注目の上位対決はドロー
今季のスクデットをほぼ手中に収めた首位ユベントスと、リーグ戦8連勝中と凄まじい勢いに乗る3位アタランタ。この2クラブによる注目のセリエA上位対決は、期待を裏切らぬ非常に激しい展開となった。
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立ち上がりからペースを握ったのはアウェイのアタランタ。ハイライン&ハイプレッシャーを基本とする同チームは、ユベントス攻撃陣をさっそく機能不全とし、ボールを奪ってからは時間をかけずに素早くパスを捌くなど、活発な動きを見せる。軽率なミスも少なく、しっかりとボールを動かすことで着実に相手陣内へと侵入していた。
そして16分、FWアレハンドロ・ゴメスの巧みなボールキープと繊細なラストパスがユベントス守備陣を切り裂き、最後はFWドゥバン・サパタがゴールゲット。試合開始から間もなくして掴んだ勢いを、見事先制弾に結びつけたのだ。
いきなり1点のビハインドを背負ってしまったユベントスは、当然ながら同点に追いつこうと前に出る。しかし、立ちはだかるのはアタランタの強度の高いプレス。攻撃の芽は確実に潰され、GKピエルルイジ・ゴッリーニを襲うことがなかなかできず、前半を0-1のまま終えることになった。
しかし、後半開始からわずか8分後、ユベントスはFWパウロ・ディバラのクロスがMFマルテン・デ・ローンの手に当たったことでPKを獲得。これをFWクリスティアーノ・ロナウドが冷静に沈めて何とか同点に追いついた。
その後は一進一退の攻防が繰り広げられ、お互いにチャンスも何度か作り出している。しかし、両チームともゴールは遠く、時計の針は80分を迎えようとしていた。
その中で再び試合を動かしたのはアタランタ。途中出場のMFルスラン・マリノフスキーが強烈な右足シュートを放ち、これがゴールネットに突き刺さったのである。この勝ち越し弾にはジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督も笑顔をこぼさずにはいられなかった。
ただ、敗色濃厚だったユベントスも最後まで喰らいつく。90分、FWゴンサロ・イグアインがFWルイス・ムリエルのハンドを誘発し、PKを獲得。これを再びC・ロナウドが沈め、土壇場で同点に追いついた。そして、試合はこのまま2-2で終了。両者ともに勝ち点1ずつを分け合う結果となった。
ユベントスが苦戦した理由
と、ここまでざっくりと試合展開を振り返ってきたが、90分間内容で上回っていたのはアタランタだったと言えるだろう。結果は2-2のドローであるが、勝ち点3を奪うに相応しいパフォーマンスだったことは、誰の目にも明らかだ。
一方のユベントスは大苦戦を強いられた。簡単なゲームにならないことは重々承知していたが、本当にギリギリの勝負になったと言えるだろう。勝ち点1を拾えたのが唯一の救いである。
では、なぜユベントスはここまでの苦戦を強いられたのか。理由はいくつかある。
一つは、やはりアタランタの激しいプレッシャーに飲み込まれてしまったこと。ボールホルダーに対し積極果敢なプレーを披露してくる相手にユベントスイレブンは委縮してしまい、中盤でらしくないミスも連発。攻撃のテンポはなかなか上がり切らず、ほとんど効果的な攻めを繰り出すことはできなかった。
アタランタの守備も非常に巧みだった。一度プレスを剥がされると一瞬リトリートした状態になり、ユベントスの攻撃をしっかりと遅らせる。そこにウイングバックや中盤の選手が猛烈なプレスバックを行うことで再び数的優位な状況を作り出し、ボールホルダーをサンドして確実にボールを奪い取った。アタランタ守備陣の行くべきか否かの判断はかなり的確だったと言えるだろう。
後半はアタランタのプレス強度が落ちたことでユベントスにもボールを持つ時間が増えた。しかし、マウリツィオ・サッリ監督は69分にディバラを下げイグアインを投入。攻撃の核をベンチに置いたユベントスはチャンスクリエイトできる選手がいなくなり、再び機能不全に。FWドウグラス・コスタの個人打開による決定機はあったが、連動性は皆無。後半のこのタイミングでディバラを下げたのは果たして正しい判断だったのかという疑問は残る。もちろん、疲労の影響等はあったかもしれないが…。
また、ユベントスがアタランタ攻撃陣に対しボールの奪いどころを定められなかったのも苦戦を強いられた理由であると言えるだろう。A・ゴメスをフリーとしている場面はいくつもあり、ウイングバックに対してサイドバックが張り付くのかどうかも微妙だった。そのため、アタランタのテンポの良いパス回しにユベントスは翻弄され、最終ラインがズルズルと下がってしまったわけだ。
ただ、マークを定めさせなかったアタランタの攻撃意識も見事だった。同チームは隙があれば3バックの選手も果敢に前へ飛び出てくるため、前線の人数は場面場面によって大きく変わる。そうすると、ユベントス側からしてもマンマークは付けづらくなり、迂闊にボールへ飛び込むことができなくなるわけだ。アタランタのこうした意識は当然大きなリスクを背負うが、彼らにはしっかりとフィニッシュで終えるだけの力がある。そのため、必然的に相手のカウンターを潰しているのだ。これが、アタランタの魅力である。
存在感を消されたC・ロナウド
そして、ユベントスはチーム最大の得点源であるC・ロナウドの存在感も確実に消された。背番号7はこの日PKを2本沈めており、勝ち点1獲得の立役者にはなったものの、流れの中での仕事ぶりはあまり大きくはなかった。
左サイドで先発したC・ロナウドは何度か足元にボールを収めたものの、アタランタ守備陣に素早く囲まれて苦戦。味方のサポートが間に合わず、孤立するシーンもあり、パスがズレることも何度かあった。アタランタにとってはタッチライン際ギリギリでボールを持たれるのは許容範囲。簡単には飛び込まず、慌てることなく冷静な対応を見せてC・ロナウドを封じたのだ。
ディバラがサイドに流れた際にはC・ロナウドは中央へ。この動きはいつものことながらこの日も発揮されていた。ただ、そこからのクロスなどはことごとくアタランタ守備陣によって無力化。アウェイチームは相手のエースに対して自陣ボックス内で2枚を張り付けるなど、徹底したディフェンスを見せていたのだ。
C・ロナウドはこの日、計5本のシュートを放っている。しかし、そのうちの2本はPK、1本はフリーキックなので、流れの中からはわずか2本しか放つことができていない。アタランタ守備陣が中央をしっかりとブロックし、C・ロナウドに対して内側でのプレータイムをあまり多く与えなかったのが最大の原因と言えるだろう。PK 2本をしっかりと沈めたのは流石だが、全体的に見れば不完全燃焼だったのは明らかだ。
何とか勝ち点1を手にしたユベントスだが、やはり内容面は不安。今季のスクデットはほぼ手中に収めているとはいえ、悲願のチャンピオンズリーグ(CL)制覇を果たすにはまだまだ多くの部分で改善が必要と言えるだろう。
(文:小澤祐作)
【了】