ビジャレアルは今季初勝利
岡崎慎司が所属するウエスカと久保建英のいるビジャレアルの開幕戦に続いて、日本人対決が実現した。乾貴士とニューカッスルから期限付き移籍で加入した武藤嘉紀が所属するエイバルは、ビジャレアルのホームに乗り込んでいる。
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試合はお互いの特徴が前面に出た試合となった。ボールを保持するビジャレアルは、中盤のダニエル・パレホを中心に積極的に縦パスを入れて攻撃を展開する。対するエイバルもそれを防ぐように高い位置から4-1-4-1の形でプレッシャーをかけた。ボールを奪うとサイドチェンジとクロスボールを駆使して、手数をかけず相手ゴールに迫っている。
ビジャレアルは相手のプレッシャーをうまくかわしながら、何度かチャンスを作った。4分にモイ・ゴメス、9分にジェラール・モレノがゴールネットを揺らした。しかし、どちらもオフサイドをとられてゴールは認められず。前半はスコアレスで折り返した。
試合が動いたのは50分。エイバルがセンターサークル付近でボールを奪うと、乾を経由してエドゥ・エスポジトのスルーパスが1トップのキケ・ガルシアに通る。飛び出してきたGKセルヒオ・アセンホをファーストタッチでかわし、左足でゴールに流し込んだ。
先制したエイバルに襲い掛かったのは、キックオフ時点で30度を記録した暑さだった。生命線のハイプレスが徐々に機能しなくなると、それをビジャレアルは見逃さなかった。左サイドからのクロスを大外のサムエル・チュクウェゼがダイレクトで折り返す。ジェラール・モレノが鋭い切り返しから右足を振り抜いた。
エースの2試合連続ゴールで試合を振り出しに戻したビジャレアルは攻撃の手を緩めなかった。ジェラール・モレノのスルーパスに抜け出したパコ・アルカセルが、GKをかわしながらゴールに流し込んだ。71分に逆転したビジャレアルは最少得点差を守り、今季初勝利を挙げている。
効果的だった乾貴士のプレー
乾はこの試合に左サイドハーフとしてフル出場した。見せ場は21分に訪れた。味方GKのパントキックを右足のアウトサイドでトラップ。自らドリブルで運んでペナルティーエリアに侵入したが、シュートはGKに防がれてしまった。
乾は左サイドでプレッシングのスタート地点になりつつ、攻撃では相手の右サイドバックの裏を取る動きでチャンスを作った。得意のカットインからシュートを放つ場面もあったが、ゴールにはつながらず。それでもビジャレアルを相手に効果的な働きを見せていた。
加入から間もないこの試合で武藤はベンチに入ったが、出場機会は回ってこなかった。しかし、ホセ・ルイス・メンディリバルは「昨年の1月から欲しかった」というように指揮官の評価は高く、そのプレースタイルもエイバルにフィットするはず。近いうちに必ずチャンスは訪れるだろう。
久保がピッチに入ったのは、2-1とリードした85分だった。チュクウェゼとパコ・アルカセルに代わってマヌ・トリゲロスとともに投入されると、ビジャレアルは4-4-2から4-3-3への布陣を変更。トリゲロスは中盤に入り、久保は右ウイングでプレーしている。
88分に右サイドでボールを受けると、相手をかわしてタッチライン際をドリブルで運んだ。ゴール前にグラウンダーのボールを入れたが、詰めていた3人には合わず。92分には新加入のペルビス・エストゥピニャンからのグラウンダーのクロスを受けて、ラストパスを供給。しかし、ジェラール・モレノのシュートはGKに防がれた。
久保は短い時間で2度のチャンスを演出した。ボールタッチが少なかったのは、守備の時にあまり下がらずに対面のサイドバックをピン止めするタスクがあったため。その影響もありエイバルは間延びし、攻撃は単発に終わっていた。戻って守備をするのはできるが、戻らない方が効果的な場面がある。リードしたチームとしては攻撃面の活躍よりも、このポジショニングが利いていた。
今の久保建英に必要なのは…
久保はボックス内でラストパスやシュートに絡むタスクが与えられている。マジョルカでやっていたワイドに開いてゲームメイクをサポートするような役割は求められていない。ボールタッチの数は必然的に少なくなるが、この試合のようにフィニッシュにかかわる仕事で結果が求められることになる。
ビジャレアルはライン間でボールを受ける動きが攻撃の基本になっている。FWのジェラール・モレノはセンターバックとMFの間にポジションをとり、両サイドハーフのモイ・ゴメスとチュクウェゼはインサイドに絞る。近い距離でプレーする3人がうまく前を向いた状態でボールを受けることができれば、空いたスペースを駆け上がる両サイドバックや、DFラインの裏を取るパコ・アルカセルにボールが通る。逆転ゴールのシーンはまさにその狙っていた形が結果につながったと言える。
試合前の会見でウナイ・エメリ監督が言っていたように、今の久保に必要なのはチームへの適応であり、そのためのプロセスを踏んでいる。足りないのは時間だが、闇雲にプレータイムを与えればいいというものではない。若手抜擢に定評がある指揮官は起用法を貫いている。
プレーさせるべきと周囲が騒いでも、指揮官は久保をプレッシャーから守りながらプレーさせていくだろう。久保に対する周囲の期待は大きいが、我慢の時間は少し続くかもしれない。
(文:加藤健一)
【了】