チームのスタイルと外国籍CB
外国籍選手は「助っ人」と呼ばれることもあるように重要な補強対象だ。外国籍選手を補強するポジションはチーム事情によってさまざまだが、得点に直結するFWは目立つし、実際数も多い。ほぼすべてのチームがFWに外国籍選手を擁している。
【今シーズンのJリーグはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
ゴールに直結するという意味ではGKも少なくない。そして、約半数のチームは守備の要としてCBに外国籍選手を起用している。
昨季の外国人CBとして双璧だったのがチアゴ・マルチンス(横浜F・マリノス)とマテイ・ヨニッチ(セレッソ大阪)だ。J1最高クラスの2人でもある。
ハイプレスとハイラインが特徴の横浜FMは、カウンターアタックを受けたときに広いスペースを守れるCBが必須である。チアゴ・マルチンスはスピードと1対1の対応に優れた、戦術を機能させるうえで不可欠な選手だった。一方、マテイ・ヨニッチはC大阪の堅守の象徴だ。冷静なポジショニングと読みによる安定感で、こちらもチーム戦術にフィットしたCBといえる。
ビルドアップで左利きの利点を生かしていたトーマス・フェルマーレン(ヴィッセル神戸)、空中戦の強さでベガルタ仙台の守備を支えたシマオ・マテも活躍していた。
今季も外国人CBは効いている。川崎フロンターレのジェジエウはチアゴ・マルチンスと似ていて、攻撃的なチームにおいてカウンターケアへの対処能力の高いスピードのあるタイプだ。
今季、清水エスパルスが獲得したヴァウドは守備の強さとともに、攻撃面でも正確な技術を発揮している。183cmはCBとしてとくに大きいわけではないが空中戦も強く、ピーター・クラモフスキー監督の下で攻撃型へモデルチェンジしているチームに合ったタイプといえる。
浦和レッズのトーマス・デンも存在感がある。SBもできるスピードがあり、技術に優れ、CB本来の守備力も高い。南スーダンの出身だが難民としてオーストラリアに渡り、メルボルン・ビクトリーで活躍。23歳の若さも魅力で、今後大きくのびていくポテンシャルを持っている。
CBに必要な身体能力と「格」
J1で外国籍のCBがレギュラーとして活躍しているのは9チーム。FWに比べると数は少ないが、CBはコンスタントにプレーしていてチームにおける重要度は高い。
CBが補強対象になっているのは、サイズの関係があるだろう。ボールが地面にあることが多いサッカーはあまり体格が影響しないが、サイズが必要なポジションもある。GKとCBは体格が求められるポジションだ。
日本人にも大きなCBが増えてきたが、外国籍選手のサイズはやはり魅力だ。大きいだけでなく、スピードがあるのが最近のトレンドといえるかもしれない。大きくて速くて強いCBとなると、日本国内だけでは人材が限られているが、世界にターゲットを広げればそれだけ多くの人材から選ぶことができる。
かつて日本リーグ時代の日産自動車(現在の横浜FM)でプレーしたオスカーは、元ブラジル代表のキャプテンだった。オスカーはCBを「格で守るポジション」と言っていた。技術や身体能力もさることながら、外見的にいえば「佇まい」のようなものも重要なのだろう。
経験に裏打ちされた落ち着きと自信。CBとしての信念のようなものが、たぶん「格」を醸し出すのではないかと思う。これは外国籍選手に限ったことではないが、良いCBは確かにどこかどっしりとして見える。
アルゼンチン代表だったロベルト・アジャラは、父親もCBだったそうだ。アジャラはCBとしては大きくなかった。長身のFWに対して、どんな駆け引きで封じているのだろうと注目したことがあるのだが、アジャラは長身FWに対してとくに何かをしているようには見えなかった。普通に競り合って勝ったり負けたり。ただ、それで全く動じている感じがなかった。少なくとも意識しすぎて墓穴を掘るような心配がない。これが「格」ということなのかと思ったのを覚えている。
(文:西部謙司)
【了】