新生バルセロナ、最高の船出
ロナルド・クーマン監督が就任したバルセロナは、8月にUEFAチャンピオンズリーグを戦った影響で、この試合が初陣となった。
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お馴染みの4-3-3から4-2-3-1へ布陣を変えたバルセロナは、立ち上がりから試合の主導権を握った。少ないタッチ数でボールを動かし、中央へ縦パスを入れる。ここでボールを失えば即座にプレッシングを開始してボールを回収。空いたサイドへボールを展開してアタッキングサードへ侵入した。
先制点は一瞬だった。クレマン・ラングレはDFラインの裏を取るジョルディ・アルバにパスを通す。ジョルディ・アルバがタッチライン際に侵入して折り返すと、アンス・ファティがゴールネットを揺らした。
先制点から約4分。またしてもラングレのパスが起点となる。自陣の深い位置でボールを受けたラングレはフィリッペ・コウチーニョに素早く縦パスをつける。コウチーニョは自陣からアタッキングサードまでドリブルで運び、ラストパスを受けたファティがゴールを決めた。
34分には中央でのパス交換から突破したファティが倒されてPKを獲得。これをリオネル・メッシが決めて点差を3点に広げると、前半終了間際にメッシのクロスをパウ・トーレスが痛恨のオウンゴール。前半で4-0となり、勝負の決着はついた。
「今日の前半は僕らが進むべき道だ」とファティが言った通り、新生バルセロナの指針となるような前半だった。
チャンスを生み出した久保建英
試合前、ビジャレアルを率いるウナイ・エメリ監督は自信を覗かせていた。どこまでが本心か分からないが、自分たちのクオリティを信頼して正攻法でバルセロナと対峙した。
しかし、その見立ては脆くも崩れ去った。バルセロナと同様に縦への指向が強い攻撃を展開したが、コンパクトな陣形を保てずに相手のカウンターを許した。2点目や4点目は守備への切り替えの遅く、スペースを突かれたことが原因だった。
ビジャレアルは負傷しているアルフォンソ・ペドラサ以外、エイバル戦と同じメンバーを起用。右サイドはサムエル・チュクウェゼで、久保はベンチスタートとなった。
久保がピッチに立ったのは74分。80分にはハーフスペースの深い位置に切り込んでチャンスを作る。その1分後には中央で運んで左サイドに展開し、グラウンダーのクロスをスルーして味方のフィニッシュにつないだ。試合終了間際には右サイドからカットインしてシュートを放ち、相手GKを襲っている。
「すべての試合で貢献してくれている」と指揮官もそのパフォーマンスに満足している。久保は攻撃を活性化し、大敗したチームの数少ないポジティブな要素となった。
久保建英の活躍、考慮すべきは…
右サイドで先発したチュクウェゼは、ディフェンス面で苦労する場面が目立った。相手の攻撃は左サイドを中心に展開されるため、低い位置でのプレーを強いられる時間が長かった。カウンターではスピードを活かしていたが、攻守が切り替わればスペースを空けることになってしまった。バルセロナの4得点はすべて左サイドを使って奪っている。
その点で見れば、久保はポジショニングに秀でている分、守備面での貢献度も高い。守勢に回る時間が長くなるバルセロナのような相手に対しては、チュクウェゼより久保の方が一日の長があるかもしれない。
しかし、手放しで称賛するのは果たしてどうだろうか。この試合で久保が投入されたとき、スコアは4-0で残り時間は20分を切っていた。バルセロナは無理に攻め急がず、ボールをビジャレアルに持たせる時間も長かった。自陣に引いて守るのは得意ではないが、点差を考えれば無理に奪い返す必要もなかったのだろう。ピンチは作られたが、大崩れしない戦いを選んでいた。
前半は40%だったビジャレアルのボール保持率は、後半だけ見ると40%台後半まで上昇した。敵陣でボールを持たせてもらえる環境があったからこそ、久保は自身の特徴を活かすことができた。久保のパフォーマンスは良かったが、試合状況を差し引きする必要はある。
チームはこの試合を含めた3連戦を戦い、インターナショナルマッチウィークを終えるとUEFAヨーロッパリーグのグループステージが開幕する。過密日程が始まれば、勝負の責任を負う場面で久保がプレーする機会も増えていくだろう。真価が求められるのはこれからだ。
(文:加藤健一)
【了】