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バルセロナはなぜ守備崩壊したのか? バイエルンの強さの根源とは?【枝D解説 後編】

圧倒的な強さを見せつけ、7年ぶりに欧州王者に返り咲いたバイエルン・ミュンヘン。ニコ・コヴァチ前監督からチームを引き継いだハンス=ディーター・フリック監督が率いるバイエルンの強さの源はどこにあるのだろうか。8月5日に「枝D ボールも自由も奪い取る術~守備からみるフットボールの新しい景色」を刊行した“枝Dの人”こと内田淳二氏に、バイエルンが8得点をあげ、FCバルセロナを葬り去った準々決勝のハイライトシーンから、彼らの強さを象徴するシーンをあぶり出してもらい、前後編で掲載する。今回は後編。(文:内田淳二)

text by 内田淳二 photo by Getty Images

鍵を握る三人組の関係

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【写真:Getty Images】

 次は、逆にボールを奪われた後のバルサ側の守備をみてみましょう。まず、ボールを取られた背番号5(ブスケツ)が【1番 誘導&プレス】の役割を担っていると言えます。

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 ただ、この場面の時系列でいうと、誘導はかかっているものの、プレスはかかっていない状態になっています。つまり、まだ「守備の構築段階」にあったわけです。この場面の問題は【2番 遮断&カット】の役割を担うべき、バルサの背番号20番(セルジ・ロベルト)が止まってボールにいってしまったことにあります。本来であれば、【1番(誘導→プレス)→2番(遮断→カット)】という順番でいくところを、プレスが緩いなかで止まってしまったため、バイエルンの左サイドが空いてしまった。

 この状況であれば、セルジ・ロベルトは、バイエルンの背番号14(イバン・ペリシッチ)についていき、次の可能性に対して管理を続けなければいけませんでした。もし、このシーンでもっとブスケツのプレスがかかっていて、バイエルンが前にパスを出す可能性が低い状況であったのなら、止まる、という判断は間違っていなのですが。

 もうひとつバイエルンの得点シーンを解説します。バイエルンが勝ち越しゴールを決めたシーン。これは1点目とほぼ同じパターンです。まずこのシーンで良かったのは、【3番(ゴレツカ)】の選手がボールを取りに出てこなかったことです。サッカーだとよくあると思うのですが、ボールホルダーに対して、正面にいる選手がアプローチにいきますよね。

 ようは【3番】、本来「門番」の役割を担うべき選手が前に出てきてしまう。ただこのシーンの場合、同じ高さにいる、バイエルンの2選手が横から三角形を圧縮しています。これは、【3番】の役割を担っているゴレツカの仕事がかなり効いているからできたことです。

 本来ボールホルダーと同じ高さにまだ人がいる場合、【3番】の選手は前に出て行く必要がないんです。もし、同じ高さに選手がいなかった場合は、ゴレツカが前に出て行き【1番】の役割から、守備を構築していく必要があるでしょう。スピードがどんどん速くなっている現代のサッカーシーンにおいて、この状況で、闇雲にボールにいかず待ち構えられるプレーはかなり渋いプレーだといえます。

 この得点シーンの解説で理解していただきたいのは、三人組の関係です。枝Dでは、守備側の最少人数を3人としています。理由は、三角形の面積を圧縮しながら、その中でボールを回収するほうが次の攻撃につながるからです。しかし、ただ三角形を作ればよい守備ができるというわけではありません。3人の選手たちが、それぞれ2つずつ役割をこなせば自然と三角形になるよ、ということです。

 この背番号とはまた別の【】内の番号は、枝Dでいう「ナンバリング」の番号になります。ナンバリングは「守備者それぞれが2つずつ持っている『役割』を番号で管理しましょう」という概念です。

 このように、枝Dの「ナンバリング」という概念で守備を整理していくと、守備のどこにエラーがあったのか、また守備だけではなく、なぜゴールが生まれたのか、という原因を流れから理解できるようになります。ハイライトシーンだけでも、守備のエラーはわかりやすく出ているので、「ナンバリング」をもとに今季のCLを一気に見返してみてもおもしろいかもしれません。

(文:内田淳二)

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『枝D ボールも自由も奪い取る術~守備からみるフットボールの新しい景色』


定価:本体1700円+税

≪書籍概要≫

枝D(枝ディフェンス)とは…。
自分の体を“木”に見立てた相手の自由を奪ってボールを「残す」球際の型。
ボールを「残す」ために設計された“5種類の型”をマスターすれば相手の癖や“可能性”を見極められるようになり、守備の動機や球際の強度が上昇する。さらに、ケガやファールが激減し守備が楽しくなる。
これまでになかった守備の概念である。

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【了】

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