またもCL前にキープレーヤーが離脱
またか…という感じである。
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パリ・サンジェルマン(PSG)は、次ラウンド進出がかかったチャンピオンズリーグ(CL)の大事な試合に限って、キープレーヤーが不在となる。昨年、一昨年のラウンド16ではネイマールが、少しさかのぼれば、13/14シーズンの準々決勝のチェルシー戦では、敵地での2ndレグを主砲のズラタン・イブラヒモビッチが欠場した。ホームでの1stレグは3-1で勝利していたが、2戦目は0-2で敗れてベスト4進出のチャンスを逃した。
そして今年、8月12日にリスボンで行われるアタランタとの準々決勝戦も、キリアン・ムバッペが欠場になる可能性が高い。
7月24日に行われたフランスカップ決勝戦のサンテティエンヌ戦で、33分に相手DFのタックルを受けたムバッペは、右足首を痛めてピッチを後にした。初診では足首の捻挫で復帰まではおよそ3週間という診断。72時間様子をみた後のMRI検査でも、あらためて『足首の捻挫と、外側の靭帯にダメージ』が確認され、復帰までは3週間だとクラブが発表した。
フランス杯からアタランタ戦までは19日間。現地メディアは、「ムバッペはアタランタ戦欠場か?」とはしながらも、「怪我の回復スピードには個人差がある」、「同じ症状でも1週間でプレーできる選手もいれば1ヶ月以上かかる者もいる」といったスポーツ医学の専門家の意見を集め、「可能性はゼロではない」と期待をこめて報じている。
個人の回復力や治療方法でも差が出るから、出場できる可能性はゼロではないだろうが、療養中の筋力の衰えやリズム感の狂いは避けられない。いずれにしても100%の状態でピッチに立つのは難しい。フランスの至宝の今後のキャリアも考えて、クラブ側も無理はさせないだろう。
「CL優勝は絶対目標であったにしても…」
そもそもこのフランス杯決勝戦は、3月中旬に試合が中止になって以来、最初の公式戦で、両軍とも動きは鈍かった。
ムバッペにタックルをかましたチームキャプテンのセンターバック、ロイク・ペランにしても、決してアグレッシブなタイプではない。プロ生活17年で、レッドカードはこれが2度目とDFにしては警告が少ない部類の選手だ。
「勇んで削りにいった」わけではなく、ボールを狙いにいったが、ムバッペのスピードを読み誤った、という感じだった。7月末で契約が満了となるため、育成時代から23年間を捧げたサンテティエンヌでの、これがラストマッチ。退場処分で終わるのは、さぞ無念なことだろう。
話はそれたが、PSGは31日にリヨンとのリーグカップ決勝戦を戦った。
サンテティエンヌ戦後の会見で、トーマス・トゥヘル監督に記者の一人から「(ムバッペの負傷を受けて)リーグカップ戦ではネイマールを温存することを考えるか?」という質問が飛んだ。ネイマールまで怪我をされては、そのあとのCLでの手札がなくなってしまうからだ。しかし指揮官は、「ベストな布陣で臨む」と言い切っていた。
6月に入ってクラブが始動したあと、トゥヘルが繰り返してきたのは、「クラブとして、CL優勝は絶対目標であったにしても、いまこの瞬間の優先順位は、現実的にトロフィー獲得の可能性が高いフランス杯とリーグカップである」ということだった。
なので選手たちにも、CLを意識して、たとえばカップ戦決勝で力をセーブする、といったことはあってはならないと、指揮官は釘をさしていた。開幕前のスーパーカップを含めたシーズン4冠を達成するのがトゥヘルの目標であり、そのためにリヨン戦にはフルメンバーで挑んだのだ。
アタランタ戦のキーマンは?
アタランタ戦ではすでにアンヘル・ディ・マリアも累積警告で出場停止が決定している。
今シーズンのPSGは、12月くらいから4-4-2(4-2-2-2)が定着し、フルメンバーであれば、マウロ・イカルディとムバッペがトップ、ネイマールとディ・マリアが両サイド。ボランチはマルコ・ヴェラッティとイドリッサ・ゲイェ、という布陣が鉄板だった。
そのうちのムバッペとディ・マリアが不在。そして6月でエディンソン・カバーニの契約が満了しているのも痛いところだ。彼はチアゴ・シウバのように8月末までのスポット延長には応じなかった。
そこでアタランタ戦でキーマンとなるのはパブロ・サラビアだ。両サイド、トップ下に加え、ラウンド16のドルトムント戦ではカバーニとの2トップでも先発している。
もしトゥヘルが4-4-2をキープするなら、ユリアン・ドラクスラーを加えてネイマール、イカルディ、サラビアの4人でオフェンス網を形成する。この場合は、トップでイカルディと組むのはサラビアかネイマールになる。
今シーズン前半に多用していた4-3-3なら、イカルディがトップ、左にネイマール、右にサラビア。そしてマルキーニョスを中盤の底で起用して、センターバックはチアゴ・シウバとプレスネル・キンペンベだ。
自陣だけ見るなら、ムバッペとディ・マリア不在の状況ならこの4-3-3のほうがすっぽりはまる感じがあるが、相手が攻撃マインド旺盛のアタランタであるなら、サイドを中心にアタッキングサードまで攻め上がられたときにスペースをカバーしきれない感がある。
PSGは、リーグ・アンでは自分たちよりも攻撃力のあるチームと対戦することはなく、彼らの日頃のチャレンジは、がっつり引いてガチガチに守ってくる相手をどうこじあけてゴールまで持ち込むか、というところにある。
相手の守備にしても、アタランタのような強気なデュエルに応戦することはあまりない。常に自分たちにボールポゼッションがある状態で戦っているから、前線からプレスをかけるようなシチュエーションも稀で、ネイマールやイカルディにはその点で戦力になることは期待できない。
途切れた勢いを取り戻せるか
今季のアタランタの試合は映像で数回見た程度だが、彼らのサイドで四角形を作るビルドアップは、リーグ・アンではモナコがやっていて、そのモナコ戦ではPSGは一時逆転を許して3-3で引き分けている。
数字だけ見るなら、1試合あたりの得点数では、アタランタが2.66、PSGが2.77と勝っており、失点数でもパリは0.88、アタランタは1.25と大きく差がある。しかし「彼らだけは別リーグ」と他クラブの監督が口を揃えるPSGのリーグ・アンでの数字には、それほど説得力はない。
3月、ドルトムントを2-0で破り、1stレグを1-2で落としたハンディを覆して準々決勝進出を決めたとき、チームがしっかりひとつにまとまって、メンタル的にもプレー面でもブワっと昇華した感じがあった。ボルテージが最高潮に達し、「この勢いなら、ひょっとして今シーズンありか!?」という気さえした。ところが、新型コロナウイルス蔓延による中断という誰もが予期しなかった展開で、昇り竜のようだった彼らの勢いは、ブチッと断たれた。
「PSGはつくづくチャンピオンズリーグに見放されているのかも」と思わずにはいられないが…。
6月からリーグが再開し、頭も身体も実戦モードになっているアタランタと、ようやくゆるゆると始動した感じのPSG。リヨンとのリーグカップ決勝のあと、リーグ2のソショーとの練習試合を経て、準々決勝に挑む頃には、いよいよギアが入ってきたぞ、となるのか。
ひとまずリーグカップ決勝でさらなる負傷者を出さなかったことは、トゥヘル監督にとっても一安心といったところだろう。
(文:小川由紀子【フランス】)
【了】