGだが、向かい風は吹き続ける。11分にパレデスが負傷し、アンデル・エレーラとの交代を余儀なくされてしまったのだ。
しかし、一瞬の出来事でPSGに追い風が吹いた。12分、こぼれ球を拾おうとしたロイク・ランドルがラフィーニャの脇腹を足の裏でキック。これを見逃さなかったレフェリーはランドルにレッドカードを提示。ニームは12分という早い段階で10人となってしまったのだ。
こうなると試合は一方的な展開に。ニームは4-4-1のブロックを組んだが、かなりギリギリでの対応を強いられた。そして、32分に失点。ラフィーニャのスルーパスに抜け出したムバッペに均衡を破られた。
PSGはその後も一人少なくなったニームに容赦なく襲い掛かる。ホームチームはGKバプティスト・レネのファインセーブもありなんとか0-1の状態を保っていたが、疲労も溜まってくる後半終盤に防波堤が決壊。アレッサンドロ・フロレンツィ、ムバッペ、パブロ・サラビアに点を許し、結果的に0-4の大敗を喫することになった。
データサイト『Who Scored』によると、PSGはこの日、実に30本ものシュートを放っている。支配率は75%を記録しており、被シュート数はわずかに5本。あまりに一方的過ぎた。結果論にはなってしまうが、ニームとしてはやはり前半早々の退場が大きなダメージだったと言えるだろう。
期待を結果に結ぶムバッペ
先述した通り、この日のPSGは離脱者が多かった。その中でチームに勝利をもたらすことができる選手として、ムバッペに懸かる期待は大きかったはず。ネイマールやイカルディが不在、キーンはフィットしきれておらず、サラビアも点取り屋ではないため、背番号7がこの日の最大の得点源だったからだ。
フランスの若きストライカーは前半から積極的にボールに触れ、攻撃のグレードを高めた。スピードとフィジカルコンタクトの強さを活かしたダイナミックなドリブルで深さを作れることはもちろん、得点への欲が完全なるエゴに繋がることなく、冷静な判断で味方も活用。幅広いタスクをこなした。
そして、32分に先制弾。ラフィーニャのスルーパスに抜け出しGKレネと1対1を迎えたが、キレのあるシュートフェイントでかわし、無人のゴールへ流し込んだ。
また、この得点の後、ムバッペはユニフォームを少しめくって『COURAGE LUCAS JE SUIS AVEC TOI(勇気あるルーカス 君と一緒にいるよ)』と書かれたシャツを披露。カメラに向かってキスをした。
この「ルーカス」とは、現在病気と懸命に戦っている8歳のルーカス君のことだという。チャンピオンズリーグ(CL)決勝、PSG対バイエルン・ミュンヘン戦の前に病気や障害のある子供などを支援する『Les Petites Bosses』協会のツイッターで紹介された少年は、大のPSGファンでありムバッペファン。8歳の誕生日を迎える前に入院となってしまったが、そのルーカス君を励ますために『Les Petites Bosses』協会が投稿した「応援メッセージを募る」ツイートには多くのPSGファンらが励ましの言葉を贈っていた。
また、ムバッペは昨年、『Les Petites Bosses』協会にサイン入りのPSGユニフォームを寄贈。このユニフォームはオークションに出品され、そこで得たお金はすべて同協会に寄付されることに。子供たちへの支援をサポートしようと、ムバッペは資金提供に協力していたのである。
ちなみに試合後、ムバッペのメッセージを受けた『Les Petites Bosses』協会は「感動しました。(省略)あなたの強さと勇気は立派です」とツイートしている。
少し話は逸れたが、待望の先制弾を奪取したムバッペはその後も勢いに乗った。背番号7がボールを持つと、ニームDF陣は二人以上で囲むかファウルを犯すしか選択肢がなかった。ムバッペは代表戦参加の影響をほとんど感じさせないプレーぶりを披露したのだ。
ムバッペは83分にもゴールを奪い、その直後にヘセ・ロドリゲスとの交代でピッチを退いた。データサイト『Who Scored』によるスタッツはシュート数8本、キーパス2本、ドリブル成功数3回で成功率100%。申し分ない働きだった。
ネイマールら複数の主力選手が不在でも、ムバッペがいる。PSGにとってこのような存在は心強いと改めて感じた。CLのマンチェスター・ユナイテッド戦に向けて勢いのつくようなパフォーマンスを見せ、そして8歳の少年にも元気を与えたニーム戦のムバッペは素晴らしかった。
(文:小澤祐作)
【了】