天敵を前に強さを誇示
ユベントスにとってシモーネ・インザーギ監督率いるラツィオは天敵であった。今季はすでにリーグ戦とスーペル・コッパ・イタリアーナの2試合で激突しているが、いずれも敗北。同2試合のスコアはともに1-3と、結果だけでなく内容でも相手を大きく下回っていた。
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ただ、ユベントスは現地時間20日に行われたセリエA第34節で、過密日程の中、欠場者が相次ぐなど野戦病院化しているラツィオを前に強さを誇示。「ホームの試合でもっと多く点を決めるチャンスもあったが、良い試合ができたね」と、マウリツィオ・サッリ監督も満足するほどのパフォーマンスを見せた。
ユベントスは立ち上がりからボールを握った。ラツィオの選手はどこか足が重そうで、なかなか高い位置からはボールを奪いに来ない。ポゼッション率を上げるホームチームを前に、自陣深い位置でブロックを築いていた。
ユベントスはサイドに、中にと休まずボールを動かし続けることでラツィオ守備陣の綻びを作り出そうと試みたが、非常にコンパクトな陣形を築くアウェイチームを前に攻撃のテンポはすぐに上がりきらず。FWクリスティアーノ・ロナウドも対峙したDFバストスのアグレッシブな守備に手を焼いていた印象だ。
そんな中でも可能性を作り出したのはFWパウロ・ディバラとMFアーロン・ラムジーの流動的なポジション変更。彼らが頻繁に立ち位置を変えることでラツィオ守備陣のマークが曖昧となったシーンは前半からいくつも見られており、たとえば30分の場面ではラムジーが飛び出しCBを、ディバラが下がって相手の中盤を引き付けたことでライン間にスペースが生まれた。
上記のシーンから決定機を作り出すには至らなかったものの、ラツィオ守備陣がそうした動きに困惑していたのは事実。ユベントスはこの日、中盤にラムジーが入ったことでボールの動きも非常にスムーズとなっていたが、同時に前線のアクションもいつもより活発となっていた印象を受けた。今季アーセナルからやってきたウェールズ代表MFの働きは大きかったと言えるだろう。
ただ、DFフランチェスコ・アチェルビを中心としたラツィオ守備陣はよく耐えた。実際、前半だけで11本ものシュートを浴びたものの、GKトマシュ・ストラコシャのファインセーブもあり、前半を0-0で終えることに成功している。ユベントスにボールを動かされ続けたため体力をさらに削がれていた点は否めないが、チーム全体としての集中力の高さは素晴らしかった。
C・ロナウド2発で勝負あり
しかし、ユベントスはそんなラツィオの牙城を後半開始早々に崩した。49分、C・ロナウドのシュートがバストスのハンドを誘発し、PKを得たのである。そして、これをエース自らが沈めてホームチームが先制したのだ。
これで勢いに乗ったユベントスは先制からわずか5分後、高い位置でディバラがボールを奪うとカウンターが発動。最後はC・ロナウドが冷静にゴールへ流し込んでリードを広げた。
ユベントスはこの日、ラツィオのビルドアップを阻止するための守備がうまくハマっていた。ディバラは前半から相手のアンカーであるMFダニーロ・カタルディのパスコースを遮断していたし、チーム全体としても4-4-2の形で各スペースを的確に埋めている。
追加点のシーンは、まさにそうした守備が功を奏して生まれたもの。DFルイス・フェリペに対しC・ロナウドがパスコースを切りながら寄せ、それに反応して挟み込んだディバラが奪ってカウンターにつなげている。前半から徹底した、狙い通りの得点だったと言えるはずだ。
2-0としたユベントスはその後、MFブレーズ・マテュイディとDFダニーロを投入。より守備にも気を使いながら、引き続きラツィオを押し込んだのだ。
ラツィオは非常に苦しかった。けが人が多く、途中から流れを変えられる選手がベンチにいない。MFセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチは明らかにヘロヘロな状態だったが、チームの都合上ベンチに下げることはできない。S・インザーギ監督からしても打つ手がなかったのだ。そうすると当然、攻撃は停滞。斜めへのロングフィードなどでリズムを変えることはあったものの、その後が続かないといった場面が目立った。
それでも、82分にDFレオナルド・ボヌッチのファウルを誘発したFWチーロ・インモービレがPKを獲得。これを背番号17自らが沈めて1点差に詰め寄った。
その後の展開は、まさに上位対決に相応しいものに。同点に追いつこうと最後の力を振り絞るラツィオは果敢に前からプレッシャーを与え、ボール保持率を高める。対するユベントスはディバラを下げDFダニエレ・ルガーニを投入するなど、完全な守備態勢に入ったのだ。
そして、勝利の女神はユベントスに微笑んだ。試合はこのまま2-1で終了。ホームチームが4試合ぶりの勝ち点3を奪い、また一歩セリエA 9連覇に前進している。
フィットしてきたレフティーの存在
C・ロナウドはこの日2ゴールをマーク。ついにインモービレと並んでセリエA得点ランキングのトップに立ち、プレミアリーグ、リーガ・エスパニョーラ、セリエAの3大リーグでそれぞれ通算50ゴール以上を決めた史上初の選手となった。2ゴール以外にも何度か惜しい場面もあったなど、間違いなくラツィオ戦における勝利の立役者だ。
攻撃の要であるディバラもまた素晴らしかった。この日もキレキレの動きを見せており、C・ロナウドのゴールもお膳立て。シュート数は2本と少ないものの、キーパスは驚異の7本を記録しているなど、常に攻撃のグレードを高めていた。背番号10も間違いなく勝利には欠かせない人物だったと言えるだろう。
そして、ここでもう一人フォーカスしておきたい男がいる。それが、MFアドリアン・ラビオだ。ラツィオ戦の陰の立役者を挙げるのであれば、間違いなくこのレフティーになるだろう。
中盤の一角として出場したラビオは立ち上がりから積極果敢なプレーを披露。周りに的確にパスを散らすだけでなく、35分の場面では自らドリブルで持ち運んでシュートにつなげるなど、縦への推進力も発揮した。
守備での貢献度も絶大で、対峙したミリンコビッチ=サビッチにもうまく対応。パスを読む力、クイックネスを活かしたインターセプトも非常に光っていた。ディフェンス時の4-4-2の中では左サイドにポジションを取り、豊富な運動量を活かして幅広いエリアを的確にカバー。良い守備こそが良い攻撃につながるが、その起点にラビオは何度もなっていたと言えるだろう。
データサイト『Who Scored』を見ても、この日のラビオはパス成功率87%、シュート数2本、キーパス1本、ドリブル成功数2回、空中戦勝利数4回、タックル成功数2回を記録しているなど攻守両面で申し分ない働き。90分間走り続けたタフさも素晴らしかった。
パリ・サンジェルマン(PSG)時代にも上記したようなプレースタイルは見せていたラビオであるが、ここにきて着実にフィットし、ユベントスの中でも存在感を示せるようになってきたのは大きい。サッリ監督のチームは約束事が多く、ラビオ自身も当初は馴染むのに苦労していたが、今では攻撃も守備も柔軟にこなしている印象が強い。オフ・ザ・ボールの動きも冴えており、C・ロナウドにスペースを供給する場面も目立ってきている。
サッリ監督は以前、「アドリアン・ラビオとラムジーは全く異なるリーグから来た選手で、最初の数ヶ月間はフィットネスの問題を抱えていたし、望んでいたほどのトレーニングをしていなかったが、二人ともシーズンが進むにつれて改善している」と話していた。
ユベントスにとって今季は決して満足いくものではないだろう。だが、指揮官が話す通りラビオやラムジーらが力を発揮してきた事実は、来季への大きな希望となるはずだ。
(文:小澤祐作)
【了】