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チアゴ加入から24時間も経たないうちに…
リバプールは現地時間18日、バイエルン・ミュンヘンからチアゴ・アルカンタラを獲得したことを正式に発表した。そして、そこから24時間も経過しないうちに、また新たな選手の加入を公表したのである。それが、ポルトガル代表FWのディオゴ・ジョッタだった。
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英『BBC』によると、契約期間は5年間。移籍金は4100万ポンド(約55億円)とされており、今後の活躍次第で最大400万ポンド(約5億円)の上乗せがあると伝えられている。背番号は昨季までアダム・ララーナが着用していた「20」に決まった。
1996年12月4日、父ホアキンと母イザベルの間にジョッタが誕生した。ちなみに「ジョッタ」とはニックネームであり、本名はディオゴ・ジョゼ・テイシェイラ・ダ・シルバである。
ジョッタは弟のアンドレ(現ファマリカンU-23チーム所属)とともに、ポルト大学がある場所などとして知られるポルト県マサレロスで育った。幼少期は「エバートンのプレーを観るのが大好き」だったという。リバプールファンからすると、少し複雑かもしれない。
2005年、ジョッタは地元のゴンドマールSCというクラブ(トップチームは現在3部所属の小さなクラブ)のユースチームに入団し、本格的にサッカーを始めた。そこで順調に成長を果たすと、2013年にパソス・デ・フェレイラの下部組織に移籍。次なるステップへと進んだのだ。
新天地でも着実に力をつけたジョッタは、2015年、当時18歳でプリメイラ・リーガデビュー。同年5月のアカデミカ戦ではリーグ初得点を含む2ゴールを挙げ、クラブの最年少得点記録を更新した。ちなみに、クラブ最年少得点記録を更新した試合で2ゴールを挙げたのは、当時スポルティングCPに所属していたクリスティアーノ・ロナウドも同じだった。
2015/16シーズン、トップチームでも主力に定着したジョッタは、リーグ戦31試合の出場で12得点8アシストという申し分ない成績を収めた。そして、同選手はそのシーズン終了後にアトレティコ・マドリードへ移籍。順調な歩みをみせていた。
しかし、スペインの地で活躍することは、残念ながらなかったのである。
リスクを承知でウルブス移籍
2016年、ジョッタはアトレティコでプレーするのではなく、母国ポルトへレンタルという形で加入することになった。1年目からコンスタントに出場機会を得ると、リーグ戦では27試合で8得点7アシストを記録。自身初の大舞台となったチャンピオンズリーグ(CL)でも奮闘し、チームのベスト16進出に貢献していた。
この活躍もあり、ポルトガル国内での評価も高まっていたという。しかし、ポルト側は高額な移籍金がネックとなり、ジョッタの買い取りには動かなかった。
2016年、ウォルバーハンプトンを中国の投資グループであるフォーサン・インターナショナル(復星国際)が買収し、大資本が投入された。そんなクラブに大きな影響を及ぼしたのが、敏腕代理人ジョルジュ・メンデス氏だ。
メンデス氏が代表を務める『Gestifute』は復星国際の大株主であり、クラブオーナー陣との関係は決して浅くない。イングランドでは第三者によるクラブ運営は禁止されているので、表面上は「メンデス氏はクラブでの役職を持たない」となっているが、実際はチーム作りにおいてメンデス氏が「助言」を行っているという。
実際、ウルブスはメンデス氏の顧客であるヌーノ・エスピリト・サントを指揮官として招聘し、今やプレミアリーグ屈指のMFとなったルベン・ネベスの獲得にも成功している。そして、その中の一人にジョッタの名もあった。
ただ、当時ウルブスは2部にいた。ネベスやジョッタはポルトガル国内でも将来有望な選手として注目されていたので、カテゴリーの落ちるチームへ移籍することに疑問を抱く人も少なくなかったという。
「ポルトガルでは、多くの人が僕たちの移籍を理解していなかった」とはジョッタの言葉だ。同選手は続けて「もちろん、プレミアリーグに到達するための近道ではないのでリスクもあった」とも話している。
しかし、ジョッタはこの移籍が正しかったとすぐに証明。加入1年目から主力としてプレーすると、リーグ戦44試合に出場して17得点6アシストという成績を収めた。チーム内得点王に輝き、念願のプレミアリーグ昇格&チャンピオンシップ優勝を手にしたのだ。
ジョッタはその後、世界最高峰のリーグと称されるプレミアリーグでも奮闘。「僕は10歳から英語を学んだ。多くの言葉はわからないけど、自分を表現し、日々理解し合うことができている」と異国の地で順調な時を過ごし、ポルト時代にも指導を受けたヌーノ監督の下で、ヨーロッパリーグ(EL)出場権獲得やEL本戦でのベスト8進出といった躍進を支えた。そして、ポルトガル代表にも招集されるようになった。
そして今月、リバプール移籍が決定。「世界でも最高のチームの一つ。現時点でベストだ。このクラブは世界王者なんだから。プレミアリーグをみても、リバプールはこの国最大のチームの一つとして認識されてきた。ノーとは言えないよ」と喜びを露わにした。
そのプレースタイルは?
そんなリバプール期待の新戦力であるディオゴ・ジョッタは、サイド、トップ、そしてトップ下をこなす攻撃のオールラウンダーだ。その中で最も力を発揮できるのは、左サイドだろうか。そのため、今後しばらくはサディオ・マネのバックアッパーということになりそうだ。
ジョッタはスピードも水準以上にあり、左右両足の力強さがあるなど、フィニッシャーとしても優秀だ。ドリブルもうまく、高度なテクニックを駆使するよりも緩急を巧みに使って相手を剥がす。ただ、どちらかと言うと個人よりも味方とのコンビネーションプレーからチャンスを作り出せる選手だ。
実際、DFラインの背後を突くフリーランニングの質は、プレミアリーグ屈指と言っても過言ではないほど高い。ウルブスの攻撃が円滑に機能していたのは、この男の働きが大きかったとみてもいいだろう。リバプールではウイングを活かす能力に長けるロベルト・フィルミーノとの連係に期待できる。
ジョッタは身長178cmと特別大柄な選手ではなく、見た目もそれほどガッチリしているわけではないが、重心の低いドリブルが特徴的で、体幹がかなり強い。少しの当たりではまったく倒れないし、難しい体勢からでもしっかりとシュートを飛ばすこともできる。よりフィジカルコンタクトの激しくなるペナルティーエリア内でも的確にボールを扱うなど、常に冷静なプレーを発揮できる点も魅力だ。
そしてこの男、とにかくよく走る。攻撃面ではもちろん、守備も決してサボることがない。ゲーゲンプレスと称されるインテンシティーの高いサッカーをベースとするリバプールでも、ジョッタの献身性はかなり光ることだろう。
4-3-3をベースにするリバプールでは、先述した通り左サイドが主戦場となるはずで、場合によっては1トップ、あるいは右サイドでの起用も十分に考えられる。いずれにせよ3トップのバックアッパー、とくに負担の大きかったマネの控えとしては相当頼もしい選手だ。
また、今季より採用頻度が増えそうな4-2-3-1の場合は、こちらも左右両サイドと1トップ、そしてトップ下もプレーエリアの選択肢に入ってくることは確実だ。同じく前線の幅広い場所で起用できる南野拓実のライバルリストから“完全”に除外することはできない。
ただ、今後ジョッタはサイド起用が中心、南野は中央での起用が中心となる可能性も決して低くはない。対応できるポジションは被っているが、ユルゲン・クロップ監督の中ではすでにこの二人の起用方法というものを分けている、という見方もできるだろう。
確実に言えるのは、リバプールにとって大きな補強になったということだ。ジョッタの世界王者での新たな冒険に、注目していきたい。
(文:小澤祐作)
【了】