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リバプール、補強必須のポジションは? 出遅れれば大ダメージの可能性も…【プレミアBIG6補強戦略(4)】

今夏は昨年までの移籍市場とは状況が違う。新型コロナウイルスの影響で、財政難に苦しむクラブが多く、売りたいチームが多い一方で、買い手側のクラブで資金が潤沢なのはごく一部。そのため多くの交渉が非常に難しい状況になっている。あるいは資金を準備できず、トレードでの移籍も増えそうな夏でもある。一方で補強の動きを止めれば、チームの新陳代謝が止まってしまう。各クラブ工夫を重ねて強化を成功させようとしている。そんな特別な夏におけるプレミアリーグBIG6の補強はどうなっていくのだろうか。今回はリバプールを解説していく。(文:プレミアパブ編集部)

シリーズ:プレミアBIG6補強戦略 text by プレミアパブ編集部 photo by Getty Images

チーム状況

リバプール
【写真:Getty Images】

 今夏のリバプールの動きは近年の中では最も静かと言える。コロナウイルスによる財政悪化は、プレミア王者と言えども例外なく大きな打撃を受けている。加入間近と言われていた当時ライプツィヒに所属していたドイツ代表FWティモ・ヴェルナーの獲得を急遽見送る決断を下している。

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 もちろん、2020年1月に開催予定だったアフリカネーションズカップが1年延期となり、モハメド・サラーや、サディオ・マネが大会のためにチームから離脱することもなくなったため、代替選手を確保する優先度が下がった背景もある。とはいえ財政的に苦しいのも確かなのだ。

 しかしリバプールはオーナーへの助けを求めない模様だ。米メディア『The Athletic』によると、今季に関してはFFPに関して、オーナーからの資金投入に関するルールが緩和される可能性がある。ただリバプールは、所有元のフェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)の資金力には頼らず、クラブの資金のみで経営していく方針のため、その手段に頼ることはなさそうだ。

 このことからも今夏の大型補強はなさそうだ。新たな血を加えることよりも現有戦力の維持、熟成に重きを置く可能性がある。冬にザルツブルグから加わった南野拓実が適応し、レンタルバックでクラブへ戻ってきた選手たちのフィットが実質の補強となるか。もし大物選手を一人でも引っ張って来られれば、それはかなりよく出来たほうと言えるだろう。

監督の方針

ユルゲン・クロップ
【写真:Getty Images】

 ユルゲン・クロップ監督は、リーグ王者とFAカップ王者が激突するシーズン初戦のコミュニティ・シールドで、お馴染みとなっている4-3-3のフォーメーションを採用して試合に臨んだ。

 しかしオプションとして後半途中からエジプト代表FWモハメド・サラーを最前線に置き、トップ下にフィルミーノを配置する4-2-3-1のシステムも試している。なお日本代表FW南野拓実はこのシステムの左ウイングとして出場している。左SBのスコットランド代表DFアンドリュー・ロバートソンが高い位置をとるタイプのため、南野は好みの中央のエリアでプレーしており、見事得点も決めた。

 試合は1-1-で終わり、延長戦のPKで惜しくもチームは破れたが、チームとしては実りも多い一戦になったはずだ。

 いずれにしても、今季は少し変化を加えていきたいところだ。一昨季にチャンピオンズリーグ、昨季は念願のプレミアリーグで優勝を成し遂げた。ビッグタイトルは既に獲得済みであるため、今季はモチベーションの維持のためにも、新陳代謝を図るためにも、何かしらのチャレンジが必要なのだ。

退団が決まった選手、予想される選手

 そんな中、シーズン終了後に長年チームを支えてきたベテランの2人、元イングランド代表MFアダム・ララーナとクロアチア代表DFデヤン・ロブレンがそれぞれプレミアリーグのブライトン、ロシアのゼニトへと移籍しクラブを去ることとなった。

 両選手とも近年は控えに回ることが多かったが、不満を述べることなく出場した試合では自分の役割をしっかりと果たしクラブに貢献してきた。特にロブレンはロッカールームでの存在感も大きく、兄貴分のムードメーカーとしても重要な存在だった。両者ともに円満の別れとはなったがリバプールとしては頼もしい存在を失うこととなった。

 他にはレンタル期間を終えクラブに戻ってきた選手達の去就に注目が集まる。ボーンマスから復帰したウェールズ代表FWハリー・ウィルソンは、昨季リーグ戦31試合出場7ゴールと活躍を見せたが、現在のリバプールのスカッドに食い込むにはもう少し成長は必要そうだ。強いキックは魅力だが、ゴールから遠い位置では違いを作ることが難しく、FK以外の武器を磨く必要がある。少なくとももう一年のレンタルは必要か。

 一方でスウォンジーから復帰したFWライアン・ブリュースターについては意見が分かれる。冬にローンでチャンピオンシップに所属するスウォンジーへと移籍すると22試合で11ゴールをあげる急成長を見せ、リバプールへと復帰したプレシーズンの試合でもゴールを決めるなど存在感を見せている。再度レンタルで武者修行に出る可能性もあるが、今のチームに純粋なストライカータイプの選手は少ないため、状況次第で攻撃のオプションとしてクロップ監督の構想に入る可能性は十分にあるはずだ。

 主力選手でいうと、オランダ代表MFジョルジニオ・ワイナルダムに対し、前オランダ代表監督のクーマンが就任したバルセロナが獲得を熱望しているとスペインの複数のメディアが報じている。2021年夏には契約満了となる29歳のハードワーカーは、現在も欠かせない選手ではある一方で、現段階では契約延長の話が進んでおらず、予断を許さない状況になっている。

補強が必要なポジション

 ロブレンが移籍したことにより、CBの層が手薄となっている。現状、戦力として数えられるのは軸となる絶対的存在のオランダ代表DFフィルジル・ファン・ダイク、その相方を務めるイングランド代表DFジョー・ゴメス、元カメルーン代表DFジョエル・マティブの3人だ。

 しかし、ゴメスとマティブは怪我が多くシーズン通しての出場が必ずしも見込めない状況を踏まえると、新シーズンも数多くの試合を控えるリバプールとしてはもう一枚CBの実力者を補強したいところだ。

 そのロブレンの後釜としてスペインのベティスに所属するアルジェリア代表DFアイサ・マンディへオファーを出したとの報道が挙がっているが現時点では進展はみられていない。このままだと、場合によっては、アンカーのファビーニョをCBで使うことになる。

 そして、もしクロップ監督が戦い方を変えて4-2-3-1を採用する場合は、これまでのハードワーカー型とは少しタイプの違う中盤を加えてもいいかもしれない。

獲得が決まった選手、噂になっている選手

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【写真:Getty Images】

 左サイドバック、ロバートソンのバックアップの枠に、当初はノリッジの北アイルランド代表DFジャマル・ルイスを狙っていた。しかし米メディア『The Athletic』によると、移籍金の折り合いがつかず断念。一ターゲットを変更しオリンピアコスからギリシャ代表のDFコスタス・ツィミカスを1175万ポンド(約16億6000万円)で獲得した。

 なお現時点で、唯一の加入選手であるツィミカスは、足元の技術に自信があるタイプで、攻撃参加での貢献が可能ではあるものの、小柄で線が細くプレミアリーグにフィットするのに時間がかかるかもしれない。隣でプレーするのはワールドクラスのCBファン・ダイクであることを考えると、多少のミスはカバーしてもらえるとはいえ、一日も早いフィットが求められる。

 さて獲得の噂でいうと、今夏のリバプールのメインターゲットとして噂に挙がっているのが、先日CLを制しバイエルンミュンヘンの3冠達成に大きく貢献したスペイン代表MFチアゴ・アルカンタラである。

 チアゴはバイエルンとの契約を2021年まで残しているものの、本人が新たな挑戦を臨んでいるとされ退団が濃厚とされている。バイエルン側も適切なオファーがあれば移籍を容認する姿勢を見せており、独紙『Sport Bild』によると3000万ユーロ(約38億円)を要求しているとのこと。リバプールがこの要求額を用意できるのかが焦点となる。

 チアゴはパスでリズムを作ることができる選手で、今のリバプールにはいないタイプだ。同じく中盤でプレーする主将のイングランド代表MFジョーダン・ヘンダーソンとイングランド代表MFアレックス・オックスレイド=チェンバレンが怪我がちなことや、元イングランド代表MFジェイムズ・ミルナーの年齢を考慮しても、獲得することができればより盤石なスカッドを組むことができることになるだろう。

 CBに関してはセビージャのブラジル人CBジエゴ・カルロスなど、大物選手獲得の噂は上がっているものの、現段階では噂以上のレベルではない。もしかするとこの夏は、CBが手つかずで終わるかもしれない。

最後に

 今夏の移籍市場は、他のクラブを尻目に大型補強を進めているチェルシーを筆頭に、昨シーズン2位のマンチェスター・シティも的確に実力者を補強しており、リーグのタイトルを争うライバル達は着々と戦力を整えている。確かに移籍市場では大きく出遅れているのが、昨季の主力メンバーは全員揃っている。控えの層がやや薄い印象はあるが変わらず優勝争いをする可能性は高い。

 とはいえ新陳代謝は少し遅れると、チームに大きなダメージを与えることも間違いない。財政的に苦しい状況であることは理解できるが、なんとか新しい血を加えていきたいところでもある。

(文:プレミアパブ編集部)

【了】

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