ハーフスペースを占める2人の「8番」
シティでは、特に2018/19シーズン中には、そこに少し手を加えたパターンも見られた。ホームのアーセナル戦では、通常一人で「4番」を務めているフェルナンジーニョがDFライン上でプレーしていた。シティがボールを持つと、フェルナンジーニョは中盤へポジションを移動し、ギュンドアンと同じラインに並ぶ。これによりシティはアーセナルのプレスを逃れて快適にボールを進めることが可能となっていた。グアルディオラが一般に考えられているよりも柔軟な戦術家であることが示された例だった。
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だが、シティがより頻繁に用いているのは最初に挙げたシステムだ。グアルディオラが2016年にシティにやってきた時に直面した問題は、このチームにはクラシックな「10番」の特質をすべて兼ね備えたダビド・シルバという選手がいたことだった。
チーム内でダビド・シルバの立場が疑問視される状況というのは、今になって振り返れば冗談のような話だと思える。彼はグアルディオラのゲームモデルの理解と実践の両面においてキープレーヤーとなった選手だ。
だが、それを実現させるためには、グアルディオラはまずダビド・シルバの創造的なポテンシャルを存分に引き出す方法を見つけ出さなければならなかった。「8番」の位置からさらに前方でプレーできるようにすることがその最大の理由だ。
そのために用いられた手法は、今考えればきわめてシンプルなものだった。グアルディオラは通常、ダビド・シルバとデ・ブライネの2人が務める「8番」のポジションの選手に対し、普通であれば「10番」が位置するような、かなり前寄りのポジションでプレーするように指示した。
このポジション取りのコンセプトがシティにおいて実現可能なのは、より低いポジションでプレーする選手が2人のCMFに頼ることなくボールを前へ進められる力を持っていることを、グアルディオラが全面的に信頼しているためだ。
2人のCBと、シングルボランチのフェルナンジーニョが形成するトライアングルは、シティが攻撃のビルドアップをスタートさせる上での最高の起点となる。それに加えて、サイドのエリアを占めることも、状況に応じてより絞ったポジションへ移動することもできる両SBがいる。こういったすべての要素が、ダビド・シルバやデ・ブライネらが高いエリアで自由にプレーすることを可能としている。
(文:リー・スコット)
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