フットボールチャンネル

Jリーグ 4年前

柏レイソル、オルンガが止まらない! 個人能力だけではない、得点量産の理由【週刊J批評】

柏レイソルのFWオルンガは、ここまで7試合8得点とゴールを量産している。193cmの大柄な体格を活かしたプレーに目が行きがちだが、得点を重ねる理由はそれだけではない。26日に行われた明治安田生命J1リーグのベガルタ仙台戦で柏が奪った5つのゴールには、オルンガを中心とした攻撃陣の関係性が表れていた。(文:河治良幸)

シリーズ:週刊J批評 text by 河治良幸 photo by Getty Images

得点を量産するオルンガ

0728Olunga_getty
【写真:Getty Images】

 オルンガの進撃が止まらない。5-1と柏レイソルが勝利した第7節のベガルタ仙台戦でハットトリックを記録。しかも自ら獲得したPKを失敗しての結果だ。

【今シーズンのJリーグはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】


 これで7試合8得点となったオルンガ。昨年の最終節に1試合8得点を記録した規格外のストライカーは復帰したJ1でも猛威を奮い、4得点の選手が5人並ぶ2位以下を突き放して爆進している。ただ、オルンガ自身はいたって謙虚であり、再開後のフラッシュインタビューにおいても味方のプレーを称賛し、感謝の言葉を表していた。

 もともと謙虚なコメントが多いオルンガではあるが、特に仙台戦の3得点は味方のアシストがゴールにつながったことは間違いない。最終的にはオルンガの圧倒的な身体能力とフィニッシュのセンスがモノを言うが、レイソルの強力なアタッカー陣が大きな支えになっていることは間違いない。

 逆に味方のあげた大半のゴールにオルンガが大きく関わっている。ベガルタ仙台戦でも仲間隼斗の3試合連続となる先制ゴールはオルンガのポストプレーが起点となり、江坂任の鮮やかなラストパスに仲間が反応する形から生まれた。

 そしてオルンガが2、3、4点目を奪い、ハットトリックを達成した後にダメ押しの5点目となった瀬川祐輔のゴールは途中出場の戸嶋祥郎がラグビーのオフロードパスのような形で、走りこむ瀬川につなぐと、オルンガが瀬川と入れ替わるように左前方へ走りこむことで、ディフェンスが完全に混乱したギャップを突く形でもたらされた。

競り合う前の駆け引き

 1トップの選手というのはボールに触るか触らないにかかわらず、ほとんどのゴールに大なり小なり絡むものではあるが、オルンガの場合はその影響力が大きく、相乗効果になってオルンガのゴールも味方のゴールも増えて行くという流れがJ1でもできている。現在、好調の川崎フロンターレが最多の20得点を叩き出しているが、柏も2番目に多い18得点を記録している。

 あらためてオルンガの3ゴールを検証したい。チームの2点目となる前半40分のゴールは瀬川、古賀太陽、ボランチの大谷秀和の3人による右サイドのチャンスメークから瀬川の上げたクロスをフリーのジャンプヘッドで叩き込んだ。

 このシーン自体は瀬川がボールに追いついた時点でゴールラインを割っていたという声も多いが、形としてはオルンガがゴール前で待ち構えて、相手のディフェンスが流れに応じて上下動することで生じるゴール前のスペースでしっかりと合わせていた。もともとディフェンスとイーブンな勝負でも競り勝つイメージが強いFWだが、実際はその前の時点でアドバンテージを取っているケースが多い。

 ただ、やはりこのシーンでも注目したいのは周囲のアタッカーの存在だ。見事なチャンスメークからクロスを上げた瀬川はもちろん、ファーサイドで仲間が一人、ニアサイドで江坂が二人のディフェンスを引き付けており、オルンガは中央で実質的にセンターバック一人(吉野恭平)との駆け引きに勝てばよく、しかも右サイドの裏に出たボールを瀬川がそのまま上げたため、吉野が下がらざるをえない状況で、手前のスペースで来たボールに合わせるだけだった。

オルンガへのサポート

 2点目はさらにオルンガの個人能力が発揮されたシーンだが、ここも周囲のアタッカーによるサポートが大きく関わっている。競り合い後のルーズボールを左で拾ったサイドバックの三丸拡が前方に折り返した浮き球を巡って椎橋慧也と江坂が競り合い、江坂がうまく体をぶつけながらバランスを崩させてマイボールにすると、センターバックに挟まれながら裏を狙うオルンガに向けてスルーパスを出した。

 江坂は背走する右センターバック(吉野)の外側を通るボールを出すと、オルンガはセンターバックの間を抜け出してから左に回り込んでボールをコントロールして、ペナルティエリア内の左で追いすがる吉野を左半身で制しながらインに切り込み、GK小畑裕馬の逆を突くシュートをゴール右隅に決めた。

 このシーンでは左の仲間がボールサイドの左前方、右の瀬川がワイドに張ってベガルタ仙台の左サイドバック(柳貴博)を引き付けていた。そのためオルンガは2人のセンターバックと1対2になっていたが、ハイラインを取っている状況でセンターバックの外側にスルーパスが出ると2人いてもチャレンジ&カバーができなくなる。この形はおそらくトレーニングでもかなりやっているはずで、江坂のパスセンスとオルンガのスピードをうまく結び付けるお膳立てができていた。

 後半15分のPKを獲得したシーンも背後からの来たボールを江坂が2人引き付けながらワンタッチの左足で瀬川につなぎ、スルーパスにオルンガが抜け出すという見事な形で、結果的にペナルティエリア内でファウルしてしまったGKの小畑も致し方がない部分はあった。

独りよがりになることのない関係性

 後半28分に生まれたオルンガの3点目は右サイドバックの古賀からのロングパスに今後は瀬川が抜け出し、ボールをコントロールしてからゴール右で二人を引き付ける。江坂が中央で二人引き付ける間に、瀬川が手前の仲間に出す。さらに仙台のディフェンスを右サイドにつり出してガラ空きになった中央に攻め上がってきたボランチの三原雅俊が左足で縦パス。そこにオルンガがタイミングよく動き出して流し込んだ。

 ここもオルンガとは逆に、江坂が左に動くことで右サイドバックの位置から中にカバーに来ていた柳をつり出すことで中央にエアポケットを作り、そこにオルンガが走り込むというコンビネーションがうまく結び付いた。

 このシーンでは瀬川が前に出る代わりにオルンガが手前に引き、仲間が2列目の右、江坂が左という一時的なポジションチェンジをしていたが、そうした中でもいつ、誰がチャンスを作り、誰がフィニッシュするのか、その時に周囲はどう関わるのかをシミュレーションできているように見て取れる。

 この試合では右サイドのスタメンだった神谷優太がアクシデントで前半38分に瀬川と代ったが、ここまで4アシストを上げるなど多くのゴールに絡んでおり、また本来であれば昨シーズンのJ2で19得点18アシストを記録したクリスティアーノもいる。

 1人ひとりの個人能力をベースにしながら独りよがりになることなくフィニッシュのイメージを共有する関係が成り立っている。その頂点に君臨するオルンガが今シーズンどこまでゴール数を伸ばし、柏レイソルの躍進を牽引して行くのか。ここからさらに目が離せなくなって行きそうだ。

(文:河治良幸)

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!