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チェルシーが120億円を費やすカイ・ハフェルツとは何者か? 試練を乗り越え17歳でレバークーゼンの主力に、そのプレースタイルは?

チェルシーは現地時間4日、レバークーゼンからカイ・ハフェルツを獲得したことを発表した。チェルシーはボーナスも含めて総額1億ユーロ(約120億円)とも言われる移籍金を費やしたと報じられている。17歳からレバークーゼンでレギュラーを張るハフェルツはどのような選手なのか。ハフェルツの生い立ちをたどるとともに、プレースタイルを紹介していく。(文:加藤健一)

シリーズ:○○とは何者か? text by 加藤健一 photo by Getty Images

11歳でレバークーゼンに加入

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【写真:Getty Images】

 21歳のカイ・ハフェルツの顔は少年時代のあどけなさを残しているが、ブンデスリーガで見せるプレーは大人びている。ブンデスリーガでのキャリアは4年に及び、ヨーロッパのコンペティションでの出場試合数は19試合にも上る。2年前にデビューしたドイツ代表の将来を担う存在として期待されている。

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 華麗なテクニックで相手をいなし、左足を自在に操る。右足のキックもうまく、189cmの長身を活かしてヘディングでもゴールが奪うことができる。以前から多くのビッグクラブに注目されていたが、チェルシーを次なる挑戦の舞台に選んでいる。

 1999年、ハフェルツはドイツ西部のアーヘンという街で生まれた。サッカーを始めたのは4歳のときで、祖父が会長を務めていたアレマニア・マリアドルフというクラブでプレーしている。

 その後、アーヘンで最も大きなクラブであるアレマニア・アーヘン(当時は2部)の下部組織に移ると、ハフェルツに転機が訪れた。レバークーゼンのU-12チームと対戦した試合は3-8で敗れたが、チームの全得点を叩き出したのが2つ上の年代のチームでプレーする10歳のハフェルツだった。

 この試合がきっかけとなり、11歳になった夏にハフェルツはレバークーゼンの下部組織に加わった。

最年少記録を次々と更新

 しかし、トップチームデビューまでの道のりは決して平坦ではなかった。同年代の中では身長が低かったハフェルツは、14歳ごろから急激に背が伸び始めた。すると、身体の成長についていけずにプレーがうまくできなくなってしまった。

 急激な成長に苦しんだハフェルツだったが、時間の経過とともに身体に適応し、ポテンシャルを発揮していった。26試合で18ゴールを挙げてU-17チームをドイツ王者に導くと、翌シーズンからは本格的にトップチームに加わるようになった。

 16年10月15日のブンデスリーガ第7節、ヴェルダー・ブレーメン戦でトップチームデビュー。17歳126日でのデビューは、レバークーゼン史上最年少記録だった。UEFAチャンピオンズリーグでも3試合プレーし、1年目から公式戦28試合に出場した。

 その後もハフェルツは順調なキャリアを歩んでいく。ドイツ代表には19歳2か月でデビューし、昨年10月のアルゼンチン戦で初ゴールをマーク。20歳6か月での100試合出場と、20歳11か月での35得点到達はともにブンデスリーガ史上最年少記録となった。

 ハフェルツを巡っては、バルセロナやレアル・マドリード、プレミアリーグのビッグクラブがこぞって獲得に乗り出した。3年目の18/19シーズンには18得点をマークしたが、「ここでもっと成長できると思っている」と残留を宣言。そして今夏、満を持してチェルシーへの移籍を決断している。

プレースタイルは?

 チームメイトや家族のコメントを集める限り、ハフェルツは真面目でシャイなパーソナリティーを持っているようだ。

 ハフェルツの真面目さを裏付けるエピソードがある。今から3年前、17歳だったハフェルツは学校の試験があったため、CLラウンド16・2ndレグのアトレティコ・マドリード戦を欠場。ハフェルツはこの時すでにトップチームでコンスタントに先発の機会を得ていたが、学業も決しておろそかにしなかったという。

 ハフェルツのキャリアはミヒャエル・バラックにしばしば重ねられる。バラックはレバークーゼンで頭角を現し、ドイツ代表ではキャプテンを務めた。189cmという身長はハフェルツと同じである。かつてレバークーゼンでもプレーしたトニ・クロース以来の才能とも称され、そのプレースタイルは元同国代表のメスト・エジルを彷彿とさせる。

 小柄だった少年時代の名残があるのか、189cmの長身には似つかわしくないほどハフェルツのボールタッチは柔らかい。相手に囲まれてもボールを失わない技術があり、21歳にしてそのプレーには落ち着きがある。

 大半の左利きの選手は右利きに比べて、利き足ではない足をあまり使わない。自分の右側にボールがあっても、左足のアウトサイドで扱うことが多い。しかし、ハフェルツは左足のアウトサイドも自在に使えるが、ドリブルもパスもシュートも右足を躊躇なく使うことができる。

 相手からしてみれば的が絞れないので、ボールを奪うのが非常に難しい。ライン間でボールを受けて溜めを作り、味方に決定的なパスを送る。相手の寄せが一瞬でも遅れれば、自らシュートを放ってゴールネットを揺らす。その判断のタイミングが絶妙で、ブンデスリーガのDFたちは苦しめられてきた。

チェルシーでの活躍のカギは?

 コロナ禍で財布の紐がきつくなるクラブが多い中、チェルシーは積極的な補強を見せている。2月にアヤックスのハキム・ツィエクと5年契約を結び、争奪戦を制してティモ・ヴェルナーを獲得。課題だったディフェンスラインにはレスターからベン・チルウェルと、経験豊富なチアゴ・シウバを獲得している。

 チェルシーで長年プレーしたペドロ・ロドリゲスとウィリアンが去った前線には、ツィエク、ヴェルナー、ハフェルツの3人が加わった。就任2年目のフランク・ランパード監督にとって、前線の起用法は嬉しい悩みに変わっている。

 昨シーズンのシステムに当てはめると、ハフェルツは3トップの右をツィエクと争うことになる。4-2-3-1であればトップ下での起用も考えられる。レバークーゼンではインサイドハーフでもプレーすることがあったが、守備面での不安が起用を躊躇させるかもしれない。

 能力自体はプレミアリーグでも十分に活躍できるものを持っているだけに、カギを握るのは新天地での適応になるだろう。21年間を過ごしたノルトライン=ヴェストファーレン州を離れて、イングランドの大都市ロンドンへ移り住み、ブンデスリーガよりもフィジカル面が重視されるプレミアリーグを舞台に戦う。ハフェルツがどのようなパフォーマンスを見せるかに、世界中の人々が注目している。

(文:加藤健一)

【了】

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