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アトレティコはナーゲルスマンの術中にはまっていた。ヴェルナー不在のライプツィヒが用いた打倒シメオネの策略【欧州CL】

UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝、ライプツィヒ対アトレティコ・マドリードが現地時間13日に行われ、2-1で勝利したライプツィヒがクラブ史上初のベスト4入りを決めた。高いインテンシティという共通項を持ちながら、異なるスタイルを標榜するチームの対決は、戦前の予想通り拮抗した展開に。しかし、ユリアン・ナーゲルスマン監督は鉄壁を誇るアトレティコのディフェンスを攻略していた。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

ライプツィヒの可変システム

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【写真:Getty Images】

 アトレティコ・マドリードのディフェンスは堅い。リーグ戦の勝ち点70はディエゴ・シメオネがシーズン途中に就任した2011/12シーズンに次ぐ低さだったが、失点数は優勝したレアル・マドリードに次ぐ少なさの27で、17試合でクリーンシート(無失点)を達成している。

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 そのアトレティコに対してライプツィヒは2点を奪って勝利した。クラブ史上初のCLベスト4という快挙を成し遂げた裏には、ユリアン・ナーゲルスマン監督の策略があったことは言うまでもない。

 ライプツィヒは攻守で2つの陣形を用意した。ボールを持ったときは3-3-3-1だったが、ボールを奪われると右ウイングバックのコンラート・ライマーが中央に絞って4-2-3-1の形で守っている。ライマーやマルセル・ザビツァーなど、複数のポジションでプレーできる選手が多いライプツィヒだからこそできる戦略だった。

 しかし、自陣で守りを固めたアトレティコから得点を奪うのは世界で最も難しい。前半のライプツィヒは59%のボール保持率を記録したが、シュートはわずかに4本。うち3本がセットプレーからで、1本はミドルシュートだった。

 しかし、不思議と手詰まり感のようなものはなかった。アトレティコがなかなか敵陣でプレーさせてもらえていなかったからだろうか。ライプツィヒは積極的に縦パスを入れ、ボールを奪われてもシームレスなトランジションで回収していた。

流れを変えたジョアン・フェリックス

 試合はスコアレスで前半を終えた。後半に入ってもライプツィヒは狙いを変えない。ひたすらアトレティコの間にボールを通し続け、51分に先制点を奪った。右サイドからマルセル・ザビツァーが上げたクロスを、フリーでダニ・オルモが合わせてゴールネットを揺らしている。

 ライプツィヒにとって不運だったのは、先制した直後の時間を10人で守らなければいけなかったことだった。前半にステファン・サビッチとの競り合いで衝突したマルセル・ハルステンベルクが止血のために一旦ピッチを離れている。ハルステンベルクが不在の間、ライプツィヒは自陣に押し込まれる時間が続いた。

 失点したアトレティコはジョアン・フェリックスを投入してセカンドトップに入れた。マルコス・ジョレンテを右サイドに回し、コケを中央へ移している。

 敵陣でボールを持てるようになったアトレティコは、ジョアン・フェリックスが左に流れて3対3の数的同数を作った。68分にはワイドに開いたジョアン・フェリックスからインナーラップするヤニス・カラスコにパスが出てゴール前に侵入している。

 さらにその1分後、低い位置でボールを受けたジョアン・フェリックスがプレスを剥がし、ジエゴ・コスタとのワンツーでDFラインを突破する。抜かれたルーカス・クロスターマンはジョアン・フェリックスを倒してしまい、アトレティコはPKを獲得。ジョアン・フェリックスはこれを成功させた。

 守備を固めたアトレティコは鉄壁だが、ボールを持つこともできる。対してライプツィヒはボールを持つことができても、ブロックを築いて守るのをあまり得意としていない。ジョアン・フェリックスは相手のブロックの間をうまく突いていた。

2得点に共通するライプツィヒの狙い

 ライプツィヒの2点目は左サイドからのクロスだった。左サイドのアンヘリーニョはバイタルエリアにグラウンダーのボールを入れた。コンラート・ライマーに代わって出場していたテイラー・アダムスがこれを受けて、ミドルレンジからゴールネットを揺らした。

 ライプツィヒの2得点はともにクロスから生まれた。フィニッシュの形は異なるが、狙いはほぼ一緒だった。

 1点目はユスフ・ポウルセンのポストプレーがきっかけだった。ポウルセンの落としを受けたケビン・カンプルが右に流すと、ライマーにはセンターバックのホセ・ヒメネスが寄せた。ライマーが右サイドに展開してザビツァーがクロスを上げるのだが、ヒメネスが空けたポジションにダニ・オルモが走りこんでフリーになっている。

 2点目が生まれる5分前にライプツィヒは2枚の交代カードを切っている。パトリック・シックを入れてポウルセンと並べ、3-3-2-2の形になった。それまではポウルセンがポスト役2で、2列目の3人がDFとMFの2ラインの間でボールを受けていたが、ポスト役が2人に増えている。

 アンヘリーニョは59分、67分、73分としきりにマイナス方向へのクロスを狙っていた。 2点目のシーンではアンヘリーニョがボールを持ったときに2トップがDFを引き連れているのがわかる。ポウルセンの1トップではDF4人を下げさせることはできなかっただろう。2トップにしたことでDFラインと中盤の間にスペースが生まれた。

術中にはまったアトレティコ

 ライプツィヒの狙いは4-4-2の相手の間に選手を配置し、その間にボールを通すことだった。すると必ずアトレティコは収縮してボールを奪いにくる。そうなればライプツィヒはサイドに展開する。1点目はヒメネスが空けたポジションを、2点目は後ろ向きになったDFラインの手前のポジションを突いた。1点目も2点目も構造としては同じだった。

 アトレティコは前半の途中から、ボランチの1枚を高い位置まで上げてカンプルから自由を奪おうとしている。しかし、アトレティコの2トップに対して、ライプツィヒは3バックなので、中央のダヨ・ウパメカノがフリーでボールを運ぶことができた。アトレティコはボランチが空けたスペースをサイドハーフが絞って埋めていたが、それによってライプツィヒのウイングバックがフリーになっていた。

 結果的にアトレティコは術中にはまった。ライプツィヒの狙いに対して、アトレティコは個人の能力に頼っていた。能力が高いのである程度は処理できてしまうが、90分も続けられればヒューマンエラーは起こる。来季からチェルシーでプレーするティモ・ヴェルナーがすでにチームをチームを離脱していたが、ナーゲルスマンは攻略法を見つけていた。

(文:加藤健一)

【了】

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