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セリエA 4年前

ユベントス、ピルロ監督の“奇策”は…。ローマ戦ではまらず、C・ロナウドがいなければ負けていた

セリエA第2節、ローマ対ユベントスが現地時間27日に行われ、2-2のドローに終わっている。アウェイチームは何とか勝ち点1を拾ったが、おそらくクリスティアーノ・ロナウドがいなければ負けていただろう。苦戦を強いられた理由とは?(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

2節目にして早くもドロー

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【写真:Getty Images】

 アンドレア・ピルロ新監督が誕生したユベントスはセリエA第1節のサンプドリア戦で快勝を収めたが、第2節にして早くもブレーキを踏んでしまうことになった。現地時間27日、スタディオ・オリンピコに乗り込んだビアンコネロは、ローマと2-2の引き分けに終わっている。

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 ピルロ監督はこの日も3-5-2システムを採用してきた。最前線には先日加入が発表されたばかりのアルバロ・モラタがさっそく名を連ね、左ウイングバックにファン・クアドラード、右ウイングバックにデヤン・クルゼフスキという、少し予想外の配置となった。

 連勝スタートを切りたいユベントスだったが、前半はローマの守備に悪戦苦闘。5バックの穴を見つけられず、ボールは持つが、なかなか前進できないという時間が続いた。ローマは攻守の切り替えが早く、一度でももたつくとすぐに高い位置で捕まる。リズムを掴めなかった。

 ローマは良い守備からシンプルな攻撃に移るまでが非常にスムースで、シャドーに入ったヘンリク・ムヒタリアンとペドロ・ロドリゲスの縦への推進力というものがよく表れていた。彼らはスピードも水準以上にあるので、レオナルド・ボヌッチやジョルジョ・キエッリーニもうかつには飛び込めず、必然的にラインがずるずると下がる。11分の決定機は、その象徴的なシーンと言えるだろう。

 こうして悪い流れを断ち切れなかったユベントスは、31分にPKを献上し、これを決められた。44分にはクリスティアーノ・ロナウドのPK弾で同点に追いついたが、前半アディショナルタイムにローマに見事なカウンターを許し、最後はジョルダン・ヴェレトゥに勝ち越し弾を献上。リードを許したまま45分間を終えた。

 後半、ユベントスは退場者を出し、ローマに何度もビッグチャンスを作られたが、69分のC・ロナウドの得点で何とかスコアを振り出しに戻した。その後はお互いにスローペースとなり、得点は生まれず。そのまま終了の笛を迎えた。

 ローマは勝ち点3を奪うに相応しかった…いや、奪わなければならないパフォーマンスだった。対してユベントスは、勝ち点1で御の字、という内容だ。ピルロ監督は、C・ロナウドというスターに救われた。

ユベントスの「問題」

 データサイト『Sofa Score』による前半のスタッツを見ると、ユベントスは支配率64%を記録していた。しかし、シュート数はわずか3本で、これはローマの5本を下回っている。ユベントスはパスを前半だけで300本近く繋いでいたが、それが効果的だったかと言うとそうではなかったのが事実だ。

 この日、ユベントスの「問題」となっていたのがダブルボランチ。アドリアン・ラビオと今季より加入したウェストン・マッケニーだ。ビルドアップ面でもかなり苦労した印象が強かったが、守備でもなかなか相手を捕まえきれず、ギリギリでの対応を強いられることが多かった。

 ローマは2シャドーを置いており、ペドロとムヒタリアンはそれぞれマッケニーとラビオをつり出すこともできれば二人の距離を広げることもできる。そうして空いたスペースを効果的に使ってくるのが1トップのエディン・ジェコで、同選手は低い位置からボールを引き出しては前を向き、左右にパスを散らした。つまり、この時点でユベントスのダブルボランチは、自陣ゴールへ向いた状態でのプレーを強いられている。

 ユベントスは全体がかなり攻撃的で、ウイングバックのプレスバックが間に合わないことも少なくない。そのため、ローマのWB、とくにレオナルド・スピナッツォーラを使われるシーンがこの日は何度も目立った。そして、3バックの右に入ったダニーロは、必然的にキレキレのスピナッツォーラとの1対1を強いられる。分が悪かった。

 56分、決定機のシーンはまさにその形だった。ボールを持つペドロに対しラビオがつり出されると、その背後を突いたジェコにパスが通る。そこから左にボールが流れ、最後はその折り返しを受けたジェコがポスト直撃のシュートを放った。

 64分にも形は少し異なるがペドロが抜け出し、ジェコからダビデ・サントンと繋がって最後はまたジェコに決定機、という場面があった。ローマの“元プレミアリーガートリオ”をほとんど抑えられなかったのは、ユベントスにとって大きな痛手だったと言えるだろう。

ピルロ監督の“奇策”も虚しく…

アンドレア・ピルロ
【写真:Getty Images】

 また、結果論にはなってしまうが、ピルロ監督のクアドラードを左、クルゼフスキを右に置く“奇策”もハマらなかった。

 クアドラードは爆発的なスピードと攻撃力が魅力の選手だが、ローマ戦ではそうした良さが発揮されなかった。同選手はご存じの通り右利きであり、左サイドではプレーがやりづらそうな印象を受けた。縦への突破力も影を潜め、良い形で攻撃に絡むことができたのは数回あったかどうかだ。

 前節のサンプドリア戦で見事なコントロールショットを沈めたクルゼフスキは所々で良いアクションを起こしたが、よりプレーの選択肢を多く持つことができる中央に位置した方が脅威となることは確かだった。

 実際、この日2トップの一角で起用されたモラタはC・ロナウドとの連係が曖昧で効果的な働きをなかなか見せられなかったが、クルゼフスキが後半途中に最前線に入ると少し攻撃に可能性が出てきた。身長186cmの体躯を活かしたボールキープ、そこからパスなりシュートなりのアクションでスパイスを加えられるスウェーデンの逸材の今後の起用法が明確になったと言えるはずだ。

 ピルロ監督からすると、左に右利き、右に左利きの選手を配置したのはサイドに張るのではなく、より内側でプレーしてボールに絡めという意図。つまり、組み立てに積極的に参加しろ、という狙いがあったのかもしれない。だからこそ、ラビオとマッケニーはあまり前に出ず、WBが使うであろうスペースを残した、という考え方もできる。

 ただ、結果的に5バックを敷くローマを前にタッチライン際ギリギリまで開かざるを得ず、縦への抜け出しも必然的に回数が減ってしまった。WBが良い攻撃参加をみせたローマに対し、ユベントスは両WBが色を出せず。この差は大きかった。

「まだ組み立て中のチームであり、プレシーズンに多くのオプションを試す時間がなかったので、今後数試合で最適な形を見つけていきたい」とは試合後のピルロ監督のコメントだ。この言葉通り、まだユベントスは最適解を探り出している最中で、ローマ戦の選手配置も“今後の可能性を見つけるためのもの”と考えるのが妥当だろう。

 ローマ戦の結果は残念だったが、この試合から課題と収穫を絞り出し、次に繋げてほしいところだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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