立ち上がりはヘタフェ優勢
新型コロナウイルス感染拡大の影響で中断を余儀なくされていたヨーロッパリーグ(EL)が、約5ヶ月ぶりの再開を果たした。当初は3月12日に1stレグが行われる予定だったラウンド16のインテル対ヘタフェは、開催地をドイツに移し、一発勝負で勝敗が決することになった。
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アントニオ・コンテ監督就任1年目のインテルは、今季のセリエAを2位で終えていた。積み上げた勝ち点は「82」となっており、これは3冠を果たした2009/10シーズン以来の数字だったという。優勝しても不思議ではない成績と言えるだろう。
とくにリーグ戦の締め方は素晴らしかった。インテルはラスト3試合でジェノア、ナポリ、アタランタと対戦しいずれも勝利。同3試合で失点は「0」と、内容もまさに完璧だった。頂点を目指すELへの戦いに向け、勢いは十分だったと言えるはずだ。
しかし、「我々はヘタフェのレアル・マドリード戦、バルセロナ戦、アトレティコ・マドリード戦の内容が大きな問題でないこと、ビッグチームがヘタフェを上回るのに手を焼いていたのを見た。ヘタフェは強力なチームで立ち直りが早いチームだよ」とコンテ監督が試合の前日会見で話した通り、インテルにとってヘタフェはかなり手ごわい相手だった。
ホセ・ボルダラス監督率いるヘタフェは守備時に4-4-2の陣形を組み、高い位置からボールを奪いに来た。インテルもそれは分かっているので、早くボールを展開しようと試みるが、これがなかなかうまくいかない。危険な位置でヘタフェに捕まってはサイドに広げられ、そこからシンプルにクロスを放り込まれるなど立ち上がりから苦戦を強いられた。
早い時間から何本かシュートも放たれた。DFステファン・デ・フライを中心としたインテルの守備陣はよく耐えていたが、ヘタフェの勢いに対して少し逃げ腰になっていたのは確か。全体のラインをかなり下げられたことで、効果的なカウンターを繰り出すのも難しかった。
インテルは25分にFWラウタロ・マルティネスがシュートを放ったが、これがこの日のファーストシュートだった。対するヘタフェはこの時点で実に7本のシュートを浴びせている。流れがどちらに傾いているのかを判断するのは、そう難しくなかった。
PK献上の大ピンチも…
しかし、インテルはワンチャンスをしっかりとモノにした。33分、DFアレッサンドロ・バストーニのロングフィードに抜け出したFWロメル・ルカクが自慢のフィジカルを活かしてマークに付いていたDFシャビエル・エチェイタを無力化。最後は左足を振り抜いてゴールネットを揺らした。
このゴールにはコンテ監督も雄たけびをあげずにはいられなかった。苦しい状況を打破するという意味でも、十分すぎる先制弾になったと言える。
こうして1-0で前半を終えることができたインテルは、後半にペースを握った。やや疲労の影響も出ていたヘタフェに対し、ボールをしっかりと繋ぐことで隙を与えず、攻守の切り替えも素早く行うことでさらに相手の体力を削ぎ落とした。
しかし、それでもヘタフェは前に出てくる。そんな中、75分にDFディエゴ・ゴディンがハンドをとられPKを献上。大ピンチを迎えた。
ただ、これをFWホルヘ・モリーナが失敗。インテルは運にも恵まれ、リードしたまま終盤を迎えることができた。
そして、インテルは待望の追加点を挙げる。83分、途中出場のMFクリスティアン・エリクセンからのパスを受けたDFダニーロ・ダンブロージがクロス。DFジェネがこの処理を誤ると、最後はエリクセンが詰めてゴールネットを揺らした。
ビッグチャンスを逸したヘタフェと、相手のミスを見逃さずに得点に結びつけたインテル。両者のこうした差が試合の運命を決めることになった。
ゲームはこのまま2-0で終了。一発勝負という緊張感漂う中、訪れたチャンスを結果に結びつけたインテルがベスト8入りを決めている。試合後、『Sky Sport』のインタビューでルカクは「チームは成長している。僕たちはこの同じメンタリティーと改善への強い決意とともに進み続けなければならない」と話した。
インテルを変えたワンプレー
先述した通り、インテルは25分までシュート0本となっていた。相手のミスもあったとはいえ、そこから2点を奪うことができたのは流石と言えるだろう。では、そこに至るまでどのようにしてヘタフェを崩したのか。ヒントとなったのは27分の場面だ。
バストーニがボールを持つと、ルカクが下がってボールを引き出し、MFロベルト・ガリアルディーニへパス。そこからL・マルティネスに繋がり、最後はフィニッシュに持ち込んでいる。
それまでのインテルは、ボールを失うことを恐れていたのか近場でのパス交換が目立っていた。しかし、27分の場面ではインテルのインサイドハーフ2枚に張り付いてくるヘタフェの中盤2枚が高い位置を取っていたので、ルカクがライン間スペースを突き、そこにバストーニが思い切ってパスを入れたのだ。
これがフィニッシュという結果に結びついたことにより、インテルはそこからリスクを冒してでも勝負球を入れる回数が増えた。実際、先制ゴールの場面はバストーニのロングフィードが起点となって生まれたもので、追加点の場面も最終ラインから1本のパスを前線で引き出したエリクセンが収めたことで生まれたものだった。
数字にもそうした変化は表れている。データサイト『Who Scored』によると、インテルは25分までファイナルサードを狙ったパスがわずか11本のみとなっていたが、25分から前半ATまでには同19本に増加。後半に関しては43本となっていた。上気した27分の場面が一つのキッカケになったと考えても不思議ではないだろう。
ヘタフェはインテルのインサイドハーフ2枚を潰すことでビルドアップの阻止を図ったが、自然とライン間スペースを広げられてしまったことが痛かった。相手にキッカケを作られ、その直後の33分に失点を喫したのも大打撃になったと言える。力の差を見せつけられる結果となった。
(文:小澤祐作)
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【了】