マンUは主導権を握ったが…
一足先に第37節を消化していたレスターはトッテナムに敗れて、勝ち点は62のまま。マンチェスター・ユナイテッドと勝ち点で並び、1ポイント上にはチェルシーがいた。
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ユナイテッドからしてみれば、このウェストハム戦に勝利すれば、レスターとの最終節を残してUEFAチャンピオンズリーグ出場権を与えられる4位以内に大きく近づく。勝ち点3を掴まなければいけない試合で、ユナイテッドは勝ち点1を取るにとどまっている。
試合序盤はユナイテッドのペースだった。2分、ブルーノ・フェルナンデスのスルーパスにアントニー・マルシャルがDFラインの裏を抜けてシュート。その1分後にはブルーノ・フェルナンデスのパスを受けたメイソン・グリーンウッドがシュートにつなげている。ここで決めていれば楽な展開になっていた。しかしこの2本はGKウカシュ・ファビアンスキに阻まれた。
引き分け以上で残留が確定するウェストハムは、前線にミカイル・アントニオを残して自陣の低い位置にブロックを築いた。しかし、前半の途中から高い位置からプレッシャーをかける形に変更し、徐々にユナイテッド陣内でプレーする時間を増やしていった。
前半終了間際、ウェストハムは自陣でボールを拾うと、アントニオが突破しようとしたところで倒されてFKを獲得した。直接狙うには少し距離がある位置だったが、マーク・ノーブルがずらしてデクラン・ライスがミドルシュートを放つ。すると、これをポール・ポグバが手で防いでしまう。ウェストハムにPKが与えられ、アントニオがこれを決めた。
勤続疲労と無策の指揮官
ユナイテッドは後半早々に試合を振り出しに戻した。ハーフスペースで受けたグリーンウッドがマルシャルにパス。前を向いたマルシャルとのパス交換からグリーンウッドが狭いエリアを抜け出し、左足を振り抜いてゴールネットを揺らした。
逆転するための時間は40分も残されていたが、ユナイテッドはこれを浪費した。この後はウェストハムに8本のシュートを許したのに対し、ユナイテッドは3本しか打つことができなかった。試合はこのまま1-1で終了。この直後に行われた試合でチェルシーが大敗したことで、ユナイテッドは3位浮上したが、あまりにもお粗末な内容と結果だった。
リーグ戦再開後は絶好調だったが、その勢いは完全に止まったと言っていい。サウサンプトンには試合終了間際に追いつかれ、クリスタルパレスには勝利したものの、FAカップ準決勝ではチェルシーに3失点を喫して敗退している。
間違いなく勤続疲労は低調の原因の1つになっている。中2日で行われたこの試合では4人を変更したが、選手たちの動きは総じて重かった。後半に入ってブルーノ・フェルナンデスやラッシュフォードは精彩を欠いていた。押し込む場面で右利きのブランドン・ウィリアムスが機能しないことは明らかだった。
残された解決策は…
それでもオレ・グンナー・スールシャールは動かなかった。前半にイエローカードをもらったティモシー・フォス=メンサーを下げてファーストチョイスのアーロン・ワン=ビサカを後半開始から投入。次に動いたのは85分のことで、投入されたオディオン・イガロにとっては時間が足りなかった。
ウェストハムは引いて守りを固める時間と、前からプレッシャーをかける時間を使い分けていた。ユナイテッドのDFラインはプレッシャーをかけられると、GKダビド・デヘアに戻して長いボールを蹴ることしかできなかった。
スールシャールはビルドアップの解決策を与えることも、選手を変えたり布陣を変えたりすることもない。ただ、ベンチに座ってタブレットで映像を見直しているだけだった。
終わった試合はもう戻ってこない。最終節のレスター戦は引き分け以上で4位以内が決まる。敗れた場合はウォルバーハンプトンと対戦するチェルシーの敗北を待つしかないが、ユナイテッドは自力でCL出場権を掴むことができる位置にいる。
おそらく、スールシャールはレスター戦でもお馴染みのメンバーを起用するだろう。解決策ではないが、選手個々の活躍を祈るしかない。ポグバが個で圧倒し、ブルーノ・フェルナンデスが違いを作り、ラッシュフォード、マルシャル、グリーンウッドがゴールを決める。そして、デヘアにはこれまでのミスを帳消しにするビッグセーブを連発してもらおう。
再開後の好調も、戦略的な成功ではなく、個人の力が発揮されたことによるものが大きかった。終わり良ければすべて良しではないが、3シーズン連続の国内無冠が決まったこの状況で、2シーズン続けてCLの切符を逃すのはファンもクラブも許さない。運命はスールシャールではなく、主力の彼らが握っている。
(文:加藤健一)
【了】