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リバプールに加入、チアゴとは何者か? まさに優勝請負人、グアルティオラの愛弟子をクロップはどこで起用するのか?

リバプールは現地時間18日、バイエルン・ミュンヘンからチアゴ・アルカンタラを獲得したことを発表した。今季の欧州王者から昨季の王者への移籍を決断したチアゴとはどのような選手なのか。そして、欧州とプレミアリーグで頂点に立ったリバプールではどのように起用されるのか。チアゴの生い立ちとプレースタイルを紹介するとともに、リバプールでの起用法を予想する。(文:加藤健一)

シリーズ:○○とは何者か? text by 加藤健一 photo by Getty Images

リーグ優勝を逃したのは1回

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【写真:Getty Images】

 リバプールは久しぶりにワールドクラスの選手をチームに迎えた。2018年1月にフィルジル・ファン・ダイク、その年の夏にアリソン、ナビ・ケイタ、ファビーニョを獲得。以降は大金を費やす補強は控えていたが、プレミアリーグを制覇したチームは新たな血を入れる決断を下した。

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 チアゴ・アルカンタラはこれまで、所属クラブの黄金期を支えてきた。トップチームデビュー以降、チームが優勝を逃したのは11/12シーズンの1回しかない。バルセロナでは4度、バイエルンでは7シーズンすべてでリーグ制覇を経験。両チームでUEFAチャンピオンズリーグ(CL)も優勝している。20代でチアゴほどタイトルを獲得した選手はいないのではないだろうか。

 誰よりもタイトルを知る男は1991年にイタリアで生まれた。父はブラジル代表でもプレーしたマジーニョで、チアゴが生まれたときはセリエAのレッチェでプレーしていた。現在バルセロナでプレーする弟のラフィーニャはその2年後に誕生。マジーニョはその後ブラジルに戻り、スペインを経てブラジルで現役を引退している。

 少年時代をスペインとブラジルで過ごしたチアゴは、14歳のときにバルセロナのカンテラ(下部組織)に加入した。チアゴは順調にカテゴリーを上げていき、08/09シーズンにトップチームでのキャリアをスタートさせている。

恩師を追ってドイツへ

 08/09シーズンはペップ・グアルディオラがバルセロナの指揮官に昇格したシーズンだった。バルセロナは第34節に6-2という圧倒的なスコアでレアル・マドリードとのエル・クラシコを制すと、第36節を戦う前日にレアルが敗れてバルセロナの優勝が決定。チアゴはその消化試合となったマジョルカ戦でデビューを飾った。

 このシーズンに出場したのはこの1試合で、初ゴールをマークしたよくシーズンも出場は1試合のみ。このときのバルセロナはセルヒオ・ブスケッツ、アンドレス・イニエスタ、シャビ・エルナンデスが中盤に君臨し、ヤヤ・トゥーレやセイドゥ・ケイタが控えていた。

 12試合に出場した10/11シーズンが足掛かりとなり、チアゴは徐々に居場所を見つけていく。11/12、12/13シーズンはともに27試合に出場。しかし、セスク・ファブレガスも加わった中盤の選手層は厚く、バルセロナでは途中出場やターンオーバー要員の域を脱することはできなかった。

 転機が訪れたのは13年の夏。バイエルンの監督に就任したグアルディオラに請われて活躍の場をブンデスリーガに移した。しかし、ドイツで待ち構えていたのは怪我との戦いだった。

 初先発となった8月24日の試合で足首の靭帯を断裂する怪我を負った。2か月弱で復帰したものの、そのシーズンの終盤に今度は右膝の内側側副靭帯を部分断裂してしまう。1度は練習に復帰したものの、負傷が再発したため手術。復帰にはトータルで約1年を要する大怪我となった。

 15/16シーズンは加入後初めて大きな怪我なく戦ったが、ブンデスリーガで先発したのは16試合のみ。このシーズン限りでグアルティオラは退任している。バルセロナで自身の実力を見出し、バイエルンに迎え入れた恩師の下で、チアゴは主力としてプレーすることはできなかった。

 その後もたびたび怪我でチームから離れたが、カルロ・アンチェロッティ、ユップ・ハインケスといった名将からも重宝されている。今季もニコ・コバチと、その後を継いだハンス=ディーター・フリックの下で重要な存在となり、自身にとっては9シーズンぶりとなるCL制覇に貢献した。

プレースタイルは? 起用法は?

 ボールテクニックに優れるチアゴは、相手のプレッシャーを剥がしてボールを運ぶプレーを得意としている。キックの精度も高く、縦パスやスルーパスでチャンスを生み出す。そんなチアゴに関わる最大のトピックは、リバプールでの起用法だろう。

 リバプールはプレシーズンから4-2-3-1をこれまで以上に積極的に試している。その場合、チアゴはダブルボランチの一角でプレーすることになるだろう。バイエルンでもこのポジションでプレーしていることも含め、チアゴが最も活きるのはおそらくこのポジション。リバプールがチアゴ獲得を念頭に入れていたとすれば、このシステムをプレシーズンから積極的に用いていたことにも合点がいく。

 一方で、基本の布陣となる4-3-3ではどうだろうか。インサイドハーフにはジョーダン・ヘンダーソンとジョルジニオ・ワイナルドゥムに加え、ベテランのジェームズ・ミルナー、アレックス・オックスレイド=チェンバレンがいる。

 昨季終盤から評価を高めているナビ・ケイタはレギュラーに割って入る勢いがあり、19歳のカーティス・ジョーンズも伸びしろを多分に残している。オックスレイド=チェンバレンやジョーンズはFW、ミルナーはサイドバックとしても起用できるが、他のポジションに比べても人材が豊富にいるだけに、インサイドハーフの補強としては疑問が残る。

 そこで考えられるのはファビーニョがプレーするアンカーのポジションだ。ヘンダーソンやミルナーもこのポジションでプレーできるが、本職はファビーニョ1人。さらに、今季のファビーニョには新たな役割が課されることが予想されている。

 デヤン・ロブレンがこの夏にチームを去ったため、センターバックはフィルジル・ファン・ダイク、ジョー・ゴメス、ジョエル・マティプに加えて、シュトゥットガルトから復帰したナサニエル・フィリップスの4人。18歳のセップ・ファン・デンベルフや17歳のビリー・コウメティオはあくまで将来の選手で、現時点ではファビーニョがセンターバックの4番手として考えられている。ゴメスやマティプは負傷が多いため、ファビーニョがセンターバックで起用される機会は少なくないだろう。アンカーにチアゴを起用するというアイデアは、リバプールの問題点を解決するものになるだろう。

課題は守備?

 ビルドアップの際にディフェンスラインの近くでボールをさばく役割は、チアゴがバイエルンで任されたものと同じで、配球力という点ではファビーニョと遜色ない。高さでは分が悪いが、オープンプレーでは、そこまで穴にはならないと見ている。

 ゲーゲンプレスと称されるインテンシティが高いリバプールのサッカーにチアゴがフィットできるか、という懸念があるようだ。しかし、フリック監督就任後のバイエルンはリバプールに肩を並べるほどのハイプレスを選手に課しており、チアゴも例外なくその仕事を遂行していた。

 昨季のブンデスリーガで記録したデュエル勝率は57.8%で、同じポジションのヨシュア・キミッヒ(同53.3%)、レオン・ゴレツカ(同47.8%)を上回る。さらに、空中戦勝率では189cmのゴレツカを約1ポイント、地上戦勝率では守備に定評があるキミッヒを6ポイント近く上回っている。

 守備に不安があるというのはあくまで印象でしかなく、守備でも十分に貢献できるというのがデータには表れている。フィジカルコンタクトでは分が悪いかもしれないが、チアゴは鋭い読みや的確なポジショニングでそれを補っている。

 チアゴがプレミアリーグで活躍するに十分な能力を持っていることは間違いない。しかし、最初の数か月でそれを判断してはいけない。開幕後に加入することを考慮すれば、いくら経験豊富なチアゴといえど、新天地にすぐにフィットするのは容易ではないだろう。

 そして、異国からやってきた選手の適応に時間がかかるのがプレミアリーグであり、それに輪をかけるように慎重を期すのがクロップのやり方である。ファビーニョは開幕から2か月、アンドリュー・ロバートソンは4か月かけてレギュラーに据えている。

 さらに、リバプールはここ数年、冬に怪我人が続出している。過密日程に拍車がかかる12月までに徐々にチームに慣れていけばいい。クロップはそう想定していると考えるのが自然だ。

 恩師のグアルティオラをして「プレミアリーグで成功することは間違いない」と言わしめるチアゴが、リバプールで活躍できるだけの実力を持っていることに疑いの余地はない。そして、その経験値はチームに多くのものをもたらすだろう。タイトルを獲り続けてきた男の加入は、リバプールの黄金期が今後数年間に渡って続くことを意味しているのかもしれない。

(文:加藤健一)

【了】

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