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マンCはなぜ勝てない? リーズに圧倒され11位低迷。就任5年目のグアルディオラに訪れた試練

プレミアリーグ第4節、リーズ・ユナイテッド対マンチェスター・シティが現地時間3日に行われ、1-1の引き分けに終わった。リーズのソリッドな守備とカウンターに苦しめられたシティは、3試合を終えて勝ち点4の11位とスタートダッシュに失敗している。監督就任5年目を迎えたペップ・グアルディオラのチームが苦しむ原因はどこにあるのだろうか。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

リーズに苦しめられたマンC

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【写真:Getty Images】

 息つく暇もない90分だった。激しい攻防が繰り広げられた試合は、1-1で痛み分けとなっている。

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 試合のスタッツを見ると、リーズがボール支配率、パス本数で上回っている。シュート本数はマンチェスター・シティが23本で上回っているが、リーズも12本。両チームともにアタッキングサードへの侵入回数が多かった。この試合で最もハードワークしていたのは左右に振られ続けた中継用のカメラマンだろう。

 試合の主導権という言葉は曖昧な表現だが、ストレスなく90分プレーできていたのはリーズだったと思う。昇格組ながら開幕戦でリバプールを追い詰め、フラムとシェフィールド・ユナイテッドに連勝した実力はこの試合でも発揮されていた。

 シティはウォルバーハンプトン戦やレスター戦から中盤の形を変えている。ロドリの横でプレーしていたフェルナンジーニョではなく、フィル・フォーデンを中盤で起用。慣れ親しんだ4-3-3の布陣でリーズに相対した。

 対するマルセロ・ビエルサのチームはマンツーマンが基調である。4-3-3のシティに対しても最終ラインに1人余らせつつ、人に人を当ててきた。

交代策で入れ替わる優位性

 マンツーマンは個の優位性がはっきりと現れる。前半で言えば、シティの左サイドバック、バンジャマン・メンディとリーズの右ウイング、エルデル・コスタ。マッチアップに勝利したメンディがボールを奪ってそのまま持ち上がり、チャンスにつなげるシーンが何度もあった。

 先制ゴールを決めたラヒーム・スターリングは、ちょうど1分前のシーンで縦への突破を図っている。ペナルティーエリアの角でボールを受けると、今度はそれを逆手に取るように横方向へ運び、右足のシュートでゴールネットを揺らした。

 スターリングにはルーク・アイリングがついていたが、スターリングが横へ運んだことでマークをセンターバックに預けた。しかし、受け渡しがスムーズにいかず、シュートを打つスペースを与えてしまった。スターリングの先制ゴールは、マンツーマンディフェンスの泣き所を突かれたことで生まれた。

 17分の失点はわずかな隙を突かれた形となったが、試合全体を通してリーズのディフェンスは安定していた。シュートを23本打たれながら、枠内シュートが2本に留まったのは、降りしきる雨によるピッチコンディションの悪さもさることながら、ボールホルダーへ寄せて切れていたことも影響している。

 ハーフタイムにリーズはイアン・ポベダ=オカンポを右サイドに入れ、コスタを左に回した。20歳の小柄なドリブラーは、コスタを苦しめていたメンディを翻弄。優位性はひっくり返され、リーズはカウンターからチャンスを作り続けた。

 シティはメンディを下げてナタン・アケを入れ、中盤にフェルナンジーニョを入れて守備の安定を図っている。エデルソンのビッグセーブもあり失点は1つで抑えられたが、特に後半はレスター戦のように大量失点を喫していてもおかしくない内容だった。

マンC不調の原因

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【写真:Getty Images】

 試合後にペップ・グアルディオラが「ファンタスティックなチーム」と相手チームを称えたように、リーズのパフォーマンスが良かったのは間違いない。一方で、開幕から3試合で勝ち点5をすでに落としているシティの低調も目につく。

 グアルディオラは「解決する必要があるものがいくつかある」と言いながらも、選手たちのプレーにはおおむね満足しているようだ。実際、不調の原因はピッチ内で起きているものだけではなさそうだ。

 リヤド・マフレズとエメリック・ラポルトは、開幕前に新型コロナウイルスの陽性反応が出たため調整が遅れた。開幕戦当日にはイルカイ・ギュンドアンにも陽性反応が出ており、ようやく全体練習に参加したばかりだという。ベルナルド・シウバやオレクサンドレ・ジンチェンコ、ジョアン・カンセロらは9月の代表活動で負傷して開幕戦に間に合わず、ガブリエウ・ジェズスも離脱を余儀なくされている。

 シティは開幕からベンチメンバーにリザーブチームの若手を入れざるを得ない状況が続いており、21日の初戦から週2ペースでの試合が続いている。プレミアリーグの対戦カードもウルブス、レスターといった難敵が続き、この日はリバプールを追い詰めたリーズと対戦。泣きっ面に蜂という言葉が今のシティを表現するのにぴったりだ。

ペップ就任5年目の試練

 シティのライバル、マンチェスター・ユナイテッドを27年間率いたサー・アレックス・ファーガソンは、チームをバスに喩えている。途中で乗る人がいれば、降りる人もいる。運転手が代わることもあるが、バスは走り続けなければいけない。

 大資本の投下によって急成長を遂げたシティは、11/12シーズンにロベルト・マンチーニの下で、2年後はマヌエル・ペジェグリーニの下で優勝を果たしている。その4年後からはペップ・グアルディオラの下で連覇した。

 バルセロナでは4シーズン、バイエルン・ミュンヘンでは3シーズンでチームを去ったグアルディオラだが、シティ在籍は今季で5シーズン目となった。選手は平等に1歳ずつ歳をとる。ヴァンサン・コンパニ、ダビド・シルバという中心選手がチームを去ったシティは、新たなフェーズへの移行期間を迎えている。

 この試合では新加入のフェラン・トーレスと合流間もないルベン・ディアスが先発メンバーに名を連ねた。補強ポイントとされたポジションには才能溢れる若い選手が加わっており、戦力的に見ればプレミアリーグでリベンジを果たすための戦力を揃えている。しかし、短いプレシーズンと過密日程に負傷者の多さが重なり、戦術とケミストリーの構築ができていないのが不調の原因と言えるだろう。

 今季のプレミアリーグは群雄割拠だ。リバプールの強さは相変わらず、エバートンとレスターが好調で、昇格組のリーズが順位表を荒らしている。シティにとっては難しいシーズンの始まりとなったが、生みの苦しみと捉えることもできる。覇権奪回を達成するためには、この難局を乗り越えなければいけない。

(文:加藤健一)

【了】

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