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Jリーグ 4年前

首位独走のフロンターレに刺客は現れるか? セレッソ、グランパス、FC東京、アントラーズ、後半戦の注目は…【週刊J批評】

明治安田生命J1リーグは第17節が終了し、多くのクラブが全日程の半分を消化した。順位表では川崎フロンターレが首位をひた走り、セレッソ大阪やFC東京、鹿島アントラーズや試合消化が少ない名古屋グランパスが続いている。引き続き過密日程で行われる後半戦で、2位以下のチームは川崎Fの刺客となれるか。前半戦を振り返りつつ、後半戦のポイントを探る。(文:河治良幸)

シリーズ:週刊J批評 text by 河治良幸 photo by Getty Images

驚異的な川崎Fの強さ

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【写真:Getty Images】

 イレギュラーな過密日程が続いている明治安田生命Jリーグだが、J1はシーズンの折り返しとなる17節を終えた。AFCチャンピオンズリーグに参加している3クラブとその対戦相手は先に第24節の試合を済ませた一方で、新型コロナウイルスの影響で活動が一時休止となっていたサガン鳥栖は14試合しか消化していないなど順位表も暫定的だが、ここで前半戦を振り返りたい。

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 誰の目にも明らかなのは川崎フロンターレが勝ち点47という結果が表す通りの内容で首位を走っていること。単に“好調”という言葉では片付けられないレベルのパフォーマンスを維持しており、技術・戦術・選手層とほぼ隙がない戦いで、15勝2分1敗という圧倒的な成績を残している。

 得失点差を見ても55得点16失点という数字は驚異的で、後半戦も順調なら優勝した2017年の71得点、2018年の57得点を大幅に上回りそうだ。圧倒的な得点力に目が行きやすいが、攻守のセットプレー、リスタートで隙を見せず、相手の隙を突くなど、ディテールまでチームとしての意識が行き届いていること、そして怪我の少なさなど、目立たないところでもライバルを上回っている。

 選手も家長昭博や大島僚太、小林悠などが中心的な働きをしているのは確かだが、それも強いてあげればの話で、GKチョン・ソンリョンからDFの谷口彰悟とジェジエウ、中盤の守田英正、脇坂泰斗、新加入ながら右サイドバックの主力に定着した山根視来など、あげたらキリがない。ブレイク中の三笘薫もそうした強固なベースにうまく乗る形で持ち味を出している。何よりスタメンとサブが入れ替わってもパフォーマンスが大きく落ちないことが、コンディションの維持にそのままつながっていることも見逃せない。

 今後もっとも怖いのは怪我が重なることで、いくら選手層が厚いと言ってもベンチ入りメンバーのところを超えてくると難しさは出てくる。当然、対戦が一巡したので、2度目は相手もこのまま黙ってはいないだろう。前半戦で良かったチームが後半戦もそのまま良かった事例がほとんど無いのがJ1という舞台だ。それにしても2位セレッソ大阪に勝ち点8の差を付け、3位以下をさらに引き離していることは大きなアドバンテージになることは間違いない。

 過去には2007年に鹿島アントラーズが浦和レッズとの勝ち点10差を逆転して優勝し、三連覇への足がかりを掴んだ事例があり、川崎も2017年に初優勝を果たすまで何度も終盤戦で煮え湯を飲まされてきている。その意味で油断は大敵だが、1つ1つ勝利を積み重ねていく裏付けになるクオリティがあるので、自分たちからバタバタと崩れることは考えにくい。そうなると川崎Fを追いかけられるチームは早くも絞られてきたと見るのが妥当だ。

セレッソ大阪の生命線は…

 その川崎とは対照的に接戦を粘り強く勝ち点3につなげて2位につけているのがセレッソだ。2年目となるミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の戦術が浸透し、守備はオーソドックスな4-4-2のブロックを構築しながら、どれだけ攻め込まれてもバイタルエリアを空けない組織的な守備が徹底されている。マテイ・ヨニッチを軸としたセンターバックの跳ね返し力はリーグ随一の強さで、確固たる守備力が生命線となっている。

 攻撃面では試合の状況に応じた速攻と遅攻の使い分け、攻守のバランスのマネージメントなどが抜群で、接戦に見えてもゲームコントロールの部分でセレッソが上回っていることが1点差勝ちの多さにつながっていると言える。

 ボランチの藤田直之とレアンドロ・デサパトが攻守両面で効いていることに加えて、右の坂元達裕と左の清武弘嗣というキャラクターが全く異なる両サイドハーフの働き、目立たないがほとんどの得点に絡んでいる奥埜博亮の存在など、役者は揃っている。川崎と同じく主力に怪我が少なかったことも安定した成績の要因だろう。

 ただ、そういう流れからリーグ戦の折り返しとなる試合で鹿島アントラーズに1-2と競り負けたのは、川崎Fを追いかける立場としても非常に痛い。

 3位のFC東京は主力の東慶悟が長期の離脱、橋本拳人がロシアのロストフ、室屋成がドイツのハノーファーに移籍するなど、過密日程の中で危機的な状況に陥るも、内田宅哉や中村拓海、原大智など生え抜きの若手選手がポテンシャルを発揮して、チームが活性化された。

 従来の主力が健在だった場合にどれだけ勝ち点をあげられていたのか考えても仕方ないが、さらに過密日程の度合いが増す後半戦やACL、さらに来季以降も見据えれば有意義な期間になっている。

名古屋と鹿島の反転攻勢に期待

 4位の名古屋グランパスは新型コロナウイルスの影響で活動休止や選手の離脱を経験しながら、ハードワークをベースに、堅守からのサイドアタックを中心とした戦いで上位をキープしている。

 過密日程の厳しいシーズンが続くが、涼しくなって攻守の強度を再び取り戻すことができれば反転攻勢も期待できる。名古屋のキーマンは阿部浩之だろう。ディフェンスの間に顔を出し、ハードワークの中にクオリティとアクセントを加えることができる。誰が出てもチームの戦い方ができることを主張するマッシモ・フィッカデンティ監督も、経験も豊富な司令塔の存在を唯一無二のキャラクターとして認める。

 上位争いに関して注目したいのは鹿島アントラーズ。当初は新しいチームスタイルの構築途上で自分たちからミスを繰り返して失点を招くなど、なかなかうまく行かない状況が続き、就任1年目のザーゴ監督に対する風当たりも厳しくなっていた。しかし、徐々にチームがうまく回り出し、最近は6連勝。しかも、その中にはFC東京、名古屋、セレッソ大阪という上位との対戦も含まれている。

 強みは新外国人のエヴェラウドが期待通りの得点力を発揮していることだが、そこに至る組み立てやゴール前に多くの選手が関わるフィニッシュまでの流れ、ボールを失った場合も想定したリスク管理のポジショニングなど、攻守のバランスが非常に高い。ディフェンスも無失点の試合こそなかなか無いものの、攻撃にかけるパワーの割に安定している。

 すでに川崎Fとの勝ち点差は17で優勝まで届くのは極めて難しいが、それすら貪欲に狙っていく空気感を作れるサポーターも付いているので、最後まで諦めることなく1つ1つ勝ち点3を積み重ねていった結果、どこまで迫れるのか、来シーズンのACL出場権も睨みながら注目していきたい。

 さらに前回王者の横浜F・マリノス、サンフレッチェ広島、ヴィッセル神戸などが思うように勝ち点を伸ばせていない状況で、昇格組の柏レイソルが勝ち点27の6位に付けている。

 得点王争いの首位をひた走るオルンガの存在は心強い限りだろうが、江坂任などを中心にカウンター主体ながら多彩な攻撃を繰り広げている。その一方でセンターバックにけが人が多発し、一時は危機的な状況に陥ったが、3バックをベースに何とか耐え抜き、山下達也が復帰するなど明るい話題も。東京五輪代表候補の古賀太陽など、タフな戦いの中で成長を見せる若手のパフォーマンスは後半戦の注目ポイントだ。

 中位以下のチームでは大分トリニータに注目したい。誰でもわかるタレントはいないものの、選手のやりくりの中で、片野坂知宏監督が新加入の選手も含めて戦力を掌握しつつあり、徹底した相手のスカウティングをベースに戦うチームだけに、2回目の対戦で上位相手にあっという戦いぶりで勝ち点3をもぎ取る試合も出てくると予想している。

(文:河治良幸)

【了】

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