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アーセナル、若手CB獲得が大当たり。市場最終日にトーマスも確保、100億円投資は実るか?【欧州主要クラブ補強診断(4)】

欧州の2020/21シーズンが開幕し、夏の移籍市場が終了した。この夏も各チームで様々な移籍があったが、各国の主要クラブはそれぞれどんな動きを見せたのだろうか。今回は昨季のプレミアリーグを8位で終えたアーセナルの補強動向を読み解く。

シリーズ:20/21欧州主要クラブ補強診断 text by 編集部 photo by Getty Images

若手ブラジル人CBが早くもブレイク

アーセナル
【写真:Getty Images】

 ミケル・アルテタ監督率いるアーセナルにとって、5シーズンぶりのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得は至上命題となる。

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 今夏の移籍市場でもそのための補強に動いた。そして、最後の最後で中盤の要になりうる選手の獲得に成功している。アトレティコ・マドリードに契約解除金満額にあたる5000万ユーロ(約60億円)を支払って引き抜いたトーマス・パーティだ。

 このガーナ代表MFは強靭なフィジカルを誇り、豊富な運動量と圧倒的な当たりの強さで対人戦を制す。近年はビルドアップにおける貢献度も向上しており、今季のアーセナルで中心選手になることが期待される。

 パーティと入れ替わる形でウルグアイ代表MFルーカス・トレイラがアトレティコへ期限付き移籍。その他に放出された選手はアルテタ監督との確執が噂されたMFマッテオ・ゲンドゥージや、控えGKだったエミリアーノ・マルティネスくらいで、主力のほとんどが残留している。

 すでに開幕したプレミアリーグの新シーズンは、4試合で3勝1敗と好調なスタートを切った。チェルシーから加入したウィリアンや、リールから獲得したガブリエウ・マガリャンイスはチームに欠かせない戦力として活躍しており、早くも補強の成果が出始めている。

 特に22歳のDFガブリエウ・マガリャンイスのパフォーマンスは、大きなサプライズと言っていいだろう。リーグ戦開幕直前の加入ながら、すぐにディフェンスラインで定位置を確保し、毎試合のようにマン・オブ・ザ・マッチ級のプレーを披露。出場した試合は全て勝利している。

 身長190cmと大柄ながら鈍重さはなく、積極的に前へ出る勇敢なプレースタイル。そして、豪快なタックルやボール奪取のみならず、足もとの技術にも優れ、正確なロングフィードなど多彩な武器を持つ。

 アルテタ監督自ら電話をかけて口説き落としたほどの逸材センターバックは、すでに期待通りかそれ以上のプレーで信頼に応えている。

 今夏の補強によってGKベルント・レノから、センターバックのガブリエウ・マガリャンイス、セントラルMFのトーマス、2列目のウィリアンと中央に1本の軸ができあがった。3-4-3での戦い方に改善点は多くあれど、例年よりもポジティブな雰囲気が漂っている。

 コミュニティシールドでは昨季王者リバプールを相手にPK戦まで持ち込み、今季初タイトルを獲得。その後のリーグ戦では敗れたものの、早くも今季3度目の顔合わせとなったリーグカップ4回戦で再びPK戦の末に勝利を収めた。

 リバプールやマンチェスター・シティが頭1つ抜けた総合力でタイトルレースを引っ張る中、プレミアリーグ制覇は難しい目標かもしれない。ただ、今後リーグの頂点に立つためにも、CL出場権は確実に獲得したいところだ。

補強・総合力評価

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アーセナルの2020/21シーズン予想布陣(黄色は新加入選手)

IN
GK:ルナール・アレックス・ルナールソン(ディジョン)
DF:ガブリエウ・マガリャンイス(リール)
DF:ウィリアム・サリバ(サンテティエンヌ/期限付き移籍から復帰)
MF:トーマス・パーティ(アトレティコ・マドリード)
MF:ウィリアン(チェルシー)
MF:モハメド・エルネニー(ベシクタシュ/期限付き移籍から復帰)

OUT
GK:エミリアーノ・マルティネス(アストン・ヴィラ)
GK:デヤン・イリエフ(ヤギエロニア/期限付き移籍から復帰→シュールズベリー/期限付き移籍)
DF:コンスタンティノス・マヴロパノス(シュトゥットガルト/期限付き移籍)
MF:ルーカス・トレイラ(アトレティコ・マドリード/期限付き移籍)
MF:マッテオ・ゲンドゥージ(ヘルタ・ベルリン/期限付き移籍)

補強評価:A

 主力クラスの即戦力を各ポジションにピンポイントで獲得し、彼らはすでにパフォーマンスで期待に応えている。移籍市場閉幕間際に獲得したトーマスが組織にハマれば、全体の迫力はさらに増すだろう。トルコのベシクタシュへのレンタルから復帰したモハメド・エルネニーが継続的な出番を得て好プレーを披露しているのは嬉しいサプライズか。

総合評価:C

 現実的に考えれば、抱えている選手のクオリティでリバプールやシティには敵わない。それでもアルテタ監督が築いてきた3-4-3は戦術的に洗練されていて、選手たちのポジショニングや連動性は非常に高い。個ではなく組織で立ち向かえばリバプールと互角に渡り合えることはすでに証明してきた。ただ、一部の主力を欠いた場合に不安定さが露呈してしまう選手層の薄さは懸念点か。例年のように中盤戦以降けが人が続出するようなシナリオは避けたいところだ。

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≪書籍概要≫
なぜ、あえて今アーセナルなのか。
あるアーセナル狂の英国人が「今すぐにでも隣からモウリーニョを呼んで守備を整理しろ」と大真面目に叫ぶほど、クラブは低迷期を迎えているにもかかわらず、である。
そのヒントはそれこそ、今に凝縮されている。
感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
同じくアーセナル、特にアルセーヌ・ベンゲル時代のアーセナルは、一部から「うぶすぎる」と揶揄されながら、内容と結果を執拗に追い求めてきた。
そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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