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Jリーグ 4年前

ポジショナルプレーを実践するためには…。ベガルタ仙台元監督、渡邉晋が明かす「共通語」【渡邉式ポジショナルプレー・前編】

ゴールからの逆算、すなわち「良い立ち位置」を追い求め続けた監督時代の6年間を時系列で振り返りながら、いまだベガルタ仙台サポーターから絶大な支持を得る「知将」の戦術指導ノウハウをあますところなく公開した、渡邉晋氏初の著書『ポジショナルフットボール実践論』から、「渡邉式ポジショナルプレー」の章を発売に先駆け一部抜粋して前後編で公開。今回は前編。(文:渡邉晋)

text by 渡邉晋 photo by Getty Images

『スペース』という言葉を用いたことがない理由

渡邉晋
【写真:Getty Images】

本書では説明のために使っていますが、実は私はピッチレベルにおいて、『スペース』という言葉を用いたことはほとんどありません。その理由を改めて考えてみると、『スペース』と言われたときに、私が考える『スペース』と、選手が考える『スペース』の意味が一致しない可能性があるからだと思います。

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一般的にサッカーで使われている言葉は、利便性が高い反面、お互いがどう理解をしているのか意外と曖昧だったりします。それゆえ、『スペース』という言葉についても、その言葉の意味とプレーを結びつけるために、《レーン》《剥がす》《もぐる》といったピッチ上の現象とそのイメージが直結する表現を使うようにしました。

2019年は《箱》という言語も使っています。[4-4-2]でブロックを組む相手の『4-4』の部分、相手のCB、SB、ボランチ、SHで作られている四角形を《箱》と呼びました。相手が5バックの『5-4』でブロックを組んでも、同様の四角形が生まれます。

いわゆる『ライン間』のようなものですが、基本的にはシャドーが立つ場所のことを《箱》としました。それも結局は『スペース』を表すための呼び名であり、今にして思えば、私が使っていた言葉のほとんどは、『スペース』を意図的に扱うためのものだったと思います。

選手と指導者で理解し合う「共通語」の価値

 そして、大前提はやはり「1人の立ち位置で2人を困らせる」ということです。《箱》を例にすると、その選手は《箱》のどこに立っているのか。相手1人を困らせているのか、2人を困らせているのか、あるいは4人を困らせているのか。最後に自分たちが破りたいのは相手最終ラインの背後なので、その《箱》からレーンを走る準備はできているのか。足元で受けるだけでは相手の最終ラインは何も怖くないので、その立ち方は2人を困らせているのか。そこが一番の肝です。

 我々が意図して使いたい『スペース』を選手に伝えるために、私は様々な言葉をチョイスしてきました。少なくとも指導者と選手の間では、「言葉はしっかりとした共通の意味」を持っていなければいけません。

『スペース』もそうですが、メディアで一般的に使われている言葉をそのまま使うことの危険性は大きいと感じていました。それぞれの解釈が異なり、誤解の元になるからです。だからこそ、メディア言葉のようなものを、あえて除外する作業もしました。逆に、新しい言葉を作れば、真っ白の状態で共有できるメリットもあります。指導者にとって、言葉に対する意識は重要であると思います。

(文:渡邉晋)

ベガルタ仙台でポジショナルフットボールを確立した渡邉晋監督の著書が刊行。いまも仙台サポーターから絶大な支持を得る「知将」の戦術指導ノウハウが…! 詳細は↓をクリック

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『ポジショナルフットボール実践論 すべては「相手を困らせる立ち位置」を取ることから始まる』


定価:本体1700円+税

≪書籍概要≫
渡邉晋は《切る》《留める》《解放》など独自の言語を用い、ベガルタ仙台に「クレバーフットボール」を落とし込んだ。実は選手を指導する際、いわゆる『ポジショナルプレー』というカタカナ言葉は一切使っていない。
にもかかわらず、結果的にあのペップ・グアルディオラの志向と同じような「スペースの支配」という攻撃的なマインドを杜の都に浸透させた。フットボールのすべては「相手を困らせる立ち位置」を取ることから始まる――。
ゴールからの逆算、すなわち「良い立ち位置」を追い求め続けた監督時代の6年間を時系列で振り返りながら、いまだ仙台サポーターから絶大な支持を得る「知将」の戦術指導ノウハウをあますところなく公開する。

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【了】

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