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マンUが強くないわけがない。ブルーノ・フェルナンデスら疲弊も…エースの風格増すラッシュフォードの破壊力

プレミアリーグ第36節、クリスタル・パレス対マンチェスター・ユナイテッドが現地時間16日に行われ、0-2でアウェイチームが勝利している。これでユナイテッドは公式戦19試合無敗。強さを誇示している。さすがに何人かの選手には疲労の色も見え始めているが、「マーカス・ラッシュフォード」、この男はどうやら違うようだ。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

ザハに手を焼くも…

マンチェスター・ユナイテッド
マンUのクリスタル・パレス戦のスターティングメンバー

 前節のサウサンプトン戦を2-2のドローで終えたマンチェスター・ユナイテッドは、その試合でDFルーク・ショーとDFブランドン・ウィリアムズが負傷。左サイドバックの駒が手薄となった。そのため、プレミアリーグ第36節のクリスタル・パレス戦で左SBに誰を起用するのかというのは大きな注目ポイントとなったが、指揮官が送り出したのはDFティモシー・フォス=メンサーだった。同選手は2017/18シーズンにC・パレスに所属していたため、ある意味「相手対策」という部分での先発抜擢だったのかもしれない。

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 来季のチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得を果たすためにも絶対に負けられないユナイテッドだったが、この日は立ち上がりからかなり押し込まれた。守備時に4-4-2のブロックを敷くC・パレスに各レーンを埋められたことでビルドアップが制御され、なかなか効果的なパスが前線に収まらない。反対に、中途半端な形でボールをカットされて速攻を受ける場面が見られた。

 とくにユナイテッドの脅威となったのはFWウィルフリード・ザハ。技術、パワー、スピードのすべてが備わった元ユナイテッド戦士は試合の序盤から果敢に相手の右サイドを襲う。2分にはいきなりGKダビド・デ・ヘアに強烈なシュートも放っているなど、イキイキとしたプレーで攻撃陣を活性化させていた。

 ユナイテッドはボールを保持する時間があったものの、リズムは上がり切らずなかなかビッグチャンスは生まれない。MFブルーノ・フェルナンデスの縦パスもいつもより引っかかるシーンが多かったなど、C・パレスの守備に苦戦を強いられた。そして、相手の速攻も浴びる。40分にはFWジョーダン・アイェウにあわやというシュートを放たれた。

 それでも、こうした状況で点を取れるのが今のユナイテッドの強さ。前半AT、攻撃陣の見事な連係から最後はFWマーカス・ラッシュフォードがゴールゲット。良い時間に1点リードを得ることに成功した。

覚醒のマルシャル弾で勝負あり

 1-0のまま前半を終わらせることができたユナイテッドだが、後半も単調な攻めが続いていた印象は否めず。55分には中盤でボールをカットされると速攻を喰らい、最後はアイェウにゴールネットも揺らされた。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の結果、アイェウの位置がオフサイド判定となったために失点は免れたが、ボール奪ってからの手数をかけない相手の攻めに手を焼いていたのは確かだろう。

 その後もユナイテッドはC・パレスに押し込まれた。60分にはMFジェームズ・マッカーシー、63分にはザハに中央を突破され、最後はMFジェームズ・マッカーサーにあわや同点弾という場面を作られている。デ・ヘアのセーブが冴えていたのが救いだった。

 ユナイテッドは選手交代も織り交ぜながらカウンターでチャンスを作った。C・パレス守備陣の陣形が整う前に仕掛け、74分にはB・フェルナンデスにビッグチャンスも訪れている。しかし、ゴールネットを揺らすには至らず。前節のことがあるだけに、やや不穏な空気が流れていた。

 しかし、それを払拭したのはFWアントニー・マルシャル。ラッシュフォードとB・フェルナンデスがうまく絡んで78分にゴールを奪った。マルシャルはこれが今季プレミアリーグ17得点目。同リーグで17得点を奪ったフランス人は2008/09シーズンの二コラ・アネルカ氏以来のことだと言う。覚醒のシーズンとなった。

 このシーンでマルシャルと接触したDFパトリック・ファン・アーンホルトがしばらく起き上がれず、試合は一時中断。そのため、後半のATは11分と長く取られた。しかし、ユナイテッドイレブンは最後まで集中力を切らさず、2-0のまま試合をクローズ。これで公式戦19試合無敗とした同チームは、引き続きCL出場権を争うチェルシーとレスターにプレッシャーを与えることになった。

「今日はパフォーマンスよりも結果の方が良かった」とは試合後のオーレ・グンナー・スールシャール監督の言葉。確かに直近のゲームと比較すると内容は物足りなさが残った。しかし、そうした中でも勝ち切る強さがあるのは、今のユナイテッドの魅力だろう。公式戦19試合無敗は、当然ながらそう簡単に達成できるものではない。

過密日程でも好調なエース

マーカス・ラッシュフォード
【写真:Getty Images】

 ただ、ユナイテッドは今後のプランをしっかりと練らなければならない。リーグ再開後はほとんど先発メンバーをいじっていないが、さすがに何人かの選手には疲労の色が見え始めている。C・パレス戦はとくにB・フェルナンデス、DFアーロン・ワン=ビサカ、MFポール・ポグバ、DFハリー・マグワイアがかなり辛そうな印象を受けた。このゲームもかなりタフだったため、さらに身体への負担は大きくなったはずだ。

 ユナイテッドは現地時間19日にFAカップ準決勝のチェルシー戦を控えている。ただ、第一目標がCL出場圏入りということならば、言い方は悪いがこの試合は“捨てても”良いのかもしれない。チェルシー戦でも同じメンバーで挑めば、いよいよ選手は壊れてしまう。プレミアリーグは残り2試合で、ユナイテッドの最終節の相手は曲者レスターだ。ここにより良い状態で挑むためにも、チェルシー戦をターンオーバーの機会と見るのが妥当だろう。

 もちろん、スールシャール監督もそこを理解している可能性は高い。C・パレス戦では交代枠をわずか2つしか使っておらず、B・フェルナンデスやポグバなどはフル出場を果たしている。MFジェシー・リンガードは第25節のウォルバーハンプトン戦以来、久々の出場となったが、見方を変えればチェルシー戦に向けてのコンディション調整とも取れる。ただ、「(チェルシー戦は)問題ないだろう。こういう日程なのだから仕方がない。選手たちも回復できるはず。ウェンブリーでの試合なのだから、その舞台こそが選手の力になる」というスールシャール監督の言葉は少し気になるところだが…。

 さて、上記した通りポグバやB・フェルナンデスらは疲労の影響を感じさせた内容だったが、反対に過密日程の中でも勢いに乗る選手がいる。マーカス・ラッシュフォードだ。

 ユナイテッドの若きエースはこの日、1得点1アシストを記録。チームが苦しい戦いを強いられている中でもコンディションの良さをアピールし、勝利をもたらした。

 目を見張ったのはゴール前の落ち着きぶりだ。様々な試合を観ていると、FWの選手はゴールへの意慾が強すぎるあまりチャンスが来ると急いでしまうことも多いのだが、ラッシュフォードはスコアレスの状況でも常に冷静。先制弾の場面ではボックス内でうまく身体を使って相手をブロックしながら、キレ味鋭いフェイントでGK含む3人を欺いた。さらに、追加点の場面では冷静なワンタッチパスでマルシャルのゴールをお膳立て。若さゆえのギラギラしたプレーも時に必要だが、こうした繊細なプレーを発揮できるのは、ラッシュフォードの確かな成長と見ていいだろう。

「マーカスとアントニーのゴールは見ていて面白い。素晴らしいゴールだし、彼らならどんな場面でもやれる」と、スールシャール監督はこの日1得点を奪ったマルシャルと共にラッシュフォードを絶賛。赤い悪魔のエースとしての風格は着実に増していると言えるだろう。

 ポグバにB・フェルナンデスにラッシュフォードにマルシャルにFWメイソン・グリーンウッド。これほどのタレントを攻撃陣に揃えるユナイテッドが強くないわけない。プレミアリーグは残り2試合。最後まで突っ走ってほしいものだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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