前半でナポリを突き放す
セルヒオ・ブスケッツ、アルトゥーロ・ビダル、アルトゥールといった選手が不在の中、バルセロナは4-3-1-2のフォーメーションを採用。中盤にはイバン・ラキティッチ、フレンキー・デ・ヨング、セルジ・ロベルトの3人が並んでいる。
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対するナポリは4-3-3を採用。セリエA最終節のラツィオ戦で負傷したロレンツォ・インシーニェがこの試合に間に合い、ベストメンバーで臨むことができた。
試合は戦前の予想に反して立ち上がりからナポリがボールを持つ展開に。開始わずか2分にはドリース・メルテンスがポスト直撃のシュートを放つなど、うまくサイドを大きく使いながらバルセロナ陣内に押し込んでいた。
バルセロナは守備時、アントワーヌ・グリーズマンがアンカーのディエゴ・デンメを見ることで相手のビルドアップを阻止。カリドゥ・クリバリやコスタス・マノラスのいる最終ラインには強く行かず、ある程度ボールを持たせた。
ただ、システム上中央の守備は固いが、マリオ・ルイとジョバンニ・ディ・ロレンツォの両サイドバックにプレッシャーを与えることは難しい。そのため、サイドチェンジで大きく左右に揺さぶられるとなかなか苦しかった。
思い返せば上記した2分の決定機はマリオ・ルイへのサイドチェンジがキッカケとなって生まれたものだった。背番号6がボールを散らした後に内側を走ったことでネウソン・セメドもそこにつられる。そして大外のインシーニェがフリーとなり、そこからピンチを招いていた。
このように、試合の入りはナポリが上回っていた。しかし、先制したのはバルセロナ。10分にコーナーキックからクレマン・ラングレが頭でゴールネットを揺らしたのだ。
ここから試合は大きく動き出す。バルセロナはロングボールを多く使用することでナポリの守備ブロックを着実に回避。手数をかけず一気に相手を押し込み、そこから崩しにかかるなど少しずつペースを取り戻した。
そして22分、ルイス・スアレスがサイドのリオネル・メッシへパスを展開。背番号10はそこから次々とDFを無力化し、最後は身体を倒しながらファーサイドを射抜くスーパーゴールでチームに追加点をもたらした。
バルセロナはATにも1点を追加。前半のうちにインシーニェに1点は返されたものの、3-1という申し分ないスコアで後半へ向かうことができた。前半の支配率は50%とそこまで多くなかったが、試合の運び方は見事だったと言えるだろう。
バルベルデ時代を彷彿とさせるドン引き
後半は一方的な展開となった。キケ・セティエン監督はそれまで内容重視のサッカーを披露してきたが、ナポリ戦では結果重視の戦いを見せたのだ。
それは非常にシンプルなものだった。バルセロナは自陣でブロックを築くなどドン引き。そこからカウンターを狙うやり方にシフトしたのだ。まるで、今季途中に解任されたエルネスト・バルベルデ監督時代を彷彿とさせるような、そんな戦い方だった。
こうなると当然、ナポリがボールを握る時間が増える。バルセロナは中央に人数を集めていたため、サイドからの攻めを中心に行った。52分にはインサイドハーフのファビアン・ルイスがボールを持ち、人を引き付けたところでタッチライン際に展開。そこからクロスを放り込んで、最後はインシーニェがフィニッシュに繋げている。
ただ、インシーニェ、メルテンス、ホセ・マリア・カジェホンが揃うナポリの前線に高さはない。そのため、クロスが大きな効果を発揮していたとは言い難かった。
ジェンナーロ・ガットゥーゾ監督は79分にインシーニェを下げてアルカディウシュ・ミリクを投入。前線に高さが増した。すると80分には見事なタイミングでクロスを合わせ(オフサイド判定でノーゴール)、85分には自身がミラーとなってイルビング・ロサーノのシュートをサポートするなど、高さでバルセロナ守備陣を恐怖に陥れた。“たられば”は禁物だが、ポーランド代表FWがもう少し早くピッチに立っていれば、なかなか面白かったかもしれない。
結局、バルセロナはナポリに1点しか許さず3-1で勝利。2戦合計スコアを4-2とし、優勝候補筆頭のバイエルン・ミュンヘンが待つベスト8へ駒を進めた。
後半、バルセロナはなんとシュート数0本に終わっている。この数字だけでも、どれだけ守備に重きを置いたかがわかるだろう。そして、被シュート数は13本にも上った。しかし、被枠内シュート数はわずか2本。ラングレとジェラール・ピケを中心とした守備陣がよく奮闘したと言えるはずだ。
試合後、セティエン監督は「簡単な試合ではなかった」としながらも「完全にコントロールできた。前半は最高の出来で、後半もそこまで危険ではなかった」とコメント。結果を残せたことは、素直に喜ぶべきことだ。
ただ、バルセロナのサポーターからすると少し納得のいかない勝ち方かもしれない。この戦い方ならバルベルデで良かった、なんのための監督交代かと…。
バルセロナは今季途中にバルベルデを解任。その理由は様々あるが、セティエンを後任に迎えた大きな理由はポゼッションスタイルへの回帰を目指したからだ。実際、セティエン監督は「クライフイズム」の信奉者。その狙いは明らかだった。
しかし、今回セティエン監督は内容を捨て結果を拾った。とくに後半の戦い方はバルベルデ時代そのものの姿であった。ただ、完成度は当然ながら前指揮官の方が圧倒的に高い。安定感に関しても、バルベルデが上回っている。
本当に、なんのための監督交代だったのか。ベスト8に駒を進めたのは大きな評価に値するが、疑問符がつく勝利だったと言わざるを得ない。
(文:小澤祐作)
【了】