ようやく9連覇達成
インテルやラツィオといった上位陣が躓く中、ユベントスのセリエA 9連覇はかなり前から確実視されていた。しかし、過密日程による影響なのか、絶対王者もなかなかギアが上がらず。前節は残留争い中だったウディネーゼに敗戦するなど、優勝をあと一歩で決められない、もどかしい状態が続いていた。
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それでも、ようやくタイトルを掴み取ることができた。ユベントスは現地時間26日にセリエA第36節でサンプドリアと対戦して2-0で勝利。試合後にはマウリツィオ・サッリ監督もガッツポーズを見せるなど、最低限のノルマを達成し、一息つくことができた。
FWクリスティアーノ・ロナウドは試合後、自身のインスタグラムで「これで終わり! イタリアチャンピオンだ。2年連続でスクデットを獲れて、この偉大で華麗なクラブの歴史を築き続けることができて、喜びを感じている」とコメント。他の選手の少し安心したかのような表情もまた、印象的であった。
ただ、試合自体は決して簡単なものではなかった。残留を決めながらも高い集中力を持って挑んでくるサンプドリアに対し、ユベントスは前半から苦しんでいる。とくに、相手の4-4-2ブロックがかなり堅く、ホームチームは単調な攻撃が散見。守備陣の穴をなかなか見出せなかった。
クラウディオ・ラニエリ監督の策も巧みで、守備時には行くべきところ、引くべきところの約束事を徹底。中間スペースを突いてくるFWパウロ・ディバラにパスを通させるものの、人数をかけてその後の展開を阻止するなど、ある程度のリスクを背負いながらユベントス攻撃陣を困惑させた。
ユベントスは、自由に動き回るMFガストン・ラミレスを中心とした相手の手数をかけない攻撃にも苦戦。何度かMFアドリアン・ラビオが良い形でインターセプトを決めていたが、高い位置であまりボールを奪えず、そのまま自陣深い位置へ押し込まれることも少なくなかった。そんな中、29分にDFダニーロがG・ラミレスとの衝突でプレー続行不可能に。アクシデントにも見舞われてしまった。
C・ロナウドが均衡を破る
それでも得点を奪えるのが今季のユベントスの特徴でもある。均衡を破ったのはやはりC・ロナウドだった。
前半AT、ゴール前でフリーキックのチャンスを得たMFミラレム・ピャニッチが直接狙うと見せかけて横にパス。そこへ反応したC・ロナウドが右足を振りぬいてゴールネットを揺らした。相手の意表を突くアイデアが生んだ見事な得点だったと言える。
しかし、なんとか1点リードで前半を終えることができたユベントスだったが、後半もサンプドリアの攻撃に苦戦。アウェイチームは攻守の切り替えが非常に素早く、前半同様ボールを奪うとシンプルにサイドへ展開してきた。そこからはあまり時間をかけず、G・ラミレスやFWファビオ・クアリャレッラ目がけてクロスを放り込む。ユベントスにとってこれがなかなかの脅威となっていたのだ。
ただ、同点弾を奪おうとやや全体のラインが高くなっていたサンプドリアに対してのカウンターは有効だった。61分にはMFカロル・リネティからボールを奪って最後はC・ロナウドのシュートに繋げている。
その6分後、ユベントスは途中出場のFWフェデリコ・ベルナルデスキがゴール。自陣でDFロレンツォ・トネッリからボールを奪い、そこから発動したカウンターがきっかけとなって生まれた追加点だった。サンプドリアに押し込まれていたのは事実だが、見事に相手の隙を突いたと言える。
ユベントスはその後、相手に退場者が出たこともあり落ち着いて時間を進める。C・ロナウドがPK失敗、DF吉田麻也のスーパーブロックに阻まれるなど、3点目を奪うことはできなかったが、GKヴォイチェフ・シュチェスニーのファインセーブが飛び出すなど守備陣がしっかり完封。こうして、セリエA 9連覇を手繰り寄せたのだ。
視線はCL。見えた課題とは?
さて、9連覇を果たしたユベントスだが、当然ながらこれでシーズンが終わるわけではない。スクデットはあくまで最低限のノルマ。彼らの最大の目標はチャンピオンズリーグ(CL)制覇である。
ユベントスは決して弱いわけではないが、現状を考えるとやはり他のビッグクラブとは差があるように感じる。何よりサッリ監督のやりたいことが未だ明確になっておらず、今季はディバラやC・ロナウドの個があったからこそ奪えた勝ち点3も多かった。もちろん、そうした勝ち方はどのクラブにおいても必要なのは間違いない。ただ、“それだけ”ではやはり総合力で上回る相手には勝てない。とくに、CLという世界最高峰の舞台では。
幸運にも、ユベントスはセリエA優勝を早い段階で決めることができた。リーグ戦の残りは2試合だが、これ以上失うものは何もない。そのため、今後のカリアリ戦とローマ戦は、やはりCLに焦点を合わせた戦い方、つまり結果は捨てても良いと見るのが妥当だろう。
まず、今のユベントスに必要なのは選手の休養か。ダニーロは脳震盪による交代だったため少し時間を置けば今後の出場にも大きな影響はなさそうだが、サンプドリア戦で途中交代となったDFマタイス・デリフトとディバラに関しては身体への負担がピークに達している。また、C・ロナウドもフル出場が続いており、超人といえど休息は必要。何よりCLで最も働いてもらわなくては困るのが、この男なのだから。
また、サンプドリア戦で改めて浮き彫りとなったのが守備の不安。この日は無失点に抑えたが、チャンスは何度も作られている。このままではCL優勝はおろか、ベスト8進出すら逃してしまう可能性がある。
ユベントスは守備時、4-4-2の形になるのだが、前線のC・ロナウドとディバラはご存じの通りディフェンスをほとんど行わない。それに加えサッリ監督はゾーンディフェンスを重用しているため、中盤の4枚と前線の2枚の間にあるスペースを埋めきれない。今季はこれが何度も散見されている。
ユベントスの中盤4枚もポジショニングはかなり曖昧で、ボールホルダーに対し少し前掛かりになると最終ラインとのギャップを突かれる。ここがあまり整備されていないのもまた、問題だ。サンプドリア戦51分の場面でも、ボールホルダーに対しプレッシャーを与えられず、迷いのある対応が見られたことで中間スペースを使われていた。
この日のラニエリ監督がそうであったように、ユベントスもある程度リスクを背負った守備のやり方にシフトしてもいいのではないか。ボールと人の配置によってポジションを変えるのではなく、単純に引くべきところと行くべきところの線引きを明確にし、これを徹底させればうまくハマる可能性は高い。
何よりユベントスは、ラビオ、MFロドリゴ・ベンタンクール、MFブレーズ・マテュイディなど、中盤に揃える人材が豊富。彼らは明確なタスクを課せばそれをしっかりと遂行してくれる選手でもある。そうした彼らの能力を最大限に引き出すためにも、ゾーンよりマンマーク等で人にぶつけた方が良いのではとも考える。
リヨン戦は現地時間8月7日。ユベントスにも時間はある。現状を見る限りベスト8入りが限界な気もするが、そうした予想を覆すサッリ監督の手腕に期待したいところだ。
(文:小澤祐作)
【了】