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Jリーグ 4年前

「創造力の欠如を露呈」。鹿島アントラーズのデータが示す最下位の要因、復調への光明は…【英国人の視点】

ザーゴ新監督を迎えた今季の鹿島アントラーズは、明治安田生命J1リーグで清水エスパルスに並んで最下位に沈んでいる。ここまで1勝5敗1分と低迷する理由は何なのか。一方で、先月26日のFC東京戦の後半には今後に希望が持てる戦いも見せている。(文:ショーン・キャロル)

text by ショーン・キャロル photo by Shinya Tanaka

低迷する鹿島

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【写真:田中伸弥】

 J1が再び定期的に開催されるようになってからまだ1ヶ月。だが特異な状況により、2020シーズンは早くも5分の1の日程を終えたことになる。

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 普段なら、あるクラブのシーズンの見通しをわずか7試合の段階で測ろうとするのは馬鹿げた話だと言えるだろう。だが試合が立て続けに訪れ、その間に練習場でトレーニングに取り組む時間がさほどない状況では、上位に挑戦できる可能性のあるチームと苦戦が見込まれるチームをこの早い段階で分けてしまうことも難しくはないのではないだろうか。

 例えば川崎フロンターレは絶好調。素晴らしいサッカーでゴールを積み重ねて無敗を守り、序盤戦をリードする存在となった。名古屋グランパスは無敗をキープ、ガンバ大阪、FC東京、セレッソ大阪もそれぞれ1敗しか喫しておらず、すぐにでも首位を伺える順位に位置している。

 視線を下げてみると、昨季首の皮一枚で残留を果たした清水エスパルスやサガン鳥栖、湘南ベルマーレの3チームの名前が目に入ることにはさほど驚かない。しかし、ひとつの見慣れない名前も順位表の下にいる。鹿島アントラーズは予想外のスロースタートを切った。アジア王者として2019シーズンをスタートさせたチームの姿は見る影もない。

ここまでわずか1勝

 王者横浜F・マリノスと7ポイント差の3位で昨季を終えた鹿島は、大岩剛監督と袂を分かつことを選んだ。チームの攻撃面に新たな刺激を加えるべくアントニオ・カルロス・ザーゴ監督を招聘したが、ブラジル人指揮官は茨城の地で悪夢のスタートを切ることになってしまった。クラブワースト記録となるリーグ戦開幕4連敗に加えて、AFCチャンピオンズリーグでもメルボルン・ビクトリーとのホームゲームを0-1で落として予選の段階で大会から姿を消している。

 7月18日のマリノス戦では、昨季王者の拙守に助けられたとはいえ、次々とチャンスをものにして4-2の勝利を収めることに成功した。初勝利がひとつの転機になるかと思われたが、その4日後にはそれまで未勝利だった湘南ベルマーレとのアウェイゲームで、またしてもちぐはぐなパフォーマンスを見せて敗戦に終わってしまった。

 そのベルマーレに0-1で敗れた後も、ザーゴ監督はチームの戦いぶりには満足できたと言い張った。試合に勝つつもりで戦っていたのはアントラーズだけで、ベルマーレはあまりにも守備的に戦っていたと非難していた。だがメディアの前では自チームの選手たちの側に立ってそう言っていたとしても、客観的なスタッツは彼の主張を全く支持してはいない。実際には敗戦という結果だけでなく、その負け方についても心配する必要がありそうだ。

創造性の欠如

 例えばアントラーズはこの試合で実際に61%のボールを支配してはいたものの、ピッチ上の相手チーム側で効果的なボール支配ができていたわけではない。プレーの46%は中盤に集中し、ベルマーレのペナルティーエリアやその付近でのプレーは28%にとどまっていた。

 これは浦和レッズに0-1で敗れた7月12日のアウェイゲームとも共通している。この時も鹿島は支配率(57%)で相手を上回ったが、それをどう攻撃に繋げるかの明確なアイディアが欠けており、信じがたいほどに単調だった。ほとんどの場合は運任せのボールをエリア内へと送り込むばかりで、枠内シュートはわずか1本しか打つことができなかった。

 逆にこれまで唯一の勝利は、相手よりボールを持つことにこだわろうとするチームから挙げたものだ。マリノスはボール支配率64%を記録し、パス本数もアントラーズの277本に対してマリノスが698本。この試合のパス数上位10人までをマリノスの選手が独占するほどだったが、アントラーズはマリノスの不安定な守備ラインにシンプルなボールを通して何度も裏への突破を成功させていた。

 だがアンジェ・ポステコグルー監督のチームはある種の例外だ。守備に重点を置いているように見えるチームを相手にすると、アントラーズは創造性の欠如を露呈してきた。

 セルジーニョの退団により、ゲームを変えられる重要な存在が失われたことも間違いない。安部裕葵と鈴木優磨の移籍により攻撃の爆発力も失くしてしまった。

 エヴェラウドとファン・アラーノはまだ新しいチームメートたちと息が合っているようには見えないし、和泉竜司からも名古屋時代のキレや自信は感じられない。上田綺世もゴール前での決定機を逃しすぎている。

繰り返してはいけない「失態」

 後方の重要なポジションの選手たちの低調ぶりも同じくらい不安だ。レオ・シルバは少なくとも過去5年間、Jリーグ最高のボックス・トゥ・ボックスMFの一人だったが、今季は彼らしくない動きの悪さが目立ち、90分間フル出場を果たした試合は一度しかない。その後ろのCB陣も信じがたいほど脆く、犬飼智也も町田浩樹も守備をまとめきれていない。クォン・スンテが危険に晒される場面はあまりにも多すぎる。

 永戸勝也は積極的に前線へ飛び出してはいるが、ファイナルサードではなかなかインパクトを与えることができずにいる。逆サイドからは同じく新加入の広瀬陸斗がこれまで2つのアシストを供給しているのに対し、昨季のベガルタ仙台で2得点と10アシストを記録した25歳の左SBはまだ結果を残していない。

 FC東京と2-2で引き分けた日曜日の試合の後半には、光明が少し見えたことも確かだ。だが両チームともに足が重く、終盤にかけて試合が極端に間延びする中で、どちらも絶好のチャンスをいくつか逃していた。特にアントラーズは14本もの枠内シュートを効果的にゴールに繋げることができなかった。

 とはいえ、それだけのチャンスを生み出せたという事実からはある程度の自信が得られるはずだし、勝ち点1の獲得も今後に繋がる。週末には3連敗中で4試合白星のない大分トリニータと激突する。

 マリノスを破ったあとのベルマーレ戦のような失態を繰り返すことだけは避けなければいけない。早急に勝利を積み重ね始めることができなければ、かつてなく短いはずのシーズンは、Jリーグで最も成功を収めてきたクラブにとって非常に長く感じられることになってしまうかもしれない。

(文:ショーン・キャロル)

【了】

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