決定機を作ったがそれ以外は…
ニューカッスル戦での南野拓実のパフォーマンスは及第点以上だった。29分のミドルシュートはGKマルティン・ドゥブラフカに阻まれたが、まぎれもない決定機も作っている。
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左のバイタルエリアでボールを持ったときは可能性を感じさせたが、チャンスと呼べるシーンはシュートを含めて3度ほどだった。28回を数えたボールタッチのほとんどは左サイドから降りてきた低い位置でボールをさばいたもので、前を向いてプレーすることはあまりできなかった。
個人の問題というよりはチームの問題だった。この日はロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネ、モハメド・サラーがベンチスタートで、最前線には右からアレックス・オックスレイド=チェンバレン、ディボック・オリギ、南野という並び。3トップの組合せはお互いの良さを打ち消し合っていた。
3人全員がボックス内でプレーすることができなかったことが大きな問題だった。オリギはポストプレーもできる選手だが、ボールを持ちたがる。オックスレイド=チェンバレンはバイタルエリアで前を向いたときに脅威になる選手だった。
守備を固めるニューカッスルのDFラインの前に渋滞が起き、それをブレイクするプレーが見られなかった。結果的に、3人が退いた65分までにリバプールがボックス内で放ったシュートは、同点弾を含めてセットプレーからファン・ダイクが放ったヘディング2つだけ。南野の2本のシュートも、オリギのゴールも、すべて枠外からのミドルシュートだった。
クロップが南野拓実を称える理由
「ライン間で本当に活発に動き、やってもらいたいことを彼は忠実にやっていた」
ユルゲン・クロップが試合後に評した通り、DFラインと中盤の間でボールを受けたり、中盤に降りてきて自陣からのカウンターの中継地点になったり、南野はチームに求められる動きを見せていた。
南野のロールモデルにはしばしばフィルミーノが挙げられる。フィルミーノはたとえゴールがなくてもそれ以外のプレーで評価されているが、多くの決定機を外し続けていることはあまり語られていない。今季はマネやサラーを上回る20ものビッグチャンスを逃している。対して南野にはそれが1つしか訪れていない。判断を下すのは早計ではないだろうか。
それでもフィルミーノが欠かせないのは、逃したチャンス以上に必要とされるプレーを忠実にこなすことが重要視されているから。求められるプレーの先にチームとしての成功があることは南野にも言える。指揮官が南野を称える理由もおそらくこれと同じだろう。
「フィルジル(・ファンダイク)は最初からプレーしていたが、それ以外の選手は時間を必要としていた。サディオ(・マネ)とモー(モハメド・サラー)にはプレシーズンがあったが、タキ(南野)にはなかった」
1月に加入した南野拓実は5日のマージーサイドダービーでいきなりデビューを飾り、“完成された”チームでプレーし続けた。シーズン中の適応は容易ではなく、公式戦13試合に出場したものの、ゴールとアシストという結果を残すことはできなかった。
南野のパフォーマンスを称えたクロップは、同時に適応の難しさを説いている。ファビーニョは数か月かかったし、ナビ・ケイタは最近になってようやく居場所を見つけたところだ。
リバプールは2週間のオフを経て、約1か月半後に予定されているプレミアリーグ開幕に向けて再び歩みを進める。1月に加入した南野にとって、1年目のシーズンはまだ続いている。
(文:加藤健一)
【了】