開幕11試合無敗で首位快走
シーズンはまだ3分の1を経過したところでしかないが、青いチームはすでに首位の座を確かな定位置としている。
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守備はよく組織されており、攻撃面でもピッチ上の選手全員に貢献できる力がある。強い自信を抱いた戦いぶりで勝ち点を積み重ねており、相手チームが止めるのは非常に難しいと感じられる。
過密日程と、今年の日本の夏の酷暑の中でも、首位チームとして冷静な戦いを続けている。Jリーグで初めてのタイトルを獲得した2017年の偉業を再現することだけに集中しているが、今回は同じ結果を残せば前回以上に報われることも十分に意識している。J2への昇格という形で。
そう、川崎フロンターレではなくブラウブリッツ秋田の話だ。鬼木達監督の率いるJ1チームと同様に2020シーズンのスタートダッシュに成功した秋田は、J3優勝レースの序盤戦を引っ張る存在となっている。
3年前にも3部リーグ首位でシーズンを終えた秋田だが、J2昇格に必要なライセンスは取得しておらず、ステップアップを果たすことはできなかった。2018年にその問題を解消したあと、過去2シーズンはいずれも8位と不本意な成績に終わったが、今季はここまでのJ3に旋風を巻き起こしてきた。開幕9連勝に続いて2試合に引き分け、11試合を終えた時点でしっかりと首位を確保している。
今季無得点のゲームはわずか1試合
今季に向けて間瀬秀一監督からソユースタジアムのベンチを引き継いだのは、21年間にわたってアスルクラロ沼津(とその前身チーム)を率いてきた吉田謙監督。50歳の指揮官は間瀬前監督の築いた堅固な守備をベースとして、秋田の後方をさらに引き締めることに成功している。
GKの田中雄大はオフシーズンに相模原SCから加入してすぐに守護神に定着。開幕から6試合連続の無失点を達成し、6月と7月の7試合でわずか1失点、シュートセーブ率は実に95%という数字を残してJ3月間最優秀選手に選出された。同じく新戦力である右サイドバックの鈴木準弥と左サイドバックの鎌田翔雅も、それぞれ藤枝MYFCと清水エスパルスから移籍して来てスムーズにディフェンスラインに順応し、レギュラーポジションを固めている。
ピッチ上のあらゆるポジションでの一貫性こそが秋田の鍵となっている。田中と鎌田に加えて千田海人、山田尚幸、齋藤恵太もここまで全試合に先発出場。韓浩康と江口直生も1試合を除く10試合に先発しており、合計1000分間近くを戦った秋田はわずか3失点しか喫していない。
だが彼らが非常に効果的な戦いを見せてきたのは守備面だけではない。秋田がこれまでゴールを奪えなかった試合はわずかひとつ。唯一の無得点だった8月15日の試合は、こういった話にはありがちなことだが、最下位のカマタマーレ讃岐との一戦だった。これまでの総得点である19ゴールを10人の異なる選手が記録しているという事実も、このチームが持つ「一人はみんなのために、みんなは一人のために」の精神を体現している。
先週末のU-23ガンバ大阪戦の7分に沖野将基からのクロスを押し込み、チームの10人目のゴールスコアラーとなった林容平は、攻撃面の積極的な姿勢やこれまで8得点を生み出しているセットプレーの脅威などが得点の形の多様性に繋がっていると感じている。
「全員で一緒に守って全員で一緒に攻めています。チャンスがあれば後ろの選手たちも押し上げて絡んできます」と31歳のFWは語る。「セットプレーも今季の僕らにとって大きな武器で、後ろの選手たちもゴールを決めています。全員で点を取れているのは素晴らしいことだと思います」。
「どんな相手も特別だと考えることはない」
だがガンバ戦では序盤に林が先制点を奪いながらも、その後のチャンスはいずれも活かすことができず。後半の半ばには川崎修平に同点ゴールを許して1-1の引き分けに終わった。吉田監督はチャンスの浪費を嘆いていた。
「サッカーでは訪れたチャンスを決めることが非常に大事だ。チャンスは多かったがゴールに繋げることができなかった。それが(勝てなかった)一番の原因だ」。リーグ下位のチームに苦戦を強いられ、2試合連続のドローとなった試合について指揮官はそう語った。
次の相手は、昨年のJ2から降格し、昇格争いの有力候補のひとつとして2020シーズンを迎えていたFC岐阜。ゼムノビッチ・ズドラブコ監督のチームは序盤戦にやや足踏みを強いられ、対戦を迎える時点では秋田に14ポイント引き離されている。ただし、先週末のアウェイでの福島ユナイテッドFC戦は岐阜が2-0のリードを奪ったハーフタイムの時点で雷のため中止となり、岐阜は1試合を多く残している。
日曜日の試合は秋田にとって、タイトル争いのライバルをさらに引き離すチャンスとなる。だが吉田監督は、自身もチームも他の試合と同じ意識で次節に臨む姿勢を強調している。
「岐阜に勝つことは非常に大事だと思うが、どんな相手も特別だと考えることはない。全ての試合を決勝戦のつもりで戦うのが我々のスタイルだ。いつもどおり自分たちの全てを出し切りたい」。
これまでのところはその姿勢が見事に効果を現している。今後も安定感を維持し、負けない戦いを続けていくことができれば、過去の前例にも勇気づけられることになりそうだ。前回リーグ優勝を飾った2017年には、秋田は開幕から15試合連続の無敗でシーズンをスタートさせていた。あと4試合…。
(取材・文:ショーン・キャロル)
【了】